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第一話-1

 舞台はUMA部と同じ北高ですが、UMA部は部名しか出てきません。

 舞台が同じだけで、関連性はほぼ皆無です。

第一話 オカルト研究部の面々


 ここはごく普通の高校生が通う県立北高の、オカルト研究部の部室。

「うぃーっす」

 と、女子高生にしては気だるげな声で部室に入って来たのは、俺の幼馴染みでとてつもない美少女の銭丸札子である。字面で見れば礼子に見えなくもないが札子である。『さつこ』と読む。嘘の様な名前だが、これでも本名だ。

 この女は、あらゆる意味で神に愛された人物と言える。もちろん名前以外で。

 まずその出自がすでにおかしい。

 銭丸グループは国内外に影響を持つ大企業であり、札子の父親は銭丸グループの何代目かの代表取締役である。

 もうそれだけであんた一生勝ち組だよ、と言いたくなるくらいなのだが、札子の父親は日本人とイギリス人のハーフで、総合格闘技のベルトを四、五本くらい持ってるんじゃないかという厳つい漢なビジネスマンである。母親は日本人に帰化しているとは言えロシア人。なので、銭丸札子と言う歴とした日本人でありながら、日本人の血は四分の一しか流れていない。

 雪の様に白い肌で髪も金髪。身長も他の女子と比べるとかなり高く、出るべきところがドカンと出て、引っ込むところはシュッと引っ込むスタイルもクォーターなので日本人離れしている。さらに言えば、学力では札子はトップスリーに位置していて、運動神経に関しても国際強化選手クラス。

 その上右目が茶色、左目が青と言う天然のオッドアイ。

 生まれだけでも充分なのに、その外見などもチートにも程がある。一般人と比べられるのはせいぜい名前くらいなものだが、それもインパクトの話をすれば一般人とはかけ離れていると言える。

 そんな有り得ない、一般家庭の生まれには羨ましい限りの女子高生の札子だが、オカルト研究部に所属し、部室に来て最初にする事と言えば、いつの間にか持ち込まれていた自前のソファーにゴロリと寝転がる事である。スカートが短い事もあって無防備極まりない。

 も、もうちょっとで見えそうなんだけど、コレはどうしたモンだろう。

「利休、なんで鏡見てんの?」

 札子が寝転がった状態で、俺の方を見る。

 うおっと、女は男の視線に敏感だってのは本当だな。

「か、鏡くらい見るだろ?」

 俺は瞬時に目を札子から鏡に移して言う。

「鏡見たって、変わったりしないよ? 本当にナルシストね」

 札子は呆れた様に言っている。

 元が変わらなくてもいいくらい整っている事は、分かっている。ついでに言えば、俺はナルシストでは無い。ただ、優秀な自分がちょっと好きなだけだ。

 遅くなったが、俺の名前は佐野利休。県立北高に通う、高校二年生の男子。

外見は高二にして一八四センチの長身と、筋肉質に引き締まった体型。某青少年アイドル事務所に入るには鋭利な顔立ちなので厳しいだろうが、同学年の大半の男子生徒達には本当に申し訳ないと思っている。

「モテない事をナルシストで言い訳してどうなるの?」

 札子はそう言うと、俺に背中を向ける。

 俺はモテないわけでも、ナルシストな訳でもない。俺は眼鏡のせいで冷たく見える整った顔立ちをしているので、ちょっと近寄りがたい雰囲気が出ているのだ。避けられているとか、そう言うのではない。

 今俺と札子の二人がいるのは、オカルト研究部の部室である。

 俺はオカルトというモノに凄く興味がある。だってそうだろう? この世の神秘であるこの分野に知的興味を持たない事など有り得ないだろう。

 だが、オカルト研究部は厳密には部では無く同好会の類で、正式に部活として認められてはいないのだが、そこは暗黙の了解的なものがあって、必ず何かの部活に参加していなければならない北高でも、俺達は特に咎められてはない。

 去年までは三年生の先輩方もいたが、今では二年の俺が部長を務めている。ちなみに正規の部活では無いので、部の予算はゼロ。

 一般の同好会では会員でなけなしの小遣いを出し合って活動費用にアテるところだが、オカルト研究部にはそういう苦労は無い。

 それもこれも、オカルト研究部に自前のソファーを持ち込みそこで寝転がっている、銭丸札子に秘密がある。

「おっそくなりやしたー!」

 と、テンション高く部室にやって来たのは井寺坂聖女。まず間違いなく初対面で彼女の名前を正確に読める人間は存在しない。俺の名前の利休や、銭丸札子も大概だが井寺坂には及ばない。

 井寺坂はそのまま『いでらざか』と読む。他に読みようもないのだが、問題は名前の聖女の方である。なんとコレで『ジャンヌ』と読む。読ませる。もちろん普通に読んでも読めないので、これは井寺坂の名前を付けた人物のセンスなのだろう。

