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刹那の絆  作者: シャーパー
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この世界に来た結果

勝てないだろう、それは分かっていた。


ただ、相手は召喚王を目指しているのだろう。


下手な追い打ちはせず、確実に勝つ方法を選択している。


だからこそ、こちらの猛攻に対して無傷でいられると同時に、こちらを屈服させるに至らないとも言えた。


そう、だから、負けてはいないのだが、勝ちには程遠い。


相手は剣士の男が1人、こいつは他の2人と比べて別格だ。


そして、どこまで出来るか分からない幼女、意外に厄介ではある。


老婆はまあ、一対一なら即座に封殺できるのだが、牽制に専念している分、容易にこちらの攻撃が届く範囲に入ってはくれない。


あの男、俺を召喚した男、あの都筑(ツヅキ)時生(トキオ)という男は、この戦いを見ているだろうか。


初めて会った時から今まで、彼に対する印象は変わっていない。


不幸だった。


狭く薄暗い部屋から出れず、世界への呪詛を紡ぎ続けるだけの人生。


俺は彼を召喚王にしてやって、それで自分に自信を持たせてやるのも、まあ、悪くないのではないだろうか、なんて軽く考えていた。


ただ、それはもう叶わない。


それならば、俺が彼にしてやれる事は、生き様を見せてやる事だけだ。


「もう、終わりにしないか?」


剣士の男が言った。


こちらの気持ちに水を差すように。


「そっちも、一気に攻勢に出るってか?」


「いや、後ろで見守っている召喚士に負けを認めさせろ。これ以上、続けたとしても、お前に勝ち目はない」


まあ、窓から飛び出すところを見られていただろうから、そこにこちらの召喚士がいる事など、百も承知だろう。


そこに付け込まないだけ、彼らは卑怯ではないのだろうか。


違う、それもまた、余裕だ。


完全にこちらを屈服させようというわけだ。


「温情には感謝するが、俺も彼も死ぬ覚悟は決めている」


「本当にそうか?」


「どういう意味だ?」


「すぐに分かるさ」


男が何を言っているのか、まるで理解できなかった。


少し考えてみて、自分の考え違いに呆然とした。


都筑時生の居場所が分かっていて、それに付け込まないなんて彼らがいつ言ったのだ。


慌てて振り返ろうとして、だが、研ぎ澄まされたさっきに視線を逸らせなくなる。


男、幼女、老婆。


3人から発せられる殺気は、見過ごせる余裕なんてなかった。


気を取り直し、心を定める。


両手に握った拳銃は捨てる。


今は亡き親友から受け継いだ戦い方だったが、それでは覆せない。


本来の俺に戻ろう。


「今すぐ殺るぞ、俺に続け!」


剣士の男が叫んだ。


俺が危険であると判断したのだろう。


遅いが、遅すぎない判断だ。


声に反応できたのは幼女だけで、この点からも老婆の実力が劣っているのが分かる。


まずは、一番の雑魚から狩る。


瞬間的な速度の超絶化、それが俺の持つ本来の戦い方だ。


普段はそれを拳銃の早撃ちに使っていたが、実際上は相手の間合いを侵略する事に使用した方が殺戮の実行には遥かに向いている。


当然のようにまるで反応できなかった老婆の首を掻っ裂いてやろうとした時、全てが終わった事を理解した。


所詮は部屋から出る程度の事をずっと出来なかったような弱者だ。


脅しに抗うような強さを持ち合わせているわけがない。


「奥の手を隠し持っていたとはな、驚いたよ」


もう、戦わなくても済む事を理解した剣士の男が、剣を鞘に収めて近付いて来る。


「お前達の主を紹介してくれ。召喚王となるべき器の持ち主を…」


「ああ、すぐに会えるさ。偉大なる少年、朝倉戒斗に」


どんな奴でも構わない。


これだけの戦力が揃っていて、俺が加わるのだ。


召喚王は間違いなく、そいつになる。


都筑に言われた台詞を思い出す。


本当に、まあ、この世界に俺は何をしに来たのだろうか…。

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