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IRREGULAR'S HISTORIA  作者: 古河新後
第1部 Remaining story 残光
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15.Back thought 裏の思想

 アパートの前に通る街道に等間隔で設置されている外灯。

 その下で光陽は、よく知る同世代の一人と一年ぶりに再会していた。


 「それで、夜に何の用だ?」

 「いや、カグヤさんからコウが帰って来てるって聞いたから、また鷹さんに海外に飛ばされる前に顔を見ておこうと思って」


 ノハは屈託のない笑顔でそんな事を言う。昔から裏の無いその笑顔は、多くの異性を魅了していた。

 本人は普通をしているつもりなのだが、爽やかな性格もあって、高校に通っていた頃も、女子からの告白が絶えなかった。


 「ま、昨日の今日で飛ばされる心配はない。しばらくは日本にいるよ」

 「そう。そうだ、近いうちに昔の七人で、どこかで飲もうよ。せっかくそう言う事も出来る歳なんだし」

 「お、いいなそれ。あ、祖父ちゃんも来る?」

 「ワシを誘うな馬鹿もん。お前の世代水入らずで、馬鹿騒ぎしておけ」


 気兼ねなく笑い合える同世代の中に、“本家”の重鎮が居るだけでお通夜の雰囲気になる事は間違いなしだ。

 中には気にしない奴もいるが、律儀な人間にとっては息苦しい事この上ない。


 「すみません、桜師範」

 「気にするな」


 腕を組んでやれやれと冴烈は息を吐く。光陽は一年ぶりの親友との再会に、色々と世間話に勤しんだ。


 「一目から聞いたけど、お前、今警察の仕事してんの?」

 「ちょっと部署は違うけどね。僕達みたいな裏の人間でも気兼ねなく入り込める部署だよ」

 「色々あるんだなぁ。『お屋形様』は把握してるのか?」

 「うん。『お屋形様』の仲介で僕に来たからね。月一で報告してるよ」

 「ふーん。なら別に詮索しなくても安心か」

 「何が?」

 「お前、何か別の目的で来てるだろ?」


 光陽の一言は、ノハの確信を突いていた。

 彼は表情には出さず、そして考えたと思えるほどの間も置かずに自然に会話を繋ぐ。


 「君の顔を見に来ただけなんだけどな。なら、それ以外に何がある?」

 「タイミングが良すぎるんだ」


 違和感のない流れは完璧だったが、光陽は別の角度で妙だと思っていたのだ。

 日本に帰ってきて、一週間と経たずに最も親しい同年代の内、二人と会った。


 カグヤは“仕事”の関係上、会う事は間違いなかった。

 一目も同じ職場と言う事で自然と遭遇する。

 しかしノハに関しては、一年間の詳しい状況を知らない上に、今の時間だと……逆に訪問すれば相手に悪いと考えるのが、彼の本質である。つまり、


 「仕事で来たな? どんな仕事かは知らんが……オレが関係ある?」

 「……コウ、落ち着いて教えてほしい」


 流石に誤魔化しきれないと判断したノハは、急に声が張りつめる様な威圧を纏う。

 その様子に光陽は真剣であると悟った。同時に、一年前よりも更に強くなっていると感じ取る。


 「君は……彼女の名前を聞いたかい?」

