プロローグ ある研究者の退職
こちらも新連載になります。
皆様どうかよろしくお願いします。
2127年某月某日、広島県北部にあるとある市の市役所にて、一人の研究者が現在の職を辞し、故郷近くの田舎に引き上げると報告しに来ていた。
「……ふむぅ……それでは、やはり引退されると……」
「はい」
「……ふむ……一応聞いてみるのだが、その、引退を撤回する予定は……」
「ありません」
「……そうか……やはり、決意は固いようですな……」
「ええ」
報告を受けた市長や職員達が軽く引退を撤回するつもりは無いのか? と尋ねてみるも、研究者の決意は固く、市長達の意見は一蹴されてしまう。
結局研究者の見送りをするしかなくなった市長達は、未練たらたらといった様子で研究者が
彼の目的地に向けて旅立っていく姿を見守る事にしていった。
「……そうか……我々としましては、まだまだあなたには仕事をしてもらいたかったのですがね……」
「申し訳ありません。ですがわしももう老い先短い身、そろそろ自由に生きてみたい、そのように思うようになってしまいましてな……」
「……そうですか。あなたにそのように言われてしまっては、我々にはもうあなたを引き留める言葉はありませんな……」
「市長、それでは……わしの事を……」
「ええ。退職を認めます。あなたを自由にして差し上げます」
「……ありがとうございます、市長……それでは、わしはこれで失礼させていただきますよ?」
「ええ、どうぞ……あの、博士……」
「……む? なんですかな、市長?」
「……どうか、残りの人生を楽しく過ごせるように、我々一同、祈っておりますよ?」
「……ありがとうございます。それでは市長、皆さん、お別れです。またどこかで出会うような事があれば、その時はよろしく頼みます」
「わかりました。それでは、博士!」
「……む?」
「今まで、ありがとうございました! 一同、敬礼!」
「はい!」
「……ありがとう……どうもありがとう、皆……」
自身の挨拶を聞いた市長達が、自身に敬礼してくる姿を見た博士が、目を潤ませながら手を上げて返答していった博士。
そうして市長や多くの職員達が見送りをする中、博士は市役所を後にし、これからの彼自身の住居に向けて旅立っていった。
「……ふふ……皆、未練はありそうだったがわしの退職は認めてくれた……これでやっと、故郷の田舎で静かに、のんびりと暮らす事が出来る……ここまで長かっ……む? 道の真ん中に、誰か倒れている……? ふむ……」
自身の住居に向けて車を走らせていた博士は、その道中で行き倒れている人物を目撃する。
そこで博士は、その人物の状況を確かめる為に車を止めると、行き倒れの人物に近付いていった。
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