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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
学園武祭編

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200/302

200 シルルン対カリバーン 修


 元ポラリノール王国内にある部屋の一室には、煌びやかな椅子に腰掛ける魔族の姿があった。


「なっ!? 敗れたのか……」


 魔族は放心したような顔をした。


 彼の脳裏には、二匹のスライムを肩にのせた少年と黒ずくめの少年の姿が浮かんでおり、それと同時に「肩にスライムをのせた方は大魔物使いです……お気をつけ下さ――」という思念が途中で途切れた。


「……となると勇者に近い実力があるということか」


(我が自ら赴くか? いや、ここは慎重になるべきか……?)


 魔族は考え込むような表情を浮かべている。


「それにしても大魔物使いか……『魅了』や『精神操作』と変わらん外道職業だ……」


 魔族は忌々しそうに、刺々しい口調で言った。


「外道相手に正面から戦うのは不愉快だな……趣向を変えて対するとするか」


 魔族は視線を天井に向けると、天井からハイ デビルアイが下りてきた。


「ハイ インプと共に難民キャンプで情報を集めろ」


 ハイ デビルアイは頷いて、その場から姿が掻き消えたのだった。














「クラゲさんを放せ!!」


 少年は怒りの形相で訴える。


 ジェリーは木に縛られており、その顔には生気がなかった。


「馬鹿なことを言うな。魔物は危険なんだぞ」


 赤髪の難民は顔を顰めた。


「クラゲさんは危険じゃない!! 僕を魔物から助けてくれたんだよ!!」


「そんなのは単なる気まぐれだろ」


 金髪の難民が失笑する。


「……お前らは恩を仇で返すつもりなのか!! 恥を知れっ!!」


 少年は憤怒の形相で叫んだ。


「おいおい、言っとくがな、俺たちはお前の母親に頼まれてやってるんだぞ」


 緑髪の難民がめんどくさそうに言った。


「えっ!?」


 少年は放心状態に陥った。


「おいおい、俺の連れに何やってんだ?」


 多数の女難民をはべらせたカリバーンが訝しげな眼差しを難民たちに向ける。


 ジェリーはカリバーンを見て、嬉しそうな顔をした。


「連れってクラゲのことか?」


 緑髪の難民が怪訝な顔をする。


「そうだ。一応聞いておくがお前ら戦闘職なのか?」


 カリバーンは探るような眼差しを難民たちに向けた。


「いや、俺たちは戦闘職ではない」


 赤髪の難民が答えた。


「いかれてるのかお前らは? 戦闘職じゃない奴が魔物に近づくのは自殺行為なんだぞ」


 カリバーンは呆れ顔だ。


「そ、そんなのは分かってる。だが、こんなクラゲの魔物は見たことないし、弱そうだったから捕まえて巡回する兵隊に引き渡すつもりだったんだ」


「兵隊に引き渡すだと?」


 金髪の難民の言葉に、カリバーンは苛立たしげに声を荒げた。


 一瞬で金髪の難民に肉薄したカリバーンは金髪の難民の顔面を殴ると、金髪の難民は弾け飛んで地面を派手に転がった。


「なっ!?」


 難民たちは驚きのあまりに血相を変える。


「ここに来るのが俺より兵隊の方が早かったら、ジェリーは酷い目に遭ってたことになる」


「ま、待ってくれ!? 俺たちは頼まれてやったんだ」


 難民たちは恐怖に顔を歪めて後ずさる。


「あぁん? 頼まれたって誰にだ?」


「あ、あのガキの母親にだ」


 緑髪の難民は慌てて少年を指差した。


「はぁ? なんでガキの母親が出てくるんだ?」


 カリバーンは顔を顰めて、少年の方に向かって歩き出すと、女が少年の元に駆けつけて、少年の前に庇うように立ちはだかる。


「そ、それはこの子がクラゲの魔物が住みつく湖に行くなと言っても行くので、危険だと思って私が頼んだんです」


 女は決死の表情で言った。


「か、母ちゃん……」


 少年は驚いたような顔をした。


「ま、待てっ!? 少年と母親は関係ないだろ!! やったのは俺たちだ!!」


 少年の母親の姿を目の当たりにした難民たちは、母親の前に駆けつけて庇うように立った。


「当たり前だ」


 カリバーンは右の拳で赤髪の難民の顔面を殴り、赤髪の難民は弾け飛んで地面を転がった。


「うぁああああぁあああぁぁ!?」


 緑髪の難民は真っ青な顔で逃げ出したが、足がもつれて転倒し、少年の母親は身体を強張らせて固唾を呑んだ。


「まぁ、君の気持ちも分かるけど、少年の母親の気持ちも分かるんだよね」


 唐突にカリバーンと少年の母親の間に、割って入った少年がいた。


 シルルンである。


 それを目の当たりにした少年の母親は大きく目を見張った。


「危ないから離れてて」


 シルルンは振り返って少年の母親に言った。


 少年の母親はこくりと頷いて、少年を連れてその場から離れる。


「あぁ? お前は何なんだ?」


 カリバーンは右の拳を振るったが、それよりも早くシルルンは『念力』でカリバーンの顔面を殴りつけた。


「ぶふぅ!?」


 カリバーンは鼻から血が噴出し、慌てて手で鼻を押さえて後方に跳躍した。


 それを目の当たりにした少年の母親と緑髪の難民は、雷に打たれたように顔色を変える。


 ジェリーは瞳を輝かせており、身体に巻きつけられたツルを強引に引き千切り、シルルンの傍に駆けつけた。


「――っ!?」


(あの魔物はツルを切れたのか!?)