 「……できれば、そうじゃないと願ってたんだけどなぁ」


 その言葉に光陽とノハは同時に確信を得た。そして、そうであってほしくなかったのは、二人共である。


 「コウ、僕は君を死なせたくない」

 「オレはお前と戦り合いたくない」


 光陽はガードレールから腰を上げ、ノハを見る。傍から見てもボロボロで、絆創膏や包帯を巻いている光陽だが、その程度では彼が引き下がる理由にはならない。


 「昔は……万全の状態でも互角だった。それよりも僕は強くなってるよ?」

 「それは楽しみだ。だが……迷っている“鬼”に殺られるほど、『玄武』は甘くない」


 それも見抜かれていた。

 ノハは、アスラから光陽が【光王】に関わっている事を言われ、サスターのデータエネルギーを見て確信した。

 【光王】と光陽が、存在を強く共有する前に、どうあっても始末するために出向いたのである。

 雑な作戦だが、【光王】は、かなりのダメージを負っている。叩くなら、今が絶好の機会であるとアスラは判断し、ノハも異存はなかった。

 光陽達が部屋に居る間に、アパートの他の部屋の人間は避難させ、今は彼らだけがアパートの敷地に居るのだ。


 「お前は良い奴だ。それは一番よく知ってるよ。たぶん、お前以外なら、オレ達が部屋に居る時に襲撃してたんだろう? あいつが……それだけ危険だって事は解ってる」


 二人の様子を冴烈は黙って見ていた。ノハと光陽は互いに譲れないモノがあり、互いに退く気はない様だ。


 「なら、九九さんに事情を話して部屋を出てほしい。ただ、それだけでいい」

 「無理だ。あそこはオレの部屋で、今日は疲れてるんだ。この後風呂入って寝るつもりだったんだよ」

 「君は、彼女がどれほど危険なのか理解していない」

 「深夜の空で光ってたのがアイツだろ?」

 「……彼女が喋ったのかい?」

 「質問した。そんで、それに答えたんだ」


 嘘は言わなかった。きっと、何を聞いても正直に答えるのだろう。それが結局は意味が無い、としてもだ。


 「なら、もう解るだろ? 彼女は人の手に負える存在じゃない」

 「だが、今日何度も死にかけた」


 災害のような存在。聞けば、とんでもない奴だったと驚いたが、そこで光陽は最初に出会った時を思い出したのだ。

 そこまで異常とは思えなかったのだ。ただ、見知らぬ土地で友達を求める様な……さびしくて、繋がりだけを求める、そんな小さく弱い存在だった。


 「放っておけば勝手に死ぬ。それだけ弱い存在だ」

 「だからって、何をやっても許されるわけじゃない」

 「ああ。だから……誰かが力になってあげれば……問題は無いと思うんだ」


 この時点で、光陽はノハと戦う意志は宿していなかった。オレ達がこれから命を賭けて戦っても無駄にしかならない。


 「好きなの?」

 「…………は?」

 「だから彼女の事、好きなの?」

 「ば……」

 「ば?」


 光陽は思考停止したように硬直する。そして次の瞬間、鳴りだした目覚ましの様に、


 「馬鹿言うんじゃねぇ!! 誰が好きになるか!! そもそもおかしいんだよ! 普通は命取りに来た奴が、また来て、それで好きになるわけないだろ!! そりゃあ、放っておけないけどよ! それとこれとは話が別だ!! ノハお前は捨て猫に恋するか? しねぇだろ!? それと同じだ!!」

