榊の役割
日本各地で、様々な事件が起こっているようだった。
或いは事故として、もしくは災害として報道されている件も、召喚士が争った故なのかもしれない。
日本だけではなく、世界でも色々と珍しい事が起きているようだったが、あの夢の中に集っていた召喚士の面々は全て日本人だった、そんな気がする。
一応、菜々にも確認したが、彼女も同意見だった。
まあ、背が低くて、色んな人の顔をちゃんと見れなかったかもという補足はあったが。
「安易に結論を出すべきではないと思うが、今は国内の事だけを考えて居れば良いと思うんじゃ」
「わたしも、そう思います」
この件に対し、死骸地の王と桐島はあまり首を突っ込んでこない。
彼らの価値観からすると、正直、これだけ大小様々な国が乱立している状態自体が理解できないらしい。
何故、どこかの強国が統一に乗り出さないのか、それを質問された時は戸惑った。
「で、国内の事じゃが、ワシらは討って出るのか、待ち構えるのか、どちらにするんじゃ?」
これは本来ならば、菜々が決断すべき事だった。
ただ、それを理解した上で、死骸地の王と桐島に問い掛ける。
「待ち構えている意味が無い。討って出る以外の選択肢など、最初から存在していない」
「我も同意見だ。待ち構えるにしたところで、ここがそれに向いているとも思えん」
「立派な家なんじゃが、戦う為に建てたわけでもないしのぅ」
死骸地の王の我が家を軽視する姿勢に対しては、常に釘を刺しておく必要があった。
全てに満足していると言えば、それは嘘になってしまうが、それでも住み慣れた我が家だ。
馬鹿にされたまま放置するなど、とても我慢ならない。
「討って出る…、誰かを倒しに行く、…そういう事ですよね?」
菜々はあまり乗り気では無いようだった。
まあ、それも当たり前だ。
「お前は反対か?お前が反対なら、俺達はそれに従うが、どうする?」
菜々は弾かれたように、桐島を見た。
そして、死骸地の王を、さらにワシを、救いを求めるように見やる。
救ってやりたいが、救ってやりたいからこその討って出るという選択肢なのだ。
だから、安易に今は助け舟を出す事は出来ない。
「わたしは…」
俯く、ジッと下を向いている。
泣いてはいない、ギュッと両手を握りしめて堪えている。
この辺りで、今日は良いのではないかと、そう思った。
ワシが口を開こうとした瞬間、菜々は顔を上げた。
そして、言う。
「わたしは誰も傷付けたくないです。…でも、それ以上に3人が傷付いて欲しくないです。だから、その、わたしは…」
また、下を向く。
震えている彼女を見て、何かを求めるように霧島と死骸地の王に視線を向ける。
「では、俺が決めよう。討って出る、異論はあるか?」
「我は賛成だ。貴様は?」
「ワシらも、賛成じゃ」
菜々の肩に手を置き、2人の意見を口にする。
「ならば、決まりだ。おい、何処から攻めるかを考えるぞ」
そう言って、桐島が死骸地の王と一緒にその場を去った。
残された理由は分かったつもりだったが、実際は分かっていないのかもしれない。
「…ごめんなさい」
「大丈夫じゃ。みんな分かっとるから、ワシらは仲間なんじゃ。だから、安心しておくれ」
霧島と死骸地の王が、こういう役目に決定的に向いていないとしても、ワシがそれに向いているかと言うと、明らかに疑問符が浮かぶ。
しかし、決定的に向いていないというわけでもないのだから、仕方が無い。
まあ、それに戦いが始まったら、最も役に立たないわけなのだから、これくらいは仕方がないと考えるしかなかった…。




