商談開始
約3日と言われた船旅だったが、
風が良かったのか、2日で隣国のアリタイに着いた。
トムと俺は、アリタイ国からすると外国人なので、
入国管理の手続きに向かう。
アリタイ人のルキウスさんとコルネリアとは、ここでお別れだ。
「必ず、お手紙を書きますね。」
「いつか遊びに行ってやるよ。」
トムとコルネリアとは、
会話は噛み合ってるのか噛み合ってないのか分からないが、
すっかり仲良くはなったらしい。
意外としっかりした荷物検査や
通行証の確認、入国目的の確認があったが、
こちらはケドニア国王から命を受けているのだから、
何もやましいところは無い。正直に答えた。
その後、ルキウスさんから教わった、
穀物の卸し問屋に行く。
そこの責任者を呼んでもらい、商談開始となった。
こういうときに国王からの命を受けていると信用されて良い。
お決まりのスモールトークをしてから、
情報の交換を行う。
やはり、ケドニア国王が高値で穀物を買い付けているので、
相場が高止まりしているとのこと。
「相当、儲けたでしょう?」と冗談混じりに聞いてみると、
「いやあ、ぼちぼちですよ。仕入れの価格も上がっていますからね。」
と、回答が返ってきた。
状況は想定通りだな。本題に入る。
「どうでしょう。このまま相場は上がり続けると思いますか?」
「上がると思いますね。」
「では、こういう取引はいかがでしょうか?」
俺は今の値段で、3ヶ月後、一定量の穀物を売る約束をする。
もし、3ヶ月後に今よりも値上がりしていれば、俺は損して、卸問屋が儲かる。
もし、3ヶ月後に今よりも値下がりしていれば、俺は得して、卸問屋が損をする。
いわゆる先物取引というやつだ。
こういう上昇局面では、先物取引で予約をしておいて、
安定的に供給するのが定石ではある。
つまり、生産地も持たずに、値下がりする方に
賭ける俺の方が非常識な取引だとも言える。
流石は商売人、仕組みはすぐに理解したようだが、
暫く考え込んでいる。
「3ヶ月後、貴方が逃げ出さずに必ず穀物を売りに
来てくれるという保証はありますか?」
ごもっとも。
そこで、メランさんのおカネを見せる。
「こちらに金貨1万枚あります。これを保証金の一部として置いていきます。」
不足分は準備が出来次第、届けさせるとも伝えた。
「少し考えさせてくれませんか?」
「ええ、1泊はするつもりですので。翌朝また伺います。」
よろしくお願いします。と頭を下げて、宿に戻った。
トムはトムで、なんだか興奮していた。
こういう大人の会話を聞くのは初めてなのだろう。




