表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/81

Café-restaurant~喫茶~ 

秋の日曜のある昼下がり

ファンタジアの学生組は、喫茶幻想曲 で、それぞれ ティータイムを楽しんでいた

マスターが、それぞれの好みに合わせて注文を受けた飲み物を用意していく


雪菜は、コーヒーより紅茶葉で、アールグレイ のストレートティーを好む

柑橘系の香りが、いいのだと紅茶好きな久遠が言っていたのを覚えている


護人くんは、アッサム に、ミルクを入れている

くせが少なく芳醇な香りがいいと、久遠は言っていたっけ…


賀上は、コーラーを頼んで飲んでいる。賀上はいつもこれを頼んでいる気がする。

マスターが、コーヒーや紅茶を進めてもコーラーばかり注文する



羽矢が、今口にしているのはエスプレッソを抽出したところへスチームドミルクとホイップドミルクを注いで作られたカプチーノだ


牧島さんは、ソーダフロートを、飲んでいる

牧島さんとはあれから微妙な関係だ

告白されて振っちゃったからなぁ

自分を振った男の顔なんか見たくないって思われてファンタジアから抜けられるのを覚悟していた

でも……牧島さんの言葉を思い出す


『それでも私は、如月先輩に好きになってもらえるように頑張ります。わたしに好きな人ができるまであなたを思い続けます。いつか振り向いてもらえることを待ちながら』


そんな風に宣言されてしまうと、どうすればいいのかよくわからない

牧島さんはかわいいから、きっと好きになってくれる人がたくさんいるはずだ。

僕は、牧島さんの気持ちには答えられない


なぜなら僕は約束してしまったのだ

あの日あの時

久遠が海にのまれる前


『羽矢、私はあなたを愛します。黒崎久遠にはあなたが必要。だから、私はあなたをだれにも渡したくない。誰のものにもならないで…羽矢は羽矢だけのものでいてね。』


その言葉に対し僕は、『や、約束する。僕は僕以外のものにならない』そう答えたのだから。

僕には久遠との約束を破るという選択肢はなぜだか存在しなかった


特に今日は、ファンタジアとしての活動はない

基本的には、口コミや噂程度で存在が流れていたり、ネット上で依頼を受け付けていたりする程度。あとは、自主的活動とか……。


噂の一つには、町はずれにある犬の置物の背中にある箱の中にファンタジアへの依頼を入れておくというものであったりする。

こういう噂は、おまじないのような話とともに静かにだけど確かに広まっていった。

学生組は、日常会話にそんな話を入れて広めることをしている。ファンタジアいう存在がどんなことをしているのかも、また噂の範囲内を出ないが広まっている。


また、護人くんが管理運営してくれているサイトでは、決まった時間だけ存在させることにして、依頼や能力者として目覚めてしまったものからの相談などを受け付けている。


人探しやペット探しはその中でも群を抜いて多いいかもしれない

人探しは、その結果すでに亡くなられている場合もあったりするのが、残念で仕方がない。

ペットは無事に見つかり、飼い主さんに喜ばれることもある


こないだは、一目でいいから昔住んでいた家を見に行きたいという依頼を小学生の男の子から受けた。

両親が、交通事故で亡くなり、親せきにひきとられたらしい依頼主の少年は、親せきの家でうまくいっているのだが、自分の住んでいた家が取り壊されるかもしれないという話を大人たちの話から聞き、もう一度見たいと依頼しに来たのだ。

