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le calme avant la tempete ~嵐の前の静けさ~ ー4ー

「久遠、あのさっ

こんな時にあれなんだけどさ…

僕君が・・・す、す」


―――――すきだよ

そう言いたいのに、言葉はうまく出ない

舌がもつれて同じ音を繰り返してしまう

今すごく上がっていることを自覚する

ぐっ…

羽矢、男だろ

覚悟を決めるんだ


「久遠が好きだっ!!」


い、言えた。

言っちゃった!!


「ほえっ??」


何の前触れもなく告白された気がする

久遠は、驚きを隠せない表情で、続くであろう羽矢の言葉を待つ。


「こんな非常時に、なに世迷いごとを言ってるのかって思うよな

僕だってそう思う

だけど、今回の誘拐事件で想った

言わずにいたことをすごく後悔した

えいえんに 伝えられない想いになってしまうのが耐えられなかった」



秘めていた思い

伝えたら壊れてしまう気がして逃げていた

でも今なら僕もいえる気がしたんだ


空気とかタイミングとかすごく悪いよな

もっと雰囲気あって、それぽいところでもう少し先に告白するつもりだったのに…

僕はいったい何をやっているんだ

(少しは自重しろよ 羽矢)

自分で自分を叱る



「何度でも言う

如月羽矢は、黒崎久遠が好きだ」


そして一音一音心を込めて紡ぐ

一番言いたい言葉を紡ぐ


「だから、ぼくにも背負わせてください

君の、久遠の背中の重いもの」


大きく見開かれた黒い瞳



「私の背中にある物は重いよ…

いいの?」


確認の言葉


「あぁ」


返事は肯定に、決まっている

久遠は、一度顔を下に向けてじっと何かを考えている様子だった

コッコッコッ

時計の秒針が進む音が室内に満ちる

意を決したといわんばかりに“がばっと”顔を久遠は上げた

真っ直ぐとこっちを見る

気のせいだろうか

だんだん顔がほてっていくのは…


「私も羽矢が好き

死ぬかと想ったとき羽矢のこと思い出した

おもい伝えてないのに死ねるかぁっておもったの」


うん

そう久遠は自分の中の考えに自分で肯定し、何かの覚悟を決めた様子だ


「これみても同じこといえたらつきあってもいいよ」


その声はさっきと打って変わって悲しげだった



クルリと、後ろを向く


――――しるん しゅるん


久 遠 な に を や っ て る ん だ !!

いくら、むかし同じお風呂に入ったことがあるっていっても…

そ、 それはまずいよ

僕は間違いなく兄さんや零無さんや師匠こと悠さんに殺されるって!!


「わあああぁっ」


情けない悲鳴を出し後ずさる

あわて手で目をかくし、顔を背ける

顔は、熟したトマトのように真っ赤になってるだろう

いきなり何やってるんだよ!

そりゃあ僕もいきなり告白したけど、それと服を脱ぎだすってなんかもう次元が違うよ!


こんな僕の内心を全く気にしないで久遠は言う


「見て」


「だからまずいって、僕らもう中学生になったんだよ!!」


いや、もうすぐ高校生になるのか

ン それとも まだ中学生なんだっていうべきだった?

あれ?あれれ?

僕、相当パニックになってるかも


「見て」


二度目は、命令ではないのに従わせる何かがあった。

ゆっくりと久遠のほうへ振り向く

目を開け、視界をふさいでいた手をどけていく


言われたように、みた


「あっ」


息をのむ


はだけた衣服

肩から腰までを露わにした久遠がいた

カーテン越しから朝焼けの光がはいる

室内を朱色に染める


それは、昔と違い女性らしい起伏が出始めたカラダ



しかし、そこには普通ではないものがあった

赤い線のような無数の傷跡

刃物で傷つけられた傷や、やけどに似たあと

何かに強く打ちつけた青あざ


痛々しかった

白いキャンパスの上に書かれた痛みの絵

久遠が、受けた傷と痛みと苦しみ――屈辱のあと


声は震えていた

拒絶されるという恐怖や不安で、震えていた


「こんな私でも好きになってくれますか

汚れた私を受け入れてくれますか」


後ろを向いている久遠の表情は見えない


変わらない

僕が君を好きな気持ちはこんなことで揺るぐようなものじゃない

僕は、君を受け入れる

君は、僕にその傷を見せた

傷を見せることも男の人に半裸体を見せることも抵抗があったはず

ただ単純に嘘をつくことや、ごまかすことに抵抗があったのかもしれない

それでも、隠したままにして羽矢を気づけたくないという思いがそこにはあったのだと思う


「―――――受け入れる


如月羽矢は黒崎久遠を永遠に愛してやる

その傷もその過去も全部だっ」


その傷を負わせた原因に一部は僕にもある

それにこの10日間君がいない色あせた日々はもう二度と味わいたくない


君を守る

もう二度とそんな目にあわせるものかっ


羽矢の心の中で燃える炎


「ホント

同情や憐みじゃない?」



涙に塗れた声


「ああ

お おとこには二言はない」


「アリガトウ」


振り返った久遠の頬に涙で塗れていた


程良くはだけた衣服

それは、健康的な年頃の男には危ない物がある

猛毒だよ。



服なおしてよ 久遠


傷ついたよう場表情

久遠はこの言葉をやっぱリコの傷はみるに耐えないものだと沈んだのだ

ちちがう

その 刺激が強い 


真っ赤になりながら


「久遠は女の子なんだ人前でそんなかっこうで長時間いたらやばい」


あぁ――

もう君は 僕に なにを言わせるんだ


「あはは そうだよね うん」


そう言って服を直すから羽矢後ろ向いていてネ


そう、頼まれた

衣擦れの音が二人きりの室内に満ちる


「いいよ」


衣服を直し、いつも通りの久遠がいた


「久遠 頼って僕を・・・」


「うん

困ったことがあったら頼むわ」


僕たち両思いで、カレカノの関係でいいんだよね?久遠。



会話が続かない

ふたりとも妙に緊張している


あれっ?

廊下が妙に騒がしい気がする


まぁ、いいかっ


「あのさ 久遠

久遠は久遠だから」


「うん」



見つめ合う


「羽矢」

「久遠」


二人の顔がゆっくりと近づく

磁石がお互い呼び合うように、僕らは互いを呼び合い近づく


ふっと気がつくと互いの息が、かかるほど近くにある

目の前に久遠のかわいく魅惑的なかんばせ


いいよ


そういうかのように久遠は大きな瞳を閉じる

ゆっくりとゆっくりと


ドクク ドドク


こんなに近くにいると僕の心音が君に聞こえていそうだ

君の心音もまた僕に聞こえる気がする


あぁ、なんてかわいらしい唇


羽矢の唇が久遠のそれと重ね合わせる

まさにそのとき、その瞬間!!



ーーーーガラガラッ


「小僧 零無の娘に手を出すとは、いい根性してるねぇ

もちろん、覚悟はあるよな」


突如乱入した人物

久遠も羽矢もよく知る人物


――げっ


今一番合いたくない人物にあってしまった。

やばい、僕 このヒトに殺られるかもしんない


二人の口づけをじゃました人物とはいったいダレ?

次話で、あきらかに!

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