六人の連携
三軍合同演習、開催八日前。
午前六時三十分。
ジャポネ無宗教軍、第七駐屯基地。
「迅! 起きろ!」
隣のベッドから、ラフバの大声が飛んできた。
「今日の訓練、俺とお前が同じ班だってよ!」
迅は毛布を頭まで被った。
「……知ってる」
「何だ、起きてたのか!」
「お前がうるせぇから起きたんだよ」
「朝から元気ねぇな!」
「朝からうるせぇんだよ、お前は!」
ラフバは豪快に笑った。
「ははは! さっさと起きろ!」
迅は枕を掴んだ。
「……あと五分騒いだら、これ投げるぞ」
「やってみろ!」
「おらっ!」
枕が飛んだ。
「ぶっ!」
ラフバの顔に直撃した。
「てめぇ、やったな!」
「先に喧嘩売ったのお前だろ!」
迅は毛布を剥がし、床に足を下ろした。
「つーか、何で部屋にいんの?」
「鍵、開いてたぞ」
「閉めろよ」
「おう!」
ラフバは勢いよく扉を閉めた。
内側から。
迅は無言でラフバを見た。
「……出てけって意味だよ」
「先に言え!」
「普通分かるだろ!」
廊下からアギの声が響いた。
「二人とも! 朝食が終わりますよ!」
二人の動きが止まった。
「「飯!?」」
「急ぐぞ!」
二人は同時に走り出した。
そして廊下の角で肩をぶつけた。
「邪魔!」
「お前が邪魔だ!」
「俺が先!」
「勝負か!?」
「廊下で競走しないでください!!」
アギの怒声が響いた。
食堂では、すでにエリオット、グラン、ミナが朝食を取っていた。
「おはようございます」
エリオットが穏やかに挨拶する。
「おう!」
迅は食事の載った盆を持って、空いている席へ座った。
ラフバも隣に腰を下ろす。
グランが二人を見た。
「お前ら、本当に仲がいいな」
迅はパンをかじりながら答えた。
「よくねぇよ」
ラフバも頷いた。
「ああ。こいつとはいつか決着つけなきゃならねぇ」
ミナが首を傾げる。
「でも、いつも一緒にいるよね?」
「同じ班だからな」
迅は平然と言った。
「友達じゃないの?」
その質問に、迅は少し考えた。
「……違うな」
ラフバが笑う。
「ははっ! 俺もそう思うぜ!」
迅はラフバを指差した。
「こいつはライバル」
「おう!」
「俺より強くなったら腹立つ奴」
「お前もな!」
「でも、弱くなったらもっと腹立つ」
ラフバの手が止まった。
「……あ?」
迅は何でもないことのように続けた。
「だって、俺が勝つ相手が弱くなったらつまんねぇだろ」
グランは感心したように頷いた。
「なるほど。そういう関係か」
エリオットは少し笑った。
「お互いを認めているんですね」
「認めてねぇよ」
迅が即答した。
ラフバが怒鳴る。
「おい!」
「うるせぇ。パンの屑飛ばすな」
「お前なぁ!」
アギは呆れたように茶を飲んだ。
ただ、少しだけ微笑んでいた。
迅がラフバをどう思っているのか。
アギには、何となく分かっていた。
迅は他人の怪我や疲れを気にするくせに、自分のことには驚くほど無頓着だ。
そしてラフバに対しては、その気遣いをわざわざ乱暴な言葉で包む。
仲が悪いわけではない。
かといって、単純に仲がいいとも言い切れない。
二人の間には、二人にしか分からない勝負があった。
午前九時。
東部広域共同訓練区域、第三演習場。
広大な訓練施設には、第一次世界大戦で破壊された市街地を模した建物が並んでいた。
倒壊した高架道路。崩れた集合住宅。地下通路。
自律式の模擬敵機。
さらに今日は、民間人役の訓練用人形まで配置されている。
六人の前に、三軍合同訓練の担当教官が立っていた。
キリスト教軍所属、ダニエル・クロフォード少佐。
四十代半ばの男で、左頬に古い傷がある。
「本日の課題は、市街地での救助・制圧訓練だ」
巨大な立体地図が投影された。
「市街地には二十四体の模擬敵機が存在する。救助対象は十二名。制限時間は四十五分」
ラフバが笑った。
「二十四体か。余裕だな!」
迅も頷いた。