長い間家を離れていると、心配されてしまうし、昔住んでいた家まで一人ではいけない。お金もないし、電車を乗り継いでえたどり着ける自信がない。


ファンタジアはこの少年の願いを聞き入れかなえるために動いた。

賀上の能力なら一瞬で飛べるため時間を気にすることも、交通を気にすることもない。

昔住んでいた家の住所は、少年が持っていた書類から調べられたから問題はない。

羽矢の能力なら、ついた途端その家の周囲に結界を張って周囲から異常が起こっていることを認識されない。

いつも道理の無人で静かな家と認識してもらえる。



少年が、学校のある日に決行することになった。

少年は、友人と遊びに行くと言って家を出る。友人にアリバイ工作の協力をしてもらう。

友人――――佐々木護人の弟 佐々木 恭助くんが協力してくれた


クラスは違うけど何度か同じクラスになったことがあるし、遊びに行った事にしても違和感はあまりないだろうとの判断


護人くんもいるからもし何かあってもぼろを出すようなことはないだろう

護人くんには何かあったらすぐに連絡するように頼んだそうすればすぐに飛んで合流が可能だからだ。



少年の家は、住む人がいないためずいぶんとさびしいものになっていた

鍵のかかった玄関を前にして少年は困ったような反応をする


「家の中に入りたいけど無理なのかな?」

「平気だよ。内緒だけど入れるよ。」


賀上の能力で部屋の中へ飛ぶ。


少年は家の中をかけ真和英自分の部屋だったところにたどり着く


荷物は運びだされて空っぽの部屋


だけど、伸長を図ったときにつけたのかクレヨンの線。

壁や窓ガラスに張られたシール

そこにたしかに住んでいたあかしが残っていた



懐かしくて、もう会えない両親を思い出して大泣きする少年

もしかしたら、思い出させてしまったのかもしれない



失った悲しみを……羽矢も久遠を失ったときに感じたからわかる




「ありがとう。」


だから、そう感謝された時思わずもらい泣きしてしまいそうになった

泣き終わって、もう大丈夫な顔になってから護人くんちに飛んだ



どうやら何事もなかったらしい

まだ、帰るまで時間があったからアリバイのためだけじゃなく本当に遊んで帰った。


今日のことは秘密だよ

そういってももしかしたら話しちゃうかもしれない

話したとしても信じてくれる人は少ないだろう


「わすれないよ。」

「うん。あのね、今日の子とお父さんとお母さんには、秘密にしてくれるかな?」

「うん。わかった。まほうつかいのお兄さんたちとぼくだけのヒミツだね。」


そういって別れた

あの後のことは、本当に秘密にしてくれているらしい

護人くんの弟の話ではだが…。



ぼんやりとファンタジアの活動を思い出していると護人くんが話を切り出した


みんな、さっきまでは学校であった事や愚痴とかは口々に言っていたりしていたけどコップを置いて話し出そうとしている様子から、どうやらもうちょっと真剣な話らしい。


「百鬼夜行っていう存在をお二人はご存知ですか?」


どこかで聞いたことがある名前だ。

百鬼夜行?

まぁ、普通ならそれって、妖怪がずらって夜の道を歩くやつだよね?


「百鬼夜行って、説話などに登場する深夜の町を集団で徘徊する鬼や妖怪の群れとか、その行進のこと?」


代わりに、雪菜がきいてくれた

しかし、雪菜や羽矢が想像したものとネット上で上がっている話題は別物だったみたいだ


「合っているんですけど違います。僕が言っているのは、能力者の悪事を独自で裁く能力者の集団です。」


「初めて聞いたわ。」

「僕も初めて知ったきがする?」


なんかその名前…

気のせいかな。

僕らは一度それに間違われたことがある気がする


「そうですか?結構有名ですよ。あっちこっちで活動しているようですよ。日本以外でも。」

「いいやつらなのか、悪い奴らなのかはっきりしないわね」

「たしかに、でも僕らがやっていることに近いって言いえばそうなのかもしれないからもしかしたら遭遇することがあるかもしれないね」


護人が、画面を二人に見せてきた

そこには仮面をつけた長い銀髪の男が移されている


死神が引きいる鬼の集団


そう書かれていた


「詳しいことはまだあまりわかってないんですよね。でも、この写真の場所ってこの間公園のカップルが殺害された場所なんです。その犯人は、捕まっています。自首したらしいですね。捜査資料によると、首を捻じ曲げられている様子で……」


淡々と捜査資料の内容を口にしているけどそれ立派な犯罪だよ

まぁ、護人くんのことだから足を残すようなミスはやらないだろうけど……。

雪菜がぎょっとしてさえぎる


「ストップ!ストップ!ごめん。私猟奇的なの苦手なの。」


「あ、すみません。じゃあ、その辺は飛ばしますね。その自首した犯人は、もう心というものが存在しない抜け殻のような状態だったんですよ。」


「どういうことだ?」

「聞かれた内容には答えるんですけど、無気力っていうか虚脱状態っているか。心ここに非ずって感じなんです。心を抜き取られてしまったみたいに。生きる屍みたいな感じかな」


「護人くん、それがどうしてヒャッキヤコウと関係するの?」


牧島さんの質問を受けてまた別の画面を呼び出す


「百鬼夜行の主――――死神と呼ばれる存在にはどうやら《奪う》能力があるみたいです。心を奪われてしまったんじゃないかと思います。知れにこの事件人間業じゃないんですよね。推測にすぎないんですけど、この自首した男性も能力者であったと思います。能力者犯罪を能力者がさばいたみたいな感じですかね。ちなみに、もうこの男は能力は使えないみたいですよ。呉羽さんが言っていましたしね。」


《奪う》能力を持つ死神と呼ばれる百鬼夜行という能力者集団を束ねる存在。

いったいどんな目的を持っているのだろう


「相変わらずごいけど、犯罪だからね。ソレ。」

「そうですね。なら、僕も能力を悪事に使う人間と判別されてしまいますかね。ちょっと怖いですし、しばらくは自重しておきましょうか」


そうはいうけど、全然自嘲する気配を感じられないのはどうしてだろう

それにしても、気になる存在だ。

百鬼夜行

僕たちはいつか彼らと会う気がした













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