第五章 金床神の地下王国 1&2
イリア村での戦闘時に見た顔だとクロロたちが上役へ申告したために、レントは盗人らと共に地下牢獄へと投獄された。半島のほぼ中心部に位置するこの牢獄は、銀の採掘跡地を手直しして作られた物で地下の奥深くへと伸びていた。
坑道の奥へと2キロほど進んだ先に牢獄入口の詰所があった。
住み込みで管理している20人ほどの番兵をあっという間に制圧すると、団員たちは奪った服を着込み、代わりに番兵には囚人服を着せて縛り上げた。
「この牢獄はたった今より蠍旅団が接収する。異論のある者は名乗り出よ」
名乗り出よもあったものではない。即座に斬り殺されるのが分かっていて尚、異議を唱える者など1人も居なかった。
「団長、双龍をお返し致します」
「おう、・・・それにしてもここは暑いな」
クロロとレントの会話を聞いて盗人たちが文句を言いだした。
「お、お前ら仲間かよ?こんな地下牢で何をしようってんだ?俺たちをどうする気だ?」
「まぁ口を閉じてろ。おいそこやめろ、盗人を殺そうとするな」
剣を抜きざまに盗人を斬り捨てようとしたアークとデュークをレントが止めた。
柄から手を離したのを見て盗人たちがへなへなと座り込んだ。
「お前ら気が短か過ぎるよ」
「それにしても団長、このあたりは地下火山が地熱を発生させているらしいです。下に行けば行くほど暑くなると言う話ですが・・・本当に行かれるんですか?」
「ああ、ペレの爺さんと約束しちまったからなぁ」
「神域の鍛冶師と言われているドワーフの長老ペレ、ですね」
「なんだ、あの爺さんそんなに有名な人だったのか?」
「有名もなにもあの人が鍛えた剣はお金を出しても買えるものではございません」
「その爺さんに未完成だと言われた双龍が完成させられると聞いたら行くよりないな」
「未完成?その剣が・・・ですか?」
「ああ、爺さんの師匠のイプイスってのがここの牢獄に居るらしい。んで、その師匠がこの双龍を完成させる事が出来るんだとさ」
「団長、爺さんの師匠って言ったら相当な年寄りだろうしこんな過酷な環境で生きてるとは思えないんですがねぇ」
「まぁ実のところ俺もそう思ってる。生きてたとしてもヨボヨボで金槌なんか持てないだろうな」
「そこまで承知の上でなんでまたこんな所に?」
「完成させるか完成させる事が出来ないと確信するまではこいつで人を斬り殺しちゃダメだって言われたんでな、まぁ仕方ないだろう」
そう言うと縛り上げた番兵たちに向かってレントが聞いた。
「そういう訳でお前らなら知ってるよな?イプイスってドワーフはどこに収監されてるんだ?」
聞かれた番兵らが首をひねった。
「あのー、この監獄にドワーフなど1人も居ません」
「1人も居ないって?バカ言うな。じゃあドワーフじゃなくてもいいからイプイスって名前の囚人の所まで案内してくれ」
「イプイスと言う名前の囚人も居りません」
「あ!!もしかしたら地下深くに住み着いているドワーフたちの事かも知れません」
「住み着いてる・・・だと?」
「はい。鍛冶仕事を請け負ってるドワーフの集落が地下の深い所にあります」
「それだ!早く案内しろ」
「ええ?案内って・・・今すぐですか?」
「あったりまえだ。こちとらさっさと用を済ませてお前らんトコのボンクラ王を始末しなきゃいけねぇんだ」
「ボンクラ王って・・・アモン王の事ですか?」
番兵の問いにレントがめんどくさそうに答えた。
「他に誰が居るんだよ。ほら、さっさと行くぞ」




