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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
起 異世界で
12/84

8.勇者からのおつかい


異世界を旅する穂波ほなみとハチクが

この世界に来て2日目の朝。



□宿の部屋にて


外では既に人々の活動する音が聞こえる。

穂波ほなみとハチクも、

布団からはみ出でた顔の肌寒さに、

自然と目が覚めた。


穂波

「・・・・・・ふぁ〜〜あ。

あ、おはよぉございますぅ〜ハチク〜」


穂波は目をこすり、顔にかかっている長い髪を

掻き分ける。


ハチク

「ああ、おはよう。

・・・ところで穂波。

なぜ私のベッドに入ってるんだ?」


寝起きだからか、呆れているからか、

ハチクは薄く開いた横目で穂波を見る。


穂波

「いやー、なんか昨日ちょっと寒くて。

それにハチクはいい匂いで温かいから、

凄く落ち着くんですよー」


ハチク

「ハァ・・・あのなぁ、

子どもじゃないんだから、勘弁してくれ…」


ピトッ


ハチク

「うっ!!」


穂波の足がハチクの足に触れる。



穂波

「ふぅ〜」


温もりを感じる脚と、ゾワッと震える脚。


ハチク

「あ...あ....冷たい脚をくっつけるなぁーー!!!」




ーーーーーーーーーーーーーー



しばらく後



□ 宿屋のロビーにて


身支度を済ませた2人が宿屋の1階に降りると、

ロビーには勇者アクト・レインファルトが立っていた。



アクト

「どうしよう・・・また怒られちゃうよなぁ...」


焦ってウロウロしているアクトが気になり、

穂波は声をかけてみた。


穂波

「おはようございます~、アクトさん。

どうかされました?」


アクト

「あ!ホナミさんとハチクさん。

おはようございます。

そのぉ、実はこれから仲間達とこの宿で

待ち合わせしているんですが、


約束の時間になってもまだ来なくて。

そろそろ鍛冶屋に武器を取りに行かな

くてはいけないのですが・・・どうしたものかと」


穂波

「あらら。・・・じゃあ、私達が代わりに

取りに行きましょうか?」


思いもよらぬ申し出に、

アクトの表情が思わず明るくなる。


アクト

「えっ!い、いいんですか?

うーん・・・申し訳ないですが、

お願いしてもよろしいですか?」


穂波

「はい!場所は何処ですかね?」


アクト

「ここを出て左に進んで行けば

すぐ分かるかと思います。

ベルバックというドワーフのお店ですので。

本当に助かります!」


穂波

「いえいえ、じゃあ行ってきますー」


穂波達が外へ出ようとした時、


アクト

「お願いします。

・・・あ!それとハチクさん!」


アクトはハチクを呼び止める。


アクト

「昨日はすいませんでした!

お身体の方は大丈夫でしたか?」


ハチク

「・・・・・」

(-ω-´ )ぷいっ



ハチクはそっぽを向いて、

そのまま外に出てしまった。

ガーンという擬音が聞こえてきそうな様子で、

アクトはショックを受けていた。

穂波は代わりにアクトに謝ると、

ハチクを追いかけて外へと出て行った。


アクト

「やっぱり。き、嫌われたかなぁ・・・」


チャリーン♪





ーーーーーーーーーーーー




穂波とハチクが鍛冶屋へと向かう道中、

ハチクは愚痴をこぼしていた。


ハチク

「まったく。あそこが待ち合わせの場所なら、

宿屋の主人に言付けて、さっさと自分で

受け取りに行けばいいだろうに・・・

お前もお前もだ穂波。なんでも気安く引き受けて...」


困っている人がいたら構わず手を差し伸べてしまう

彼女の性格に、ハチクは毎度振り回されているようだ。



穂波

「まあまぁそう言わないで、助けてあげましょうよ!