「俺らだけでもいけそう」
クロフォードは二人を見た。
「では、追加条件を説明する」
画面に赤い文字が現れた。
救助対象の損失、一名につき大幅減点。
建物への過剰な損害も減点。
班員が孤立した場合、指揮評価を減点。
救助対象を全員搬送できなければ、敵を全滅させても任務未達成。
迅の眉が動いた。
「……なるほど」
ラフバが腕を組む。
「つまり、敵を倒すだけじゃ駄目ってことか」
「そのとおりだ」
クロフォードは続けた。
「今回は三軍の混成部隊だ。各軍の装備、戦術、通信規格は異なる。それらを調整し、一つの部隊として動いてもらう」
グランが尋ねた。
「指揮官は誰ですか?」
「アギ・ハワー」
アギが一歩前へ出た。
「了解しました」
迅は即座に頷いた。
「いいじゃん」
ラフバも笑った。
「異議なし!」
グランは少し意外そうだった。
「二人とも、あっさり決めるんだな」
迅が首を傾げる。
「何で?」
「お前ら、自分が前に出たがるだろ」
「戦うときはな」
迅はアギを指差した。
「でも、指揮ならこいつの方が上手ぇよ」
ラフバも頷いた。
「俺が指揮したら全員突撃だからな!」
エリオットが苦笑した。
「自覚はあるんですね」
アギは六人を見渡した。
「では、作戦を立てましょう」
五分後。
「俺が先に突っ込む!」
「いや、俺が正面から突破する!」
「待て! 正面は射線が通ってるだろ!」
「なら壁を壊せばいい!」
「建物損壊は減点です!」
「……じゃあ、窓から入る?」
「三階ですよ!?」
アギは目を閉じた。
ミナが隣で小声をかける。
「……大変だね」
「慣れています」
「それ、慣れていいことなのかな」
アギは深く息を吸った。
「全員、聞いてください」
五人が振り返った。
「今回の目標は敵を倒すことではありません。十二名の救助です」
アギは地図の中央を指差した。
「迅とエリオットさんは東側から偵察。ラフバとグランさんは西側で敵の注意を引いてください」
ラフバが頷く。
「おう!」
「ミナは私と一緒に救助経路を確保します」
ミナが頷いた。
「了解」
「敵の位置が判明したら、迅が孤立した敵機を無力化。ラフバたちは敵を押し戻す。ただし、深追いは禁止です」
迅が笑った。
「了解!」
アギは続けた。
「そして、何か予想外のことが起きたら、勝手に判断せず必ず報告してください」
迅とラフバは顔を見合わせた。
「……また俺ら見てる」
「……ああ」
「聞こえていますよ」
「「はい!」」
午前九時三十分。
訓練開始。
迅とエリオットは、東側の崩れた商店街を進んでいた。
建物の壁には、昔の広告が色褪せたまま残っている。
足元には瓦礫。
頭上には、半壊した歩道橋。
迅は屋根の上へ跳び上がった。
「……おっ」
エリオットが見上げる。
「何か見えますか?」
「三体。北の通りに二体、建物の中に一体」
迅はさらに遠くを見た。
「あと、二階の窓に人形がいる」
エリオットは端末に記録した。
「確認しました」
迅が屋根の上でしゃがみ込む。
「……なあ、エリ」
「はい?」
「あの三体、俺が倒してこようか?」
エリオットは少し考えた。
「今は位置の報告を優先しましょう」
「何で?」
「敵を倒すために移動すれば、こちらの位置が知られます」
迅は通りを見下ろした。
「……あー、そっか」
「それに、建物の中に救助対象がいるかもしれません」
「なるほど」
迅は通信機を取った。
「アギ、東側に三体。北の通りに二体、建物内に一体。二階に救助対象っぽいのが一人」
『了解。位置を記録しました』
アギの声が返ってくる。
『迅、その場で待機してください』
「了解!」
エリオットは少し驚いた。
「……素直ですね」
迅は眉をひそめた。
「何だよ、その言い方」
「もっとすぐに飛び出す方かと思っていました」
迅は笑った。
「前はな」
そして、少しだけ得意げに言った。
「師匠に散々怒られたからさ」
西側。