 俺や俺の妹がこの名前だったら一生ヘコむところだが、井寺坂は気に入っている。

「うわぁお銭丸先輩、悩殺セクスィーポーズっすね」

 無防備に寝転がっている札子に井寺坂は興奮気味に言っているが、言われた札子は背中を向けたまま手を振っている。

 俺や札子とは小学校から一緒で、実は井寺坂は名前のせいで中学の頃にいじめっ子グループに目を付けられた事があったのだが、札子のお蔭で事無きを得たらしい。

 それ以来札子を「銭丸先輩」と呼んで慕っているが、誕生日で言えば井寺坂は四月の終わりなので俺や札子より年上の期間がある。

「銭丸先輩、どんなパンツ履いてるんスか? うひひひひひ」

 井寺坂は変態そのものな笑顔で札子の方に行くが、札子は手で払っている。

 ある意味ではこれはオカルト研究部の、札子と井寺坂のアイサツの様なモノだ。

 俺のキャラ的な問題もあるから表だっては無理だが、心の中と視界の端で応援してるぞ、井寺坂。やれば出来る子だと信じてるから、俺のために頑張ってくれ。

 名前と性癖以外を見ると井寺坂は割と普通の女子高生である。オカルト好きな地味眼鏡と言うのが井寺坂だが、札子が言うには隠れ美少女だそうだ。井寺坂自身はそれを強く否定して、絶対に認めようとしない。地味眼鏡のスタイルも頑なに守り続けている。

「じゃんぬ、あんたキチンとすれば相当可愛いのに、なんでワザと変で地味なキャラ作りしてるの?」

 手で払うのが面倒になったのか、札子はわずかに首を動かして睨む様に井寺坂を見る。

「いーやいやいや、銭丸先輩には及ばないッスから。それに、私キャラ作りして地味キャラなんじゃなくて、天性の地味さによる個性を引き出してですね」

 独自の井寺坂理論を振りかざしている。

 札子はああ言っているが、俺が見る限りでは井寺坂は地味である。

 身長は高くも低くもない。どちらかと言えば低い方ではあるだろうが、目立つ程小柄という事もない。髪は後ろ手に無造作に一つにまとめ、縁の大きな黒縁眼鏡も井寺坂の地味さ加減を強めていた。

 本人が地味さに魅力を感じているのなら、本人の魅力を引き出していると言える。

「いや、ちょっと面白そうになってきた」

 寝転がって半眼で見ていた札子だが、ゴロリと寝返りをうって井寺坂を見る。

 日本人の血が四分の一しか流れていない、しかも天然のオッドアイに見られては、下手な不良に睨まれるよりプレッシャーがあるが、俺も井寺坂も小学校の頃から札子を知っているので今さらそれにビビる事は無い。

「何がッスか? ちっとも面白くないッスよ?」

 何に対してもヤル気の無い札子が興味を示した事に、井寺坂は警戒している。

 不良より迫力のある札子の目力だが、それには俺も井寺坂も耐性がある。だが、札子の行動力を発揮した時には俺達ではどうする事も出来なくなる。

 何しろ銭丸グループの財力は常人の感覚では計り知れない。

 具体的に言えば、この部室は去年までただの予備室だった。それが今では札子が寝転がっているソファーや、四人の部員全員にパソコンが用意されていたりした。

 それも部長である俺の知らないうちに、である。

「おはようございます」

 放課後でも部室に来てそう挨拶するオカルト研究部最後の一人は、俺の妹の佐野凛。あだ名は「さのりん」で、あだ名と言うよりは常にフルネームで呼ばれている。

 外見は俺の妹なだけあって、美少女と呼べる愛らしさである。だが、高校一年生なのに身長が一四一センチしかなく、同学年ではもちろん小学生の高学年と比べても相当小柄な方だ。それだけに札子や井寺坂から気に入られている。

「妹ちゃん、おはよー」

「さのりん、助かったッス」

 札子と井寺坂が妹に言う。

 札子の気が妹に向いたスキに、井寺坂は自分のパソコンのある席につく。

 普段からスカートを捲ろうとしたり胸を揉もうとしたり、いろんな意味で頑張っている井寺坂だが、それも札子が面倒そうに払うだけだから出来る事で、札子がヤル気になったら逃げるのが一番だと言う事を知っている。

 なんだかんた言っても、慣れてるよな。俺に迷惑がかからない範囲でなら、どんどんやってくれ。

 一方遅れてきた妹は学力、運動神経共に恵まれた兄の俺と違い、その外見以外は北高にふさわしい中程度の成績と、若干劣る運動神経の持ち主で、俺が妹分まで奪ってしまったのかと申し訳なく思う。

 意外と人見知りする性格で、本人は小説を書く趣味を持っているので文芸部にでも入れば良いのに、顔見知りばかりのオカルト研究部に入って来た。

 ちなみに妹はオカルトにそれ程興味が無い。

 最近は札子が妹の趣味に目を付けて、妹をプロデュースして一山当ててやろうとしているようだが、あいにくと兄の目から見ると妹の小説は面白くない。

 本人は純文学を目指しているらしいのだが、俺が見せてもらったモノが写経か何かかと思う程難解な漢字が羅列していた。内容がどうと言うより、ただ難しい漢字を使いたいだけではないかと疑いたくなった。