これからしばらくお世話になるだろうし。

面白い物がまた見られるかもしれないですよ?」


ハチク

「・・・そう願おう」



ーーーーーーーーーーーーーー



□鍛冶屋


道を少し歩いていると、大きくて無駄に派手な

看板を掲げた石造りの店があった。



《ウヌファストの武器庫 ドワーフの拳》



穂波

「ここみたいですね〜」


店の前では、ピカピカの武器を身に付けている

貴族が側近達に見せびらかしていた。


穂波達が店に入ろうとすると、

先に兵士や大柄の男、狩人の青年が武器を

抱えて出てくる。


穂波

「繁盛しているお店みたいですね

・・・これはまた、すんごい年季ねんき

が入ってますよ」


入ってすぐに穂波がそう言った事に、

ハチクも納得した。


店の内装は

昨日の武器屋に比べるとかなり荒れていて、

そこら中が武器と作業道具で乱雑としていた。

武器屋と言うより、それらを作る工房

そのものだった。



店の奥の方はそのまま作業場になっていて、

そこには子どもくらいの背丈の男性達が

働いていた。


穂波

「ぁぁ・・・ハチクさんハチクさん!

あれってもしかして、

ファンタジー世界なら定番の小さなおじさん

『ドワーフ』の方じゃないですかぁ!?」


はしゃぎ出す穂波を他所に、ハチクは何かを

眺めながら適当に返事をする。


ハチク

「そうだな。楽しそうで何よりだ・・・」


穂波

「んん?・・・何か気になるものでも?」


今まで派手な商品にはあまり興味を

示さなかったハチクだが、

テーブルに適当に並べられた武器が

気になる様子だった。

装飾の綺麗な物に比べ、

それらはどれも重く冷たい印象だ。

ハチクはまじまじとそんな剣を見つめ、

いくつか手に取りだした。


穂波

「わあ♪かっこいいですねー!!」


???

「ほう、姉ちゃん。

そっちが気になるのか?嬉しいねえ♪」



奥からハチクより少し背丈の低い

ドワーフが出て来て、喋りかけてきた。

豊富に蓄えられた髭と、

彫刻の様な彫りの深い顔つき。

背が低いとはいえ、

堂々とした威厳を感じさせる。

どうやらアクトが言っていたドワーフは、

彼のようだ。


ハチク

「もしかして、あんたがここの刀鍛冶か?」


ベルバック

「オウ!南都一の刀鍛冶こと、

ベルバックとは俺のことヨォ!!

それでどうだい?

そっちの見栄えのしない武器の感想はぁ?」


ドワーフのベルバックは笑いながら、

わざと卑下ひげしたような言い方で尋ねる。


ハチク

「・・・重いが、降ってみると握りやすいし

力が入りやすい・・・気がする」


ベルバック

「ホウ・・・もしかして詳しい人かい?」


ハチク

「いや、そんなんじゃないが...

それよりアンタ、

私を子供扱いしないんだな」


ハチクは散々見た目で勘違いされてきたので、

自然に接してくるベルバックの態度を逆に

不思議に思ってしまった。


穂波

「あ....確かに…」


ハチク

「・・・ムッ」


ハチクは眉をひそめ、

不愉快そうな目で穂波を睨む。


ベルバック

「NAHAHAHAHA!!!

背の低さで見くびられるのは俺達ドワーフの

専売特許かと思っていたがなぁー!!

DAHAHAHAHA!!!!」


ハチク

「似たような者同士だからってところか?」


ベルバック

「まぁそれもそうなんだが、

俺にはモノを見極める目があるのさ。


金属や鉱石の材料は勿論、

人も例外じゃあない。

確かにあんたは若く見えるがぁ・・・

妖艶な魔女の年齢は、

言動から滲み出ちまうのと一緒さ。

そのたたずまい、剣の扱い。

それなりの経験を積んでいる女性だと

俺にはわかっちまう」


ベルバックの話を聞いて、2人は納得する。


ハチク

「大したものだな。

・・・ところでまた話は変わるが、

戦争が近いっていうのにここの連中は緊張感

の欠片もないが、毎回こんなものなのか?」


ハチクは珍しく自分から、この世界に来てから

ずっと気になっていた事を聞いてみた。


ベルバック

「あぁ、まぁな・・・仕方が無いさ。

昔はもっと血の気の多いバカ共や冒険に憧れた

若モンばっかりだったが、今はもう違う。

こうしてわざわざ武器を見に来るのは、

貴族か物好きな兵士やガキぐらいだ」


穂波

「もうすぐ戦争ならいっぱい売れそうな

気がするんですが、ここは安全なんですね」


ベルバック

「そりゃあ主都だからな。

ここまで戦火が来るようならお終いだろう。

だが場所に関わらず、大規模な戦闘は滅多にない。

なんたって『勇者』がいるからな」



(まただ)


これまで幾度となく出てきた

『勇者』という言葉。質問の答え。

穂波の中には既に、

一つの明確な疑問が浮かんでいた。

それほどまでに、勇者という存在は

『絶対的な希望』なのだろうか?と。



ハチク

「勇者以外に、戦って武器を消費してくれる奴が

いないのは不満じゃないか?」


ハチクの質問に、ベルバックは髭を

揉みながら少し考え込む。


ベルバック

「フゥーーム...不満というかー.....

