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バル・マスケ~仮面舞踏会~  作者: 桜 夏姫
♪Side Story♪
78/81

Capacité pour autoguérissant~自己治癒能力~

お待たせしました?…待っていてくれた人がいたらいいなって思いながら、投降している今日この頃……

奈落は、義姉さんから借りた白いワンピースを着たリビングにやってきた

ライムグリーンの髪は、海辺で拾った時とは違いすっかり乾いている


「奈落ちゃん、スープのむ?」

「はい、いただきます」


義姉三に促されるようにして椅子に腰を掛けると、兄さんがつくったスープを手に取る

猫舌なのか、それとも癖なのか

幾度と、ふぅ ふぅ  と息を吹きかけ冷ましてからようやく口をちかづける

ごくり ごくん

のどを嚥下させる


「おいしい」


ふわり

そう表現するのがふさわしい笑みを浮かべる

花がほころぶようなそんな笑み


「よかった。おかわりはまだあるからね、いつでもいって」

「はい。」


そして、スープをもう一度口にする

見ているこっちまでに見たくなるような飲み方

本当においしそうに飲むのだ


「兄さん、俺にもくれ」

「わたしもほしいな」


俺と、義姉さんも、奈落があまりにもおいしそうに飲むからつられて飲むことにする

兄さんの料理の腕は普通くらいだと思う

それでも、奈落がこんな風においしそうに飲むとつられる


そして、実際にのんでみて美味しいと感じた


記憶喪失


そういわれてその手があったのかと思う

でも、今からでは遅い


ならどうする?

親に虐待されて逃げてきたとか、誰かについ飛ばされて殺されかけたとか?

それも、無理そうね

正直に話すなんて論外

話しても信じてくれる奴いるの?


「違います」


「聞いていいかな、どうして海岸に倒れていたのか?」

海に落ちて、流されて、たどり着いた

それが、事実なんだけどね

まさか、そのままいうわけにはいかない


「海から流されてきた??」


「疑問形かよ。それで、どうしてお前は流されてきたんだ」

「覚えてるけど言えない。言っても信じない」

「はぁ?」


勇輝のその気持ちわかるよ

でも、どうしようもないじゃないか

あの距離流されて一面とりとめているなんて、どう考えても普通じゃない


「疑ったりしないわよ」


いや、疑わないやつがいるとは思えない


「ん、まぁ、いいや。そのうち話せ。しばらく、奈落おいていいだろう」

「え、うん。私は構わないわよ。妹ができたみたいで楽しいもの」

「奈落ちゃんだっけ、おうちの人とか……」

「兄さん」

勇輝が、その先を止める

止めてくれるのはうれしいけどいったいどうして?


「奈落、買い物いこう。お前の日用品買ってやる」

「?あ、うん」


とりあえず頷く


事前にある程度性格の把握ができてないからやりにくいな


「ちょっと待ってろ」

そう言っておくに行こうとする真澄を、勇輝は止める


「いい、バイト代がある。拾ってきたものの面倒くらいは見る。見れないなら、初めから拾ってきたりはしないさ」


わ、私は犬や猫なの?勇輝の中で奈落はどういう存在よ

もやもやとしたものを抱えながら、勇輝の後をとりあえずついていくことにした


たどり着いたのは、公園だった。

勇輝は、知覚の自動販売機で飲み物を買ってきた。

一つは、コーラ。もう一つは、ミルクティー。

私に、ミルクティの缶を手渡すと口を開く



「さっきは悪かった」

「犬や猫扱いしたことかしら?」

「そうだ。なぁ、奈落。お前、超能力とか使える人間か?」


あれ?

どうして、ここでこの話になる

前後文脈が……???


「ど、どうして」


微妙だな。使えるよ言えば使えるし使えないぅて言ったら使えない

羽矢たちのような、とリックスたーの影響で使える能力とは違う別系統だからだ


私の動揺を、肯定と受け取ったのか言葉を勝手に続ける


「お前、自己治癒能力者か?安心しろ、兄さんたちにも誰にも言うつもりはない。」


自己治癒

そうか、私が海岸で穴がされた直後を見ている

つまり傷一つないほぼ裸体の私を見ているということだ


こくり


どう話が転がるかはわからないけど一応肯定しておく


「そうか、おれもな能力者だ。俺のは、お前のような能力じゃない。奪う能力だ」


カッコン

勇輝が、コーラーの缶のタブを開ける


奪う

その言葉とともに、その能力の上方がかすかな頭痛とともに頭に流れ込む

エルが私に知識を流しているのだ


その知識を一瞥し、使える能力だと思った



がぶっ


腕を、鋭くとがらせた歯でかむ

葉はすぐに通常に戻す

どくどくと流れる赤い血液

そしてそれは、瞬きする間にふさがれる


「証明したわ」

「俺も証明した方がいいか?」

「したくない?」

「能力を使うことにためらいがあるわけではない……

だが、あんまり見せたいものでもないんだ。」


苦い表情で言われるとき聴き出しつらくなる。


コンプレックス


そんな感情が流れてくる。

勇輝は、勇気のお兄さんに劣等感を抱いてるの?


