もう、うちかて上に昇ってみたかったのに!!
「もう、うちかて上に昇ってみたかったのに!!」
もともと、目立ちたい関西気質の二人のうち根戸が置いてきぼりにされ八つ当たり気味に巨石を回そうとしたのだ。
公園とかにあるジャングルジムを丸くしたクルクル回すあれだ。正式名称は球体のジャングルジムの意味でグローブジャングルって云うらしい。根戸はイライラすると回すのが癖だったみたいで……。
押しても引いてもダメなら回してみなというわけで、巨石をグローブジャングルのようにクルクルと回す。てっぺんにいた俺たちは吹き飛ばされないよう身を屈め必死に岩にしがみ付く。
「見えた!! 竹クサビが軸になってるにょ!!」
吹戸の目にはなにか見えたようだが……。うん、舌を噛むから気を付けて。
巨石は次第に速さを増し、周りの景色が流れだす。そして、ある境から、遠心力は渦を巻くように空間ごと中心に引きずりこんでいく求心力に変わっていた。
それと同時に、ゼミ生に金龍神の加護が付与された痣が浮かび上がった。
「来るぞ!! これは次元融合空間?!」
口を開いた途端に、俺たちみんなは函館の瀬戸神社と同じように、岩盤で囲われた巨大なドームの真ん中に放り出されていた。
やはり中心部には巨大な台座があり、その上に直径一メートル以上の巨大な竹のクサビが撃ち込まれている。もちろんその空間の四隅に竹も生えている。
目が回って千鳥足のまま台座に近づいていこうとした。するとブーンという低音が響き四隅に生えている竹の節が怪しく光る。
重低音に合わせて、竹の節が輝きをまし、赤色、水色、土色そして黄土色のドラゴンが竹の節から飛び出してきたのだ。
確か赤いのが炎竜、水色が水竜、土色が土竜、黄土色が風竜だっけ。
俺は背中に仕込んだバールを抜き取り、投げる体制を取った。ブレスを吐かれる前に先制攻撃だ。ゼミ生たちは俺の後ろに隠れるように身を寄せた。
「さあっ、バトルの開始だ!!」
みんなは俺の言葉で緊張がはしる。でも、翼を持つ炎竜、水竜、風竜は飛び上がり、土竜を合わせた4匹の竜は天井の一点に向かってブレスを吐いたのだ。
4つのブレスがぶつかって天井が吹きとんだ。次元融合空間が破られた瞬間だ。
ガラスが砕けるように空間が砕けキラキラと光る粒子の先に見慣れた青空がひろがっていた。そして炎竜、水竜、風竜は翼をはためかせ、その割れ目から飛び出していったのだ。
「――? 何がしたかったんだ?」
思考を停止した俺たちに向かって、地竜が地響きを響かせ俺たちに突進してきた。
油断した! 俺だけなら躱せるが、他のゼミ生は……。
「ひふせ!! つちみかどのぬぼこ!!」
吟唱に合わせて地面から土塀が立ち上がった。正面から土竜がぶち当たった。一瞬足を止めた土竜に、さらに地面から生えた土槍がどてっ腹に突き刺さる。
「やったか?!」「さすが、先生!!」
息を潜めていた吹戸兄妹から安堵の声が聞こえたけど……。
土竜は突き刺さった土槍を体内に吸収しだした。そして土壁も……。
「ちっ、足止めしただけか!」
だけど、俺はその一瞬があればいい。
俺はバールを上段に構えたまま、土塀を神速で駆け上がる。
土竜が体制を整える前に、土塀を吸収し膨れ上がって土塀から覗かせた土竜の脳天に向かってバールを打ち込む。そして、確かな手ごたえと共に命をぶっこ抜いたのだ。
土竜はガラガラと崩れ、土へと返る。ドラゴンとの戦いも二回目となると俺も余裕ができてきた。それは他のゼミ生も同じなのかもしれない。
土竜の残骸が粒子になり消えていく。
飛び出していった3匹の竜はどうなった?
頭の中にそんな疑問が起きたんだが……、とりあえず、その前にやることがある。
すでに竹クサビの前には、吹戸がたどり着いているのだ。俺はすぐに吹戸に追いついて、バールを渡す。
吹戸は俺からバールを奪うとバールを神主が使う大幣のように構え、左右に振るいだした。
前回の第5チャクラの時と同じだ。吹戸には突き刺さる竹クサビのポイントが見えているのだ。大祓祝詞の一節を高らかに歌い出す。
「焼鎌の利鎌を以って打ち掃ふ事の如く、残る罪は在らじと。祓へ給ひ清め給ふ事を」
祝詞に合わせバールを振るたびに、バールが巨大になっていく。きっとこの空間が見せる幻影なんだろうけど……、バールの二股に分かれた先端が、鎌の形にも見えだした。
「穢れを打ち祓え!!!!」
叫びと共にバールを突き刺さる竹クサビに向かって突き刺す。
俺たちにもバールがどんどん伸びていき、地中深くの龍脈に突き刺さっている竹クサビの根元にバールが突き刺さる幻視が見える。
「後ヨロ!」
軽く声を掛けられ、内心ムカッとする。俺は返事を返さず、バールを両手で掴む。この手ごたえ、がっしりクサビに食いこんでいる。
「んがぁーーーーーぁ!!!!」
気合と共に、バールを掴んだまま左足を引き、体を反転。背負い投げの要領で一気にクサビを引っこ抜いた。
透明になった足元から、マグマの流れのような黄金の流れが蘇り、一部は渦を巻いて噴き出してくる。正常な空気が噴き出し、入れ替わりによどんな空気がその渦に飲み込まれ行く。二重らせんの渦が目の前に現れた。
そして、黄金色の渦の中から金龍神が現われた。