 緑髪の難民は信じられないといったような表情を浮かべている。


「あれ? 君は確かジェリーだよね……セリックはどうしたの?」


 シルルンは訝しげな顔をした。


 ジェリーは瞳に涙を浮かべてしょんぼりした。


 シルルンは『魔物契約』でジェリーにコンタクトを試みた。


「……セリックは魔物に殺されたんだね」


 シルルンは沈痛な面持ちで呟いた。


「……ジェリーは僕ちゃんのペットになる気はあるのかい?」


 シルルンは『魔物契約』でジェリーに尋ねると、ジェリーはすぐに頷いた。


 視線をジェリーに向けシルルンは透明の球体でジェリーを包んで、一瞬でテイムに成功する。


 ジェリーは嬉しそうにくるくる回って踊っており、シルルンは魔法の袋から赤い果物を取り出して、ジェリーに差し出す。


 赤い果物を触手で掴んだジェリーは、赤い果物を嬉しそうに食べた。


 シルルンは優しげな顔でジェリーの頭を撫でる。


 ジェリーはとても嬉しそうだ。


 シルルンは『念力』でジェリーを掴んで、プニの口の中に入れた。


 ちなみに、プニの口の中には水が入った巨大な樽があり、その中には通常種に進化したミルミルとスライムアクアが浮かんでいて、ジェリーも嬉しそうに樽の中に入ったのだった。


「……なるほどな、お前がシルルンとかいうガキか」


 カリバーンは納得したような表情を浮かべている。


「えっ!? なんで知ってるの?」


 シルルンは面食らったような顔をした。


「そんなことはどうでもいい……お前は俺より強いんだってな?」


 カリバーンは不快そうな表情を浮かべている。


「あのピカピカの鎧を着てる人族は勇者カリバーンデシ!!」


 プニは驚いたような顔でシルルンに思念で伝えた。


「へぇ、君が勇者カリバーンなんだ」


 その言葉に、少年の母親と緑髪の難民の顔が驚愕に染まる。


「人族で俺に勝てるのはセルドだけだ」


 カリバーンは瞬時にシルルンとの間合いをつめて、金色の剣を振り下ろしたが、金色の剣は空で止まる。


 シルルンが『念力』で金色の剣を掴んだからだ。


 シルルンは『念力』で作り出した三本の腕でカリバーンを滅多打ちにし、カリバーンは黄金の鎧が砕け散って派手に吹っ飛んだ。


「ううん、セルドに匹敵するのはアウザー教官なんだよ。セルド自身がビビッてたからね」


「なっ!?」


 地面に突っ伏していたカリバーンは顔を上げて、呆けたような表情を晒している。


「ぎゃはははっ!! 勇者かなんか知らんがざまぁねぇなぁ!!」


 緑髪の難民は小馬鹿にした様子でニタニタと笑う。


「それにお前が連れてる女は全員ブスじゃねぇか!? お前のほうがいかれてるんだよ」


 緑髪の難民は見下すような冷笑を漏らす。


「なっ、なんですってぇ!?」


 カリバーンの女たちは殺気立っている。


「ちぃ……ヒールミラクル!! ヒールミラクル!! ヒールミラクル!!」


 カリバーンはヒールミラクルの魔法を続けて唱えて、体力が回復して立ち上がる。


「えっ!?」


 緑髪の難民は呆然として身じろぎもしない。


 鬼の形相を浮かべたカリバーンは瞬く間に緑髪の難民に肉薄し、右の拳で緑髪の難民の顔面を殴り、弾け飛んだ緑髪の難民はカリバーンの女たちの前に転がった。


 カリバーンの女たちは、一斉に緑髪の難民を踏みつけてボコボコにする。


「俺の女たちはブスじゃねぇ。美人だろうがっ!!」


 カリバーンは忌々しそうに吐き捨てるように言った。


 その言葉に、遠巻きに眺めていた難民たちは不可解そうな顔をした。


 彼らは、カリバーンの女たちのことをブスだと思っているからだ。


 カリバーンの女たちが一般的にはブスなのに、カリバーンが美人だと思っていることには理由があった。


 それは彼が『ブス専』を所持しているせいだった。


 シルルンは身を翻して少年の母親の方に向かって歩き出す。


「僕ちゃんは子供を保護してるんだよね。興味があるならあっちのほうで説明してるから行ってみるといいよ」


 シルルンは東の方向を指差した。


「聞きたいんだけどセルドは魔王と戦ったのかな?」


 シルルンは探るような眼差しをカリバーンに向けた。


「……エンシェント ハイ シーワスプのことならセルドが倒したらしいぜ……ただ、ぎりぎりだったらしいがな……」


「えっ!? 倒したんだ」


(どうやらルプルスが言う未来とは根本的に違うみたいだね……)


 シルルンは複雑そうな顔をした。


「なぁ、シルルン……アウザー教官ってのはどこにいるんだ?」


「トーナの街にある第二武学にいるんだよ。けど、僕ちゃんに勝てないのにアウザー教官には勝てないと思うよ」


 そう答えたシルルンは歩き出し、カリバーンは悔しそうに固く唇を噛みしめるのだった。

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[良い点] ジェリー、良かった…シルルンと合流できた…
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