心を読む術を使ったわけではない。

だけど、エルと契約して以来時々周りの人の心が意図せずに流れ込んでくるときがある

私は私の力をまだ、十分に把握をしていない。コントロールができていないのだ。


――――強い思い。強い願い。強いあこがれ。魂の慟哭。強い感情が、トリックスターと共鳴する。


どういう意味?

エルの言葉に、眉をしかめる


―――トリックスターと共鳴するのはそう難しいものではない。素質と強い感情がトリガーとなって、その感情から力が生まれるようだからな。


久遠の力は、トリックスターとの共鳴によるものではない。


―――お前が、懸想しているあの小僧は、自分の手の届く範囲のものを守りたい。それから、少し歪んでいるが、自分の手の届かない範囲に大切な人がいかぬよう閉じ込めてしまいたい。そういう思いが影響している。


小僧って、羽矢のことよね。


―――肯定する。


羽矢はそんな風な思いをトリガーにして能力を持ったのね。

本当なら疑いたいし、否定してしまいたいけどエルのいうことはたいていあっていることはここ最近で身に染みている。

羽矢にとって、久遠が誘拐されたことはトラウマなのかな…。

期待しているのかもしれない。羽矢にとって久遠という存在が大きく会ってほしいと期待している。


まだまだだよね。


「はぁっ」


思わずため息を漏らす。

この時私は失念していた。

私の隣には、勇輝がいたということを。


「わりぃな。ホント。痛い思いまでして証明してくれたのにさ。」


だから、そう謝罪された時、私は何を謝られているのか理解できずにいた。

しばらく呆然としてから我に返る


ホントにまだまだね


「あのね、私聞いたことがある。この能力って、強い感情が関係しているんだって。私のこの能力にもととなるそういう感情や強い願いがあるとしたらね。≪不変≫とか≪生き続けたい≫という願いなんだろうね。」


カッコン

私もミルクティーの缶を開けて一口口にする

甘いミルクの味と紅茶の味が舌を潤す。



「どうして、能力が生まれるような強い思いを抱いたのか、そのエピソードを離せとおいわれても話せる自信はないの。トラウマみたいなものが、強い感情を呼び起こすきっかけになりうるもの。無理にはきかない。いつか話してくれればそれでかまわない。」


勇輝は、驚いたような表情をして固まっていた。


「まぁ、そんなに長く居候するつもりはないわよ」


あわてて付け足すけど、どうやらフリーズした元はそれではないらしい

いつでもたやすく考えていることがわかるわけではないので、正直言ってなんで固まっているのかわからずにいた。



俺は隣に座る、謎の少女を見る

どこにでもいそうな、普通の少女

自分とそう年齢の変わらない少女のはなしをきいて、俺は自分がなんて愚かなのだろうと頭にきた。


「トラウマか…っ。俺のはきっとそんなたいそうなもんじゃない。」


吐き捨てるように言う。

俺のは、彼女に比べればきっとどうでもいいような些細なことだろう

自己治癒なんて能力をもつくらいだ。もしその話が本当ならば、それ相当のトラウマを抱えているということだ。

もし、その話が本当ならば俺は、≪奪われることがいやだった≫のだろう。

自分だけの能力がほしかったわけではなく

ただ、独占したいわけでもなく

奪われたものを奪い返したかったはずの願いがいつしか奪うへと変わっていった


俺は、にいさんが正直妬ましい

なんでも完璧にこなす兄さん。


俺が長時間できたことをあっという間にやり遂げてしまう

俺の方ができると思ったこともあっという間に兄さんの方がうまくなる


だから、妬ましかった


義理姉さんもそうだ

はじめ、義理姉にあったのは勇輝の方だった

先に恋したのも俺の方だったはずだ

それなのに今は兄さんのものだ

いつか彼女を奪ってしまいたい

そう思う乱暴な感情をいつも封じ込めていた


俺は、乱暴をする俺を許せそうにはないから。


べきっ

飲み干されたコーラーの缶がつぶれる


そんなちっぽけなプライドからきっとこの能力は生まれたのだろう


「そう?それでも魂が慟哭するくらい深い思いのはずよ。他のひととね、無理に比較する必要はないの。」


ずずっ

ミルクティーをおいしそうに奈落は飲みほす

ミルクティー好きなのかな?

適当に選んだけど、好きなものだとしたら良かった。


「過去、あなたがどんなに短時間でもそう強く思ったのでしょう?ごちそうさま。この話は、もうおしまいでいいでしょう?買い物行きましょう。」


にっこりと笑う

奈落の笑みは、つくりものめいておらず心から楽しそうだった


「あぁ」



苦い評価まで、感想・評価お待ちしています。La destination tirer est un abîme.~導く先は奈落の底~を次回来週のこのくらいの時間に投降予定です!

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