 「―――うん……まぁ、捨て猫に恋はしないかなぁ」


 凄まじい形相で言い迫る親友に思わずノハは気圧された。及び腰で後ろに後ずさる。


 「―――は!? ……悪い、忘れてくれ」


 取り乱した状態から我に返った光陽は、今度はガードレールに座って何かを思い出すように両掌で顔を隠す。


 「だ、大丈夫?」

 「嫌な事を思い出した……」


 光陽は、キスをされた事を思い出し、もやもやとした気持ちが渦巻いている。なんだが、本当に取り返しのつかない事をしたような気がしてならない。


 「コウ。彼女の事は承知してるよね?」

 「うん」

 「ここが分かれ道だと思うよ? 元に戻るなら今しか―――」

 「……ノハ。オレはただの通り道だと思っている。変わらねぇよ。オレが背負うモノが一つ増えただけだ」


 その光陽の様子に、ノハも思い出した。目の前の親友は……初めて会った時から、こういう人間であるということを。

 彼は、自分の内にある、正しいと思っている意志は絶対に曲げず、誰よりも前に出る。

 そして、その背中に、ノハは憧れを抱いていた。


 一年前の『乱木集会』の決にて『狭間』への投獄が決まったと聞いた時も同じだった。ヤエを庇った事で彼は拘束され、“本家”の思想に反すると、刑を受けたのだ。

 他の人間には絶対に出来ない。自らの意志を強く持ち、時には絶対的な“存在”にさえ立ち向かう彼は、一年後の今でも変っていなかった。


 「君は変わらないね」

 「お前は、少し変わったな」

 「そう?」

 「ああ、良い方に変わった。護るものが出来たって顔だ」


 ノハは肉体的にも精神的にも強くなっている。

 二人は互いを尊敬し、命を削り合ったほどの中だからこそ、光陽は同世代の中で一番感覚の近い親友の事は良く解るのだ。


 「コウ。顔を覆ったままじゃ、言い台詞には聞こえないよ?」

 「ごめん……なんか合わせる顔が無い」


 喋りながらずっと掌で顔を覆う光陽に、ノハは少し焦っていたと思いつつ冷静に対処する。


 「なら……君に任せるよ」


 なんだが、彼を見てると、本気で心配していたのが馬鹿らしくなっていた。

 元々、悩む必要なんて無かったんだ。彼は、何が正しいのかよくわかる人間だ。それによって周囲から非難を受けようとも、最後までそれを貫き通す意志を持っている。


 「僕は、僕に出来る事をする。コウも、そう言うからには最後まで彼女に対して責任を持ってね」


 ここに来るまで、来てからも迷っていた。もし彼が【光王】を庇うなら力ずくでも排除に移るべきかどうかを……

 しかし、それは些細な事だった。桜光陽が絡んだ時点で、迷う必要なんてどこにも無い。それだけは昔から知っていた事だ。


 「嘗めんなよ。まぁ、捨て猫を拾ったつもりで色々と世話を焼くさ」

 「君らしい。じゃあね」


 ノハは光陽にそう告げ、冴烈に一礼すると来た道を戻るように去って行った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 『やめておこう。今、彼女に手を出すのは得策じゃない』

 「…………どういうこと?」


 サスターはすぐに攻撃に入れるように一部始終を見ながら待機していた。だが、ノハより出るハズだった合図は結局執行されず、入ってきた通信に返答する。


 『アスラは焦り過ぎな気がするよ。一度に全てを同時に行おうとしても、全て取りこぼすかもしれない』


 何を話していたのかは聞こえなかったが、二人の様子から戦うような素振りも、交渉を行った様子もなかった。


 「アスラは納得すると思う?」

 『させるよ。まずは……E市に居る【シャナズ】を相手にするべきだ。アレからは直接的な被害を受けているからね』


 ノハはナンドの事を言っていた。

 ただ、理解無く力をまき散らした【光王】より、事情を知った上で攻撃を仕掛けた【シャナズ】の方が、粛清対象としての優先度は高いと判断したのだ。


 「……そうだね。おれ達じゃ、アスラを止める方法は無い。けど、アスラの“宿主”である君なら、方向性の説得は出来るかもしれないね」

 『それも魂胆の一つだよ。彼と敵対してもプラスになる事は何も無い。それに、君もコウとは戦いたくなかったでしょ?』

 「……それは、想像にお任せする」

 『じゃあ、そう言う事にしておくよ。それじゃ、アスラと直接話に行く』


 その言葉でノハは通信を切った。彼の意見ならアスラも少なからず検討してくれるだろう。それで、【光王】の件は一旦保留になりそうだ。


 「……センパイ。頼むから、全部終わるまで……大人しくしててくれよ」


 サスターは叶いそうにない言葉を呟くと、闇の中へ消えて行った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 中世の鎧。