ラフバとグランは、模擬敵機六体を相手にしていた。
「ははっ! 来いよ!」
ラフバが拳を振るう。
模擬敵機の装甲に、鈍い衝撃が走った。
判定灯が赤から青に変わる。
一体撃破。
グランも素早く踏み込んだ。
敵機の関節部へ訓練用の打撃を入れる。
二体目が停止した。
「二体!」
「俺は三体だ!」
「張り合ってる場合か!」
「負けたくねぇんだよ!」
グランは呆れながらも笑った。
「本当に勝負好きだな!」
そのとき。
ラフバの視界に、さらに四体の敵機が現れた。
「おっ、追加か!」
拳を握る。
しかし、通信機からアギの声が飛んだ。
『ラフバ、グランさん。敵を追わず、現在位置を維持してください』
ラフバは足を止めた。
「……ちぇっ」
グランが横を見る。
「追わないのか?」
「アギが待てって言ったからな」
「意外だな」
「何が?」
「お前、命令を聞かなさそうだから」
ラフバは笑った。
「ははっ! 俺だって聞くときは聞くぜ!」
そして、少し真面目な顔で続けた。
「アギの作戦は、ちゃんと勝てるからな」
グランは一瞬黙った。
「……そうか」
二人は、迫ってくる敵機へ向き直った。
開始から十五分。
救助対象は、すでに五名確保されていた。
敵機も十一体が停止している。
順調だった。
少なくとも、そこまでは。
『アギ!』
エリオットの声が通信機に響いた。
『東側の集合住宅に、追加の敵機が侵入しました!』
アギは地図を確認した。
「数は?」
『四体です!』
ミナが顔を上げる。
「そこ、救助対象が三人残ってる!」
アギは即座に指示を出した。
「迅、エリオットさん。建物内の救助対象を優先してください。敵の無力化は必要最小限で!」
『了解!』
迅は屋根から飛び降りた。
一階の入口へ向かう。
エリオットが続く。
建物内には、模擬敵機が二体。
迅は一体目の側面へ回り込んだ。
「おらっ!」
拳が装甲へ入る。
判定灯が変わる。
一体停止。
二体目もエリオットが無力化した。
「迅さん、二階です!」
「おう!」
階段を駆け上がる。
廊下の奥に、救助対象の人形があった。
迅は駆け寄る。
しかし、その瞬間。
床が大きく揺れた。
ガコンッ!
「……あ?」
天井の警告灯が点滅した。
建物損傷判定。
二階通路、崩落まで残り十秒。
迅は舌打ちした。
「……マジか!」
エリオットが叫ぶ。
「救助対象を運びましょう!」
迅は人形を抱えた。
だが、もう一体が廊下の奥にある。
さらに別室にも一体。
一人では三体を同時に運べない。
迅は通信機を取った。
「アギ! 三人いる! 床が崩れる!」
『了解! 迅、まず一人を搬送してください!』
迅は窓を見た。
外には、瓦礫のない広場。
「……よし!」
人形を抱えて窓へ向かう。
しかし。
エリオットが叫んだ。
「待ってください!」
迅は足を止めた。
「……何!?」
「窓の下に、別の救助対象がいます!」
迅は下を見た。
確かに、人形が一体。
着地地点に置かれていた。
迅は歯を食いしばった。
「……くそっ!」
一瞬の迷い。
その間に、残り時間が減る。
七秒。六秒。五秒。
『迅!』
アギの声。
『西側の非常階段を使ってください!』
迅は振り返った。
非常階段。
しかし、距離がある。
「……間に合うか!?」
『間に合わせます!』
その直後。
外から轟音が響いた。
ラフバとグランが、建物の西側へ到着したのだ。
「迅!!」
ラフバが叫ぶ。
「人形をこっちに渡せ!!」
迅は窓から身を乗り出した。
「ラフバ!」
「早くしろ!」
迅は人形を抱え直した。
下には、ラフバが立っている。
「……受け取れよ!」
「当たり前だ!」
迅は人形を投げた。
ラフバが両腕で受け止める。
着地の衝撃を膝で逃がした。
「よし!」
その間に、エリオットが二体目を運ぶ。
グランが非常階段から駆け上がり、三体目を確保した。
迅は最後に廊下を抜けた。
そして。
ガラガラガラッ!