なんつうかぁなぁ・・・

確かに死活問題だが、何より俺が今1番

気に食わねぇと思うのは、


みんな失うことを恐れて、挑むことに

躊躇しちまってるって事だ。


理想とやる気があっても、勇者と自分を

比較したり、周りの奴らになだめられれば、

すぐ引っ込んじまう」


ベルバックの言葉に、

ハチクは何か思うところがあったのか、

深く息を漏らす。


ベルバック

「だがなぁ、それがなんだって言うんだ!?

人間は俺達の背のことは馬鹿にするが、

自分達の小ささには気がつきやしない!!

分かるか!?

他人なんか関係ねえんだ!

自分のやりてぇ事をすりゃあいい!!

あの頃は俺も人を選んでたが、

玄人も素人も関係ねぇ。

目を輝かし、闘士を燃やして買いに

来てくれるならそれでいい。

客が喜び、俺は儲かる。それで充分!!

そんな単純なことに、最近なってやっと

気づいたのさぁ!GAHAHAHAHA!!!!」


先程まで世の風潮を嘆いていたとは

思えない程のドワーフの豪傑な笑い声が、

店に響き渡る。

ハチクはこの非人間族に同情すると共に、

その単純で前向きな考え方に関心していた。


穂波

「あ!そうだベルバックさん!

アクトさんから、武器を受け取って来て

欲しいと頼まれたのですが」


ベルバック

「おぉ、そういえば・・・って、

あの小僧!!女の子を遣いに出すたぁぁ!!

いい顔して、中身は俺達ドワーフに引けを

取らない傲慢さだなぁ!!!」


ハチク「同感だ」



ベルバック

「ヘッ!まあ取り敢えず頼まれてたもんは

この籠にまとめといたから、

持ってってくれ。

それはそうと、二人は何か欲しくないか?」


穂波

「いいえ。私は使った事もないので・・・

ハチクはどうですか?」


ハチク

「欲しいものか……」


ハチクは剣に覚えはあるものの、

普段から持ち歩かない通り、別段と必要と

していないのだが、彼の作った様々な武器を

見て若干興味が出たようだ。


重厚な武器が置かれる中、

「細くしなやかに」の形容が当てはまるような

一振りの前でハチクは立ち止まった。


ベルバック

「なんだ、それに興味があるのか」


ハチク

「ああ…これが欲しい」


ベルバック

「女の剣士なんて、ここじゃ珍しいからな。

重過ぎず、刃先の切れ味重視で作った剣だが、

男には需要がなくてな。

だから遠慮せず、貰ってくれ」


ハチクはその剣を手に取る。


穂波

「いいですね、似合っていますよハチク」


ハチク

「ありがとう」


ハチクはなにぶんとその剣が気に入った様子で、

小さくブンブンと上下に振ったりしていた。


自身が気に入ったなどはおくびにも

出さないようにしてる素振りもまた、

子供らしいと穂波は思う。


ベルバック

「おうとも。

久々に話相手が出来て楽しかった。

長く引き止めてしまって悪かったな。

勇者の小僧によろしく言っといてくれ!

二人とも良き旅を!!」


穂波

「はい!ありがとうございましたー!」


ハチク

「・・・ああ。達者でな」


ーーーーーーーーーー


穂波

「じゃあ戻りましょうか。

それにしてもベルバックさんは明るくて

豪快な人でしたね。

ドワーフさんは皆あんな感じなのかな?

強面だけど小さくて、でもガッチリしてて...」


ハチク

「まあ確かに筋が通ってる奴だったな。

・・・嫌いじゃない」


穂波

「ハチクがあんなに他の人と話してるの

久々に見た気がしますよー」


ハチク

「・・・世界が違っても、人の社会が

生きにくい事に変わりはないな・・・」


ハチクはふと、思った事を呟いた。


穂波「え?」


ハチク

「いやなんでもない・・・独り言さ」


この世界に生きる1人の思いと

たくましさに触れ、

2人は再び自分達の旅へと戻るのだった。

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