 背に生える翼は猛禽類のように大きく、広く開いていた。

 腰には両刃の剣を携え、その武器は一薙ぎで万物を両断する。単純な形状である為に、その手の達人か、同じ存在でなければ攻略は難しい。


 「これが、我らを追いかけてくる敵だ。あ、醤油とって」


 次の日の朝食時に少女は、紙に【英雄】の姿を描き出し、冴烈と九九に説明していた。

 影や散る羽まで描かれており、妙なこだわりのある絵になっている。


 「ほら」


 光陽は近くに在る醤油を少女の傍に置く。彼女の足は一晩で綺麗に治っており、もう動きに問題はなさそうだった。


 「さんきゅー」

 「おかわりは?」

 「叔母さん、ちょうだい」

 「我も」


 九九は光陽と少女の空になった御椀に白米を入れ直す。そして、それぞれに手渡した。


 「ありがとう」

 「感謝する」

 「どういたしまして」


 それぞれの礼を聞いて、九九は微笑む。昔、灰木の家に居た時に、よくあったやり取りに懐かしく感じていた。


 「こいつか。ふざけた姿をしているが……見た目通りの奴なのか?」


 冴烈は味噌汁を飲みながら【英雄】の絵を見る。


 「ああ。見たまんま空を飛ぶし、翼無しの身体能力も――――」

 「オレと互角かそれ以上だった」

 「ん? だが、貴様は勝ったじゃないか」

 「紙一重だ。それにオレは一度見逃されている」


 三度ぶつかった『玄武剛山』の二回目。

 逆に吹き飛ばされた時に【英雄】は光陽を殺せたハズだった。どんな理由があったかは解らないが、見逃されたには違いない。

 最初から少女が目的であったと言う事だろう。


 「未熟故にだ。光陽、お前の技量が問題なのではない。心の在り方によって技の質は大きく左右される」


 『玄武双璧』は単なる技ではなく、生き方なのだ。その背に護る者の為に戦うのが『玄武』の真価である。

 今までは護っていた存在が、彼の“妹”であったが故に、ソレを見失っていたのだ。


 「光陽。少しは良く“見える”ようになった?」


 叔母の一言は、一年前に『狭間』へ投獄される前にかけられた言葉の続きだった。あの時は、その言葉の意味を光陽はわからなかった。


 あの時は……妹を失い、『玄武双璧』の意味を見失っていた。生きる意味を……だが―――


 「まだ、ちょっと薄暗いかな」


 既に、そう言う生き方以外を見つけて理解はしていたが、完全ではない。

 光陽にとって、多数を同一に見る事はできなかったのである。それは性質とも言える意志であり、決定的な存在が無ければ、昔の様に『玄武双璧』を発揮することは出来なかった。