模擬崩落装置が作動した。
訓練用の軽量瓦礫が、通路を塞ぐ。
六人は全員、建物の外へ脱出していた。
救助対象も三名とも無事。
しかし。
アギの端末には、減点が表示されていた。
救助遅延。
指揮系統、一時混乱。
迅は画面を見た。
「……あー」
アギは静かに言った。
「迅。最初に窓へ向かった判断は危険でした」
迅は頷いた。
「……悪い」
「迅なら一人で脱出できたかもしれません。でも、救助対象は違います」
迅は人形を見た。
「……そうだな」
アギは続けた。
「あなたの速度を基準にしてはいけません。守る相手の速度に合わせてください」
迅は少し考えた。
そして。
「……分かった」
ラフバが横から笑った。
「お前、珍しく反省してんな!」
迅は睨んだ。
「うるせぇ。お前もさっき敵追いかけそうになってただろ」
「追いかけてねぇ!」
「顔が追いかけてた」
「顔で判断すんな!」
グランが吹き出した。
「ははっ! 何だよそれ!」
アギは二人を見た。
「……続けますよ」
「「はい!」」
開始から二十八分。
残りの救助対象は四名。
敵機は七体。
制限時間まで十七分。
アギは地図を確認した。
「残りの四名は、中央の旧駅舎です」
ミナが頷く。
「でも、駅舎の周囲に敵機が集中してる」
エリオットが言った。
「正面からの進入は難しいですね」
グランが拳を握る。
「なら、俺とラフバで突破する」
ラフバも笑った。
「いいねぇ!」
しかし、アギは首を振った。
「それでは駅舎の入口が損傷する可能性があります」
迅が地図を覗き込んだ。
「……なあ」
アギが振り向く。
「何ですか?」
迅は駅舎の北側を指差した。
「ここ、貨物用の搬入口だろ?」
「はい」
「俺がそこから入って、人形の位置を確認する」
アギは頷いた。
「それなら可能ですね」
迅は続けた。
「で、ラフバたちは正面で敵を引きつける。エリとミナが救助対象を運んで、アギが全体を見る」
グランが腕を組んだ。
「なるほど」
エリオットも頷いた。
「合理的です」
アギは迅を見た。
「……良い案ですね」
迅は笑った。
「だろ?」
ラフバが口を挟んだ。
「でも、俺が敵を全部倒したら、お前の出番なくなるぜ?」
迅は鼻で笑った。
「七体くらいで調子乗んなよ」
「何だと?」
「つーか、お前が全滅させる前に俺が救助終わらせる」
ラフバはにやりと笑った。
「勝負か?」
迅も笑った。
「勝負だな」
アギが割って入った。
「勝負ではありません!」
二人は同時に振り返る。
「「分かってるって!」」
アギは頭を抱えた。
「……絶対に分かっていません」
作戦開始。
ラフバとグランが正面へ出た。
「おらぁっ!」
ラフバの拳が敵機の胸部に入る。
判定灯が青へ変わった。
グランはその横を抜け、二体目を停止させる。
迅はその隙に北側へ回り込んだ。
貨物搬入口。
シャッターは半開き。
迅は身体を低くして滑り込む。
「……よし」
駅舎の内部には、古い案内板が残っていた。
崩れたベンチ。割れた窓。
そして、救助対象の人形が四体。
迅は通信機を取った。
「アギ、四人確認。全員、駅舎の待合室!」
『了解。エリオットさんとミナを向かわせます』
「おう!」
迅は人形を一体ずつ、搬入口近くへ運び始めた。
そのとき。
外から大きな音がした。
ドンッ!
迅が顔を上げる。
「……ん?」
通信機からグランの声。
『ラフバ! 右だ!』
続いて。
『分かってる!』
ラフバの声。
迅は一瞬、足を止めた。
窓の外。
ラフバが、敵機二体を相手にしている。
一体の攻撃を受け流す。
しかし、もう一体が背後へ回り込んだ。
迅の目が細くなった。
「……あの馬鹿」
その瞬間。
ラフバが振り返った。
拳を振るう。
敵機の腕を弾く。
だが、体勢が崩れた。
敵機の模擬打撃が、ラフバの脇腹に触れた。
ピッ!
