近衛兵長との交渉
近衛兵長は続ける。
「警備兵は犯罪者を追いかける必要がなくなり、
本来の城内の警備に集中できる。
一方、冒険者は高額な賞金稼ぎができる。
ギルドも手数料を多く取れる。か・・・」
「はい。そちらにとっても損は無いと思います。」
これこそ、Win-Winだ。
相手の言い分も、自分の言い分も、両方通らないのが、
Lose-Lose。
相手の言い分、もしくは、自分の言い分のどちらかが
通るのが、Win-Lose。
こちらの言い分も、相手の言い分も、両方が通る。
これが、Win-Win。
交渉術というと、Win-LoseのWin側になる方法を想像する人が多いが、
Win-Winこそが交渉の理想だ。
「ならば、まずは試してみるか・・・」
近衛兵長は独り言のように呟いた。
そして、書類を何枚か持ってきた。
見ると、似顔絵が3枚、それに、
目印が付けてある王都の周辺の地図が1枚だ。
「ここに居ると分かっているのですか?」
「偵察部隊にある程度は探らせてあるからな。」
初めはコソ泥に毛が生えたようなものだったが、
最近では、城外の洞窟に居を構えて、通りかかる
装備が貧弱な旅人を襲うとのこと。
「人数は3人で間違いはありませんか?」
「分かっている人数は3人だが、もしかしたら仲間を増やしているかもしれない。」
うーん。結構リスクがあるな。
報酬はどのくらい貰えるのだろう?
「本当であれば、警備兵5人を派遣しようとしていた案件だ。
もし1週間以内に逮捕してくれるなら金貨1000枚払おう。」
もし、冒険者を5人雇って乗り込むとしたら、
1人あたり金貨200枚か・・・
探す手間は無いとは言え、ちょっと少なくないか?
「もし、3日以内に逮捕できれば、金貨1500枚にしてもらえますか?」
俺の提案に、近衛兵長は目を細める。
「いい提案だね。取引成立だ。」
近衛兵長と俺は固く握手をした。
金貨1000枚で思い出したが、
いまだにギルド立て直し費用の金貨1000枚が貰えていない。
メランさんを捕まえて、金貨1000枚を受け取った。
やっと、宿泊費を気にしなくても良い身分になれたな。
それと気になったので、少し質問をしてみる。
「近衛兵長をなんでそんなに嫌うんだ?手を握られるのがそんなに嫌か?」
「ああ、手を握られるだけならなんてことないわ・・・。なんて言えばいいのかしら。」
「?」
「近衛兵長は勘違いしやすいのよ。すぐ好かれたと思っちゃうの。」
ああ、そういう人いるよねえ、と、ちょっと同情してお城を去った。