 と、本人に言うと、本気で怒っていた。

 今のところ、オカルト研究部の部員は俺込みで四人。

 今後これが増えるかどうかは分からないが、夏休み直前でもまだ俺達四人だった。


 七月の後半にかかる時、一般的な高校では夏休みに入る事になる。

 オカルト研究部にとって本領を発揮する季節に入ったのだが、この部でオカルトに興味が有るのは半数であり、残りの半数は冷房の効いた部室に涼みに来ている。

 札子に関してはここより自宅の方が百倍利便性が高いはずだが、何故か部室に必ずやって来る。

「部っ長! オカルト研究部の研究で、呪いとかどうッスか?」

 と提案して来たのは井寺坂である。

「呪い? 藁人形でも作る気か?」

 思わず俺は井寺坂に警戒の目を向ける。

 この地味眼鏡は、その外見のわりにイベント大好きで、祭り事には首を突っ込みたがる。

 しかも、すでに起きている祭りにはほどほどの興味しかないくせに、自分でこのオカルト研究部でのイベントを起こす事には驚く程積極的である。

「銭丸先輩、何か面白アイテムあるでしょ?」

「面白アイテム?」

 札子は、いつもの定位置である自前のソファーに横になって漫画の週刊誌を読んでいた。

 素晴らしく無防備な体勢で読んでいたので、いつもの様に短いスカートから下着が見えそうになっている。札子は自分が魅力的な女子高生である自覚が皆無らしい。

 まあ、札子が一般人と同じ感覚を持つ事など有り得ないから、仕方が無い。

 欲を言えば「もうちょっと」なのだが、これは言わないでおく。と言うより、言って弱味を握られたくない。ただ、札子はヤル気を見せないだけで相当な切れ者なので、絶妙な角度で見えない角度を維持している可能性は十分ある。

「じゃんぬは何がしたいの?」

「ナニって事は無いッスけど、せっかくオカルト研究部なんですし、このまま夏休みに入っても面白くも何とも無いっしょ? 明日の終業式が終わったら四十日もの夏休みッスよ? 今のところUFOの目撃情報も無いですし、UMAに関してはUMA部に任せれば良いから、ウチらはウチらで何かやりましょうよ」

 ちなみにこの学校にはUMA部と称される部活があるが、正式には理科部である。この部は正式な部活で顧問もいるが、オカルト研究部とは何の関係も無い。

 UMA部に負けたくないのか、井寺坂は妙にやる気である。

 もっともオカルト研究部では、いつもの事だ。

 俺は俺で文献やパソコンでオカルト研究をしているが、基本的には井寺坂が何か発案して無理矢理札子を巻き込む。札子が巻き込まれると騒ぎが異様に大きくなるため、俺や妹も巻き込まれる事になる。

「じゃんぬはどんな面白アイテムが希望なの?」

「えっと、悪魔の実?」

「それは無理ね」

 論じるまでもないと言うように、札子は切って捨てる。

 もし万が一そう言うモノがあったとしても、俺は海賊王には興味が無い。どちらかといえばスタンド関連の方が興味がある。

「じゃ、どんな面白アイテムなら手に入るんスか? 未来の猫型ロボットとか?」

「無理無理。あと百年先の話だから。まあ、アレは確実に科学よりオカルトの分野なのは認めるけど」

 札子が起き上がって言う。

 ちょっとヤル気になってきたらしい。残念ではあるが、俺もスイミングアイを悟られずに済む事を良しとしよう。

「大体私、オカルト関連には弱いから、そっちからリクエストしてもらわないと」

 オカルト研究部にあるまじき事を札子がぶっちゃけている。

「妹ちゃんは何か無い?」

「わ、私ですか? 私は別に。兄に聞いてみたらどうですか?」

「兄はいいのよ。あいつはガチでアレだから」

 札子が失礼な事を言う。

 ガチでアレが何を指しての事かは俺には予想も付かないが、少なくとも札子にガチでアレとか言われたくない。

 ついでに言えば札子に兄とか言われる筋合いも無い。

「聖女が火炙りにされた時の魔女裁判の書類でも探したらどうだ?」

「部っ長、それはあんまりオカルトじゃないッスよ」

 軽く口を挟んでみたが、井寺坂から予想外に冷静な答えが帰って来た。

「何か無いッスか? 夏休みを面白おかしく過ごせる様なオカルトアイテム」

 それはオカルトである必要があるのか?

 井寺坂はインドアの趣味が多いので、オカルトアイテムとかそう言うモノに頼らなくても新作でも旧作でも、家庭用ゲーム機の大作RPGを五本くらい渡しておけば夏休みは大人しくなりそうなモノでもある。

「まあ、私の方で面白そうなモノ見つけてくるわね」

 珍しく札子がヤル気になっている。しかし、これはこれで面倒事の前触れでもあるので、油断は出来ない。

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