ラフバ、被弾判定。
迅の表情が変わった。
「……おい!」
走り出しかける。
しかし。
腕の中には、救助対象の人形。
迅は足を止めた。
アギの言葉を思い出す。
守る相手の速度に合わせる。
そして。
ラフバの声が聞こえた。
「……ははっ!」
迅は顔を上げた。
ラフバは笑っていた。
「やるじゃねぇか!」
敵機へ踏み込む。
今度は無駄な動きがない。
拳が装甲へ入る。
一体停止。
続けて、もう一体。
判定灯が青に変わった。
迅は小さく息を吐いた。
「……ったく」
そして、人形を抱え直した。
「……負けんなよ、馬鹿」
その声は、誰にも届かなかった。
残り時間、七分。
救助対象は全員確保された。
しかし、最後の一体の模擬敵機が、駅舎の出口を塞いでいた。
グランが舌打ちした。
「くそっ、あいつが邪魔だ!」
ラフバが拳を握る。
「俺が倒す!」
迅が横から現れた。
「いや、俺が行く」
ラフバが睨む。
「お前、さっき救助してただろ!」
「終わったから来たんだよ」
「なら俺に譲れ!」
「何で?」
「最後の一体だぞ!」
迅は鼻で笑った。
「知るか。早い者勝ちだろ」
二人が同時に踏み込もうとした。
そのとき。
「待ってください!」
アギの声。
二人は足を止めた。
「何だよ!」
「最後の敵機は、駅舎の非常用電源に接続されています」
エリオットが端末を見せた。
「無理に破壊すると、建物全体が停電判定になります」
グランが眉をひそめる。
「……面倒だな」
ミナが続けた。
「停電すると、救助経路の一部が封鎖されるみたい」
迅は敵機を見た。
「……じゃあ、壊せねぇのか」
アギは頷いた。
「停止させる必要があります」
ラフバが腕を組む。
「どうやって?」
エリオットが説明した。
「背面に手動停止装置があります。ただし、敵機がこちらを向いている間は近づけません」
迅が笑った。
「……じゃあ、俺が後ろに回る」
アギは首を振った。
「正面から近づけば、敵機が反応します」
迅は少し考えた。
そして。
ラフバを見た。
「……おい」
「何だ?」
「お前、正面で暴れてろ」
ラフバの眉が動いた。
「……あ?」
迅は続けた。
「お前が目立てば、俺が後ろに回れる」
ラフバはにやりと笑った。
「……なるほど」
迅も笑った。
「お前、そういうの得意だろ」
「どういう意味だ!」
「うるせぇって意味」
「ぶっ飛ばすぞ!」
アギが二人を見た。
「……その作戦でいきましょう」
ラフバが笑った。
「よっしゃ!」
グランは呆れたように言った。
「本当にそれでいいのか?」
エリオットが微笑んだ。
「二人の長所を活かせます」
ミナも頷いた。
「うん」
アギは指示を出した。
「ラフバは正面で注意を引いてください。グランさんは左側から援護。迅は背後へ回り込み、停止装置を操作します」
迅が頷いた。
「了解!」
ラフバが拳を握った。
「任せろ!」
作戦開始。
ラフバが正面へ飛び出した。
「おらぁっ!!」
敵機が反応する。
模擬武装がラフバへ向いた。
グランが左から踏み込む。
「こっちもいるぞ!」
敵機の視線が揺れる。
その一瞬。
迅が動いた。
速い。
しかし、一直線ではない。
壁を使い、敵機の死角へ回り込む。
そして。
背面へ到達。
「……見つけた!」
停止装置へ手を伸ばす。
かちり。
敵機の判定灯が消えた。
全模擬敵機、停止。
救助対象、十二名確保。
任務達成。
演習場に終了音が響いた。
迅は拳を握った。
「よっしゃぁ!!」
ラフバも叫んだ。
「勝ったぁ!!」
グランが笑った。
「ははっ! やったな!」
エリオットは息を整えた。
「無事に終わりましたね」
ミナも微笑んだ。
「うん!」
アギは端末を確認した。
制限時間。
残り二分十四秒。
救助対象の損失、ゼロ。
建物損壊、最小限。
ただし、途中の判断ミスによる減点は残っていた。
それでも。
六人は、任務を達成した。
午後一時。
第三演習場、講評室。
クロフォード少佐が六人の前に立っていた。
「まず、任務達成を評価する」
六人が姿勢を正す。
「救助対象十二名、全員確保。模擬敵機二十四体、全停止。建物への損害も許容範囲内だ」
迅が小さく笑った。
ラフバも満足そうに頷く。
しかし。
「だが、満点ではない」
二人の表情が変わった。
クロフォードは映像を再生した。
集合住宅での救助場面。
迅が窓から飛び出そうとした瞬間。
「黒瀬。お前は、自分の身体能力を基準に判断した」
迅は頷いた。
「はい」
「お前なら可能でも、救助対象には不可能な行動がある」
「……はい」
クロフォードは続けた。
「ただし、その後の修正は良かった。仲間を頼り、救助を成功させた」
迅は顔を上げた。
「……ありがとうございます」
次に、ラフバの映像。
敵機に囲まれ、被弾判定を受けた場面。
「エラー。お前は攻撃に集中しすぎた」
ラフバが頷いた。
「はい」
「だが、被弾後は冷静に立て直した。力任せではなく、敵の動きを見て対処している」
ラフバは笑った。
「ありがとうございます!」
クロフォードはグランを見た。
「バルク。味方の援護は良好。ただし、エラーとの連携にまだ無駄がある」
「了解しました」
エリオットとミナにも、それぞれ技術面の評価が伝えられた。
そして。
「ハワー」
アギが一歩前へ出た。
「はい」
クロフォードは画面を切り替えた。
六人の移動経路。
救助対象の搬送順序。
敵機の配置。
そして、各員への指示。
「今回、最も評価すべきは、お前の指揮だ」
室内が静かになった。
「異なる軍の兵士六人を、短時間で一つの部隊として機能させた。途中で問題が発生しても、任務目的を見失わなかった」
アギは静かに聞いていた。
「さらに、黒瀬とエラーの突出した身体能力を、単なる戦闘力ではなく、救助と支援に活用している」
クロフォードは頷いた。
「良い指揮官になれるだろう」
アギは敬礼した。
「ありがとうございます」
迅が小さく拳を握った。
「……よっしゃ」
ラフバも笑った。
「当然だな!」
グランが二人を見る。
「お前ら、自分が褒められたときより嬉しそうだな」
迅は首を傾げた。
「そりゃそうだろ」
「何で?」
迅はアギを指差した。
「こいつ、俺らの尻拭いばっかしてんだからさ」
アギが振り返った。
「……迅?」
迅は続けた。
「ちゃんと評価されねぇと、割に合わねぇだろ」
ラフバも頷いた。
「確かにな!」
アギは少しだけ目を伏せた。
「……ありがとうございます」
迅は笑った。
「何だよ、急に」
「いえ」
アギは顔を上げた。
「何でもありません」
その表情は、少し嬉しそうだった。
午後三時。
訓練終了後。
六人は演習場の休憩所にいた。
ラフバが椅子に腰を下ろす。
「……ふぅ」
迅は水を飲んでいた。
「何だ、疲れたの?」
ラフバが笑う。
「ははっ! この程度で疲れるかよ!」
迅はラフバを見た。
「……ふーん」
そして、視線を落とした。
ラフバの右足。
歩くとき、わずかに体重をかけるのを避けている。
迅は水筒の蓋を閉めた。
「……おい」
「何だ?」
「足」
ラフバが首を傾げた。
「……あ?」
迅は指差した。
「さっきから庇ってんだろ」
ラフバは少し黙った。
「……別に」
迅は鼻で笑った。
「嘘つけ。動き鈍かったぞ」
ラフバの眉が動いた。
「……何だと?」
「いつもなら、あんな敵機に被弾しねぇだろ」
ラフバは顔をしかめた。
「……ちょっと捻っただけだ」
迅は立ち上がった。
「医務室行け」
「大したことねぇって」
「うるせぇ。行け」
ラフバが笑った。
「お前、俺の母ちゃんかよ!」
迅は真顔で答えた。
「誰がお前の母ちゃんだ。こんなデカい息子いらねぇよ」
グランが吹き出した。
「はははっ!」
ラフバも笑った。
「ひでぇ!」
