花形アナウンサーが指定してきたのは
花形アナウンサーが指定してきたのは、例の事務所兼商談部屋だ。
「久しぶりですね。どうしたんですか? 髪を切って、コンタクトにしてなんかイケメンになりましたね」
「そう云っていただけると、切った甲斐がありました。ゼミ生に進められて、きっちりした方が良いって……。お願いに上がるわけですから」
(チッ、私のアドバイスでやった訳じゃないのか)
「えっ、なんか言いました?」
「いやいや、こっちのこと。じゃあ、あなたたちは何を知って、何を為そうとしているのか話していただけるのですね」
「まあ、長くなりますし、信じて貰えるか?」
そう言いながら、俺は真実をすべて話した。特にお願いしたいことは奈良と兵庫に行く方法と今のヴィチューブの軍歌の効果を宣伝してもらうことだ。
打ち合わせの結果、軍歌の方は、軍歌検証番組を作ってもらった。
これは簡単な証明だ。俺たちのアップした動画から流れる軍歌は、五百メートル離れたところでも、近いところと同じ音量で聞こえる。コピペだと少し離れると聞こえなくなる。
まあ、俺の力はオリジナルでないと、大和言葉でも暗黒粒子に作用しないということだ。
まあ、そこはさすがテレビの演出と言っておこう。そういうわけで、さらに高画質、高音質、そして高鬼法?の動画が函館テレビの公式としてアップされたのだ。
もう一つのお願いは、俺たちは花形さんの仲介で、千歳基地の自衛隊の重鎮の協力を得ることができた。そして、自衛隊輸送機を使って大阪の八尾駐屯地まで連れて行ってくれることになった。
ゼミ生特に女の子が同行することに凄い反対されたんだけど、本人たちに退く気は全くない。それに彼女たちが居なければ俺もアヌンナキを超える鬼法は使えない。
彼女たち自身が何とか周りを説き伏せて実現したのだ。
俺たちが提出した音源は自衛隊の希望なのだという。ドラゴンの出現が関西方面に頻発し、部隊の再編のための作戦に便乗することができたのだ。
さらに、ドラゴンの迎撃に係る作戦のマスコミからの取材圧力が強くなっていた。自衛隊に協力的なマスコミを選任して、マスコミに協力していることをアピールしたかったのだ。
◇ ◇ ◇
その番組が放送された翌日、ついに公転軌道上に惑星ニビルが現われた。
各国がこの非常事態を報道する。なにせその軌道はあと七日で地球に衝突すると計算されたのだ。
ドラゴンだけじゃない新たな脅威。各国首脳は核兵器の使用を決定した。地球に向かっていた軍事衛星の砲台は、全てニビルに方向転換した。
惑星ニビルが現われてから二日目、ニューヨークの国連本部にニビル星からと思われる打電が入った。初めての宇宙人とのファーストコンタクトは突然だった。
モニターに映し出された六本腕を持つ身長五メートルの巨人たちは自分たちのことを神、アヌンナキと名乗った。その姿はまさに世界各地に残る神話伝説の巨人の姿であった。
そして要求は『エルドラドに招待しろ。そうすれば衝突を回避してやる』の一点張りである。なぜ、ニビルの言葉が分かったのか? それは日本語の古語にそっくりだったからだ。
アヌンナキを説得するため、国連はコンタクトしてきた宇宙人をニューヨーク国連本部に招待することにした。そして、招待した日が本日の正午だったのだ。
俺たちが八尾駐屯地を経由して、奈良の生駒山地の中腹の息吹戸神社に立ったのは、そんな騒ぎが始まる日だった。この騒ぎでついてくる予定だった花形さんたちテレビクルーは八尾駐屯地にその会談の取材で残ることになったのだ。
早朝に八尾駐屯地をレンタカーで出発した俺たちは、吹戸の案内で、息吹戸神社の本殿からさらに山の中に入った奥の院にやって来た。
さすが歴史のある神社だ。樹齢数百年を超えるような杉林が参道の両側に並んでいる。
そして目の前に、紙垂を垂らした注連縄が巻かれた黒い竹が場違いのように現われた。焼けたような佇まいでまっすぐに伸びた幹が途中から折れ、幹だけが残った巨大竹だ。
「なんとも不気味な竹だな?」
「あれがこの奥の院のご神体なんや」
吹戸に言われて、近くまで言って竹をまじまじと見る。酸化して炭のように黒光りする表面に、ペトログラフが刻まれているのが見えた。