 故に、弱くなっていると本人は感じている。


 「奴にまともにダメージを与えたのは貴様の技だ。やはり、対となる存在からの攻撃は、奴に有効だと思う」


 【英雄】は光陽の攻撃で存在自体を危うくしていた。姿が安定しなかった様子から、あのまま追撃を行っていれば間違いなく倒せていたのだ。しかし、


 「だが……再び、その状況に持っていくことは難しい。【英雄】は次に遭遇した時に、貴様に対する対抗手段を持っているだろう」

 「……そもそも、狙われる原因を作ったのはお前だけどな」

 「うむ。あの熱いキスの事だな?」


 その時、全ての動作が停止した。

 冴烈は、ちゃぶ台に置かれた別のおかずに伸ばした箸を停止し、九九はよそっていた、しゃもじを停止させた。


 「ば、馬鹿野郎! 何言っているんだ!!」

 「事実だろう? その前に……我の大事な所に貴様の命をたっぷり流し込まれたからな」

 「なんでわざわざそんな言い方するのー?!」

 「光陽」


 その声は低く、部屋に響く。放ったのは冴烈であり、彼は箸をおいて着物の袖に手を入れて腕を組む。


 「……はー、いくら人ではないとは言え……手を出すなよ……」


 大きく息を吐く冴烈は、やっちまったなぁ、と言った雰囲気で光陽を見ていなかった。少しだけ眼を逸らしている。


 「祖父ちゃん! オレの眼を見てください!!」

 「光陽」


 次は九九だった。必死に祖父への誤解を晴らそうとした矢先である。


 「叔母さん、孫は三人がいいわぁ」

 「いやいや、無いからね!? 普通にそんなつもりはないからね!!」

 「いや、いけるぞ。三つ子なら、一度に三回分お得―――」

 「頼むから、お前は黙ってろ!!!」


 その後、光陽は朝食そっちのけで必死に弁解したが、二人には既に焼け石に水のような雰囲気で、“本家”に帰って行った。





 「最悪だ……」


 光陽は今後の事に頭を悩ませながら『大鳥支局ビル』へ向かっていた。

 壊れた街に伴って、少しだけ違う所を通る出勤ラッシュに遭遇し、少しだけ時間がかかっていた。


 「何、気にするな。貴様が望むなら童ごとき、金太郎飴の様に創ってみせよう」

 「人間は飴じゃねぇ。そもそも、お前は人間じゃねぇ」

 「ふふん。手厳しいな貴様は」


 相変わらず、悪戯に成功した子供の様に笑っている。ノハにはアレだけ啖呵を切った手前、放置するわけにもいかず構っているのだが、既に後悔しそうだった。


 祖父ちゃん……叔母さん……どうか、オレの事を信じてくれ……


 必死の弁解が伝わっている事を願いつつ、『大鳥支局ビル』の前に辿り着いた。


 「これは見事だな」


 『大鳥支局ビル』だった、瓦礫の前に辿り着いた。


 「…………うそぉ?」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 同時刻。早朝の冷ややかな空気に包まれる、E市郊外の海沿いに設けられたD港に、イレヴンは居た。

 いざとなれば海路からの侵入と脱出が比較的容易である事と、人との接触が少なくて済むという理由で、この場所を拠点に選んでいた。

 コンテナの一つに乗り、クレーンでコンテナが運ばれる作業を眺めながら、本国への要請による増援を待っていたのである。


 連絡では、近場で任務に当っていた適任者に要請すると言ったきり通信はしていない。【魔王】側に察知されるリスクを減らしての配慮だった。


 「イレヴン」


 すると、陳列しているコンテナの一つに乗っているイレヴンへ声をかける者達が居た。


 「着いたか。早かったな」


 イレヴンはコンテナから彼らの前に飛び降りて彼らの前に立つ。彼の目の前に居たのは、片目に眼帯を着け、日傘を差した女と、サングラスをかけ、黒いスーツを着た中年の男である。二人ともイレヴンの同僚であった。


 「アハト。ゼリアス。お前達が増援か?」

 「……イレヴン。わたしは貴方より上よ? 優秀なのよ? それが解ってる?」

 「私は始末に来ただけだ。薄汚い裏切り者をな!」


 二人は同僚でも個性の強い者達である。イレヴンたちを取りまとめる上官は、良識のある人間なのだが、なぜ彼らを送り込んできたのかは解らない。


 「アナタでは脱出が難しいわ。【魔王】の包囲の眼を掻い潜って攻撃するには、優秀なわたしが居てこそ可能なのよ。それ故に、アインのお姉さまは、優秀な、わたしを派遣したの」

 「この地には奴がいる。【空王】を裏切った……薄汚い裏切り者がな!」


 二人の意志を確認して納得がいった。アハトは作戦終了時の退避要員で、ゼリアスは私怨から推挙したようだ。


 「二人とも、自害用の準備は万全か?」


 イレヴンたちの部隊は、各員がナンバーで呼ばれている。それでも、顔や身元から判断され、敵に欠員を確認されると戦力が判断される場合があった。

 その為に、死体を残さない自害用の手段を常に持ち合わせていた。無論、遺体も残らないほどの強力なモノである。


 「最悪、E市を道づれに出来るほどのモノを用意しているわ。なんて優秀なわたし」

 「奴を葬れるのなら、命など惜しくは無い!」

 「退却も視野に入れて、生きて報告が最優先だ。位は下だが、最低限はオレの指揮下に入ってもらう。行くぞ」


 イレヴン、アハト、ゼリアスは、中心街よりも郊外より【魔王】の勢力への干渉を始めた。

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