迅は続けた。
「別にお前が痛がってんのはどうでもいいけど」
「おい!」
「次の勝負で手加減する羽目になったら、俺がつまんねぇんだよ」
ラフバは少し黙った。
そして。
にやりと笑った。
「……なるほどな」
迅は鼻を鳴らした。
「分かったら行け」
ラフバは立ち上がった。
「じゃあ、医務室まで競走だ!」
迅は呆れた顔をした。
「馬鹿かお前」
「何だと!?」
「足痛めてる奴が走るなよ」
「……あ」
「本物の馬鹿じゃん」
エリオットが笑いをこらえた。
ミナは肩を震わせている。
アギは深く頷いた。
「迅の言うとおりです」
ラフバは不満そうに歩き始めた。
「……ちぇっ」
迅はその背中を見送った。
そして。
「……ったく」
小さく呟いた。
その直後。
アギが迅の腕を掴んだ。
「……ところで迅」
「ん?」
「あなたの左手、どうしたんですか?」
迅は自分の手を見た。
手の甲に、小さな擦り傷があった。
「ああ、これ? さっき壁にぶつけた」
「手当ては?」
「してねぇ」
アギの目が細くなる。
「……迅」
「何?」
「医務室へ」
「え、こんくらい平気だって」
「医務室へ」
「いや、別に痛くねぇし」
「迅」
「……はい」
ミナが笑った。
「他人のことはよく見てるのに、自分のことは適当なんだね」
エリオットも頷いた。
「不思議な方ですね」
迅は首を傾げた。
「……そうか?」
アギは呆れたように答えた。
「そうですよ」
迅は頭をかいた。
「……分かんねぇな」
午後七時。
ジャポネ北部、旧研究施設跡。
迅は訓練室の扉を開けた。
「師匠ー!」
ロージャは、床に並べた金属製の重りを確認していた。
「来たか、迅」
「おう!」
迅は荷物を置いた。
そして、床に並ぶ重りを見た。
「……ん?」
昨日より、数が増えている。
ロージャは平然と告げた。
「今日の宿題じゃ」
迅は身構えた。
「……何すんの?」
「まず腕立て伏せ三百五十回」
「増えてる!」
「腹筋三百五十回」
「そっちも!?」
「それから、三トンの石柱を十回持ち上げよ」
迅は目を見開いた。
「十回!?」
ロージャは頷いた。
「うむ」
迅は石柱を見た。
昨日、ようやく持ち上げたものだ。
「……師匠」
「何じゃ?」
「俺、昨日三トン持ち上げたばっかだぞ?」
「知っておる」
「じゃあ何で今日十回!?」
ロージャは静かに答えた。
「一度できたことを、いつでもできるようにするためじゃ」
迅は少し黙った。
「……なるほど」
ロージャは続けた。
「実戦では、一度だけ力を出せばよいとは限らぬ。疲れていても、何度でも正確に動けねばならん」
迅は頷いた。
「……おう」
「ただし、今日は昨日より身体が疲れておる。無理に回数をこなすことが目的ではないぞ」
迅は首を傾げた。
「……じゃあ?」
「姿勢が崩れたら中断。身体を痛めるような動きも不合格じゃ」
迅は笑った。
「……厳しいんだか優しいんだか」
ロージャは小さく笑った。
「どちらもじゃ」
迅は腕立て伏せの姿勢を取った。
「……よっしゃ!」
一回。二回。三回。
ロージャは横で見ていた。
「肩を上げすぎじゃ」
「はい!」
「腰を落とすでない」
「はい!」
「呼吸を整えよ」
「はい!」
百回。二百回。三百回。
そして。
三百五十回。
迅は最後の一回を終えた。
「……っしゃ!」
ロージャは頷いた。
「合格じゃ」
迅は床に座った。
「……ふぅ!」
ロージャは水を差し出した。
「休憩じゃ」
迅は受け取った。
「ありがと!」
水を飲む。
そして、ふとロージャを見た。
「……なあ、師匠」
「何じゃ?」
「今日、アギが褒められたんだよ」
ロージャは首を傾げた。
「……ほう?」
迅は嬉しそうに話し始めた。
六人での訓練。
救助対象。模擬敵機。
そして、アギの指揮。
「俺とラフバも頑張ったけどさ」
迅は笑った。
「やっぱ、アギがいなきゃ駄目だったんだよ」
ロージャは静かに頷いた。
「……そうか」
迅は続けた。
「教官が、いい指揮官になれるって!」
ロージャは微笑んだ。
「それはよかったの」
迅は拳を握った。
「だろ!」
ロージャは、そんな迅を見つめた。
「……お主は、他人のことになるとよく喋るの」
迅は首を傾げた。
「……そう?」
「うむ」
ロージャは茶を飲んだ。
「自分が褒められた話は、あまりせぬくせに」
迅は少し考えた。
「……だって、自分のことは自分で分かるじゃん」
ロージャは静かに聞いていた。
「でも、アギが褒められたのは、俺も嬉しいし」
迅は笑った。
「ラフバが強くなったら、腹立つけど嬉しいし」
ロージャの目が細くなった。
「……腹が立つのか?」
「そりゃそうだろ」
迅は即答した。
「あいつには負けたくねぇもん」
ロージャは小さく笑った。
「……複雑じゃの」
迅も笑った。
「……だな!」
そして、ふと思い出したように言った。
「そういや、ラフバの奴、今日足痛めてさ」
「ほう」
「大したことねぇって言い張るから、医務室行かせた」
ロージャは頷いた。
「……よい判断じゃ」
迅は鼻を鳴らした。
「次の勝負で言い訳されたくねぇし」
ロージャは少しだけ笑った。
「……そういうことにしておこうかの」
迅は首を傾げた。
「……何が?」
「何でもない」
ロージャは立ち上がった。
「さて、休憩は終わりじゃ」
迅は顔を上げた。
「……おっ」
「次は腹筋じゃ」
迅は天井を仰いだ。
「……まだあんのかぁ!」
ロージャは平然と答えた。
「当たり前じゃ」
午後八時三十分。
訓練室。
迅は、三トンの石柱を台へ戻した。
九回目。
額には汗。呼吸は荒い。
しかし、目はまだ生き生きとしていた。
「……あと一回!」
ロージャは頷いた。
「うむ」
迅は石柱へ手をかけた。
足を踏ん張る。腰を落とす。
そして。
ゆっくりと持ち上げる。
石柱が床を離れた。
十センチ。二十センチ。三十センチ。
「……っ!」
迅は歯を食いしばった。
ロージャは静かに見ていた。
「……急ぐでない」
迅は頷いた。
「……おう!」
石柱を持ち上げる。
そして、台の上へ。
ゆっくりと。
慎重に。
どん。
石柱が置かれた。
台には、ひび一つ入っていない。
迅は大きく息を吐いた。
「……っしゃぁ!!」
ロージャは頷いた。
「合格じゃ」
迅は床に座り込んだ。
「……つっかれたぁ!」
ロージャは水を差し出した。
「よくやったの」
迅は笑った。
「……だろ!」
ロージャは続けた。
「昨日より、力の伝え方がよくなっておる」
迅は自分の手を見た。
「……そっか」
ロージャは頷いた。
「じゃが、まだまだじゃ」
迅は笑った。
「分かってる!」
そして。
「……なあ、師匠」
「何じゃ?」
迅は立ち上がった。
「最後に、一回だけ組手しようぜ」
ロージャは首を傾げた。
「……疲れておるじゃろ」
迅は拳を握った。
「だからだよ」
ロージャは静かに見つめた。
迅は続けた。
「疲れてるときに、どれだけ動けるか試したい」
ロージャは少し考えた。
そして。
「……よかろう。ただし、短時間じゃ」
迅は笑った。
「よっしゃ!」
二人は向かい合った。
迅が構える。
ロージャは、いつものように自然体。
「……いつでもよいぞ」
迅は息を整えた。
そして。
踏み込む。
速い。
しかし、ロージャは動かない。
迅の拳が伸びる。
その瞬間。
ロージャは半歩だけ身体をずらした。
拳が空を切る。
迅はすぐに体勢を立て直す。
二撃目。三撃目。
ロージャは最小限の動きで避け続けた。
「……くっ!」
迅は一度距離を取った。
ロージャは静かに言った。
「疲れてくると、動きが大きくなるの」
迅は頷いた。
「……分かってる」
「分かっておるなら、直せ」
迅は笑った。
「……厳しいな!」
ロージャも小さく笑った。
「師匠じゃからの」
