オープニング
おおよそ本編もこんな感じのダラダラした話です。
オープニング
「で、具体的にオカルト研究部って何してるの?」
のっけからそれか。
オカルト研究部に所属しながら、しかも自前のソファーまで持ち込んでいる金髪の上に青と茶色のオッドアイ、さらに超ナイスバディーの美少女、銭丸札子が尋ねてくる。
会話のネタが無いからといって、それは無いだろう。
「銭丸先輩、そんなにオカルト興味無いッスか?」
札子にそう尋ねるのは、ザ・地味眼鏡の井寺坂聖女。ふざけた事に聖女部分はジャンヌと読む。その名前といただけない性癖以外はそこそこ普通と言えなくもない。
「あんまりお金の匂いがしないのよね」
「いや、高校の部活に何を求めてるんだ、お前は」
俺は思わず札子にツッコミを入れる。
「んー? いやいや、別に部活で稼ごうとはしてないって。ねえ、妹ちゃん?」
「はい?」
話に参加していなかった俺の妹、佐野凛が首を傾げている。
「何かオカルトって調べても胡散臭いだけじゃない?」
「恐ろしく失礼な事を言う奴だな。井寺坂、何とか言ってやれ」
「いやー、銭丸先輩がそう言うんなら、まあ、そうなんスかねー」
使えない眼鏡だな、井寺坂の奴は。
「いいか、札子。オカルトってのは非科学的かも知れないが、それは科学で証明出来ていないから胡散臭くも感じられるんだ。だが、戦国時代の一夜城だって、建てた秀吉はともかく建てられた斎藤家からしたらオカルトに思えただろう。つまりオカルトを研究すると言う事は、未知の恐怖から」
「ああ、もうわかった。そう言うのいいから」
自分から振ってきたくせに、札子はそう言って話を区切るとソファーに横になる。
甚だ失礼な奴だ。この俺がオカルトの素晴らしさ、その知的探究心の塊を教えてやろうとしてやっているのに。
「妹ちゃんもそう思うでしょ?」
「兄って回りくどいし、酔っちゃってますからね」
札子の言葉に妹までそんな事を言う。
「まあ、利休はガチでアレだから」
「ガチでアレですよね」
「ガチでアレッスよ」
オカルト研究部の俺以外の女子どもがそんな事を言ってくる。
何が何だってんだ。その例えだったら、なんでもいいだろ?
「オカルト研究するって言うんなら、何で利休がナルシストになったのかを調べてみるのもいいんじゃないの?」
札子はそんな事を言ってくるが、俺はナルシストな訳では無い。
確かに俺は見た目も良いし、背も高い。運動神経も成績も良いので、他の北高男子生徒と比べると本当に恵まれていると思う。
そんな自分がちょっと好きなだけで、別にナルシストな訳では無い。
「部っ長ってナルシストだけじゃなくてむっつりスケベでもあるッスからね」
「お前が言うな、井寺坂。誰がむっつりスケベだって?」
「部っ長ッスよ。私はほら、オープンスケベッスから。ね、銭丸先輩?」
「利休がむっつりなのは知ってるわよ。じゃんぬの場合、オープンスケベって言うより、もう変態ね」
「いやー。照れるッスねー」
と、井寺坂は頭を掻いている。
札子の言葉をどう聞いたら褒められている様に聞こえたんだ、コイツは。お前の方が百倍オカルトだから、井寺坂の方が研究対象向きだ。
大体俺はむっつりスケベでは無い。
キャラのイメージというモノがある。俺みたいに、冷静沈着で、見た目は美男子だが冷たい印象の強い顔立ちの奴が、スケベキャラを表に出すわけにはいかないだろう。だから俺は、周りの印象を裏切らない様に努力しているのであって、決してむっつりスケベでは無いと断言する。
「兄、多分今考えてる事が、ナルシストとかむっつりスケベとか言うと思うよ?」
妹が妙に心配そうに、俺に言ってくる。
お前は俺の心が読めるのか、妹よ。
「まー、利休が残念な奴なのは今に始まった事じゃないけどね」
「見た目は良いんスけどね。部っ長って何で『そう』なんスかね」
「何て言うか、ウチの兄がすいません」
いやいやいや、おかしいだろ妹よ。俺が残念だと言うのなら、北高男子のほとんど全員が残念どころじゃないだろう。
むしろお前達の方が残念だ。
札子こそ、見た目は良いが怠惰な性格は残念だし、妹も見た目は俺の妹なだけあって悪くないのだが、極端に小柄だし成績も運動神経も良くない。井寺坂に至っては論外と言わせてもらおう。
そんな奴等に色々言われたくない。
自己紹介が遅れたが、俺の名は佐野利休。
このまとまりの無いオカルト研究部の部長であり、この部の中で唯一目立った欠点の無い恵まれた人物だと言っておこう。
「ほら、また何か勘違いしてる顔してるよ、利休」
「しょうがないッスよ。部っ長なんスから」
「兄の事はそっとしといて下さい」
これからの物語はそんな俺達に起きた夏休みの出来事なのだが、ホントに言いたい放題だな、お前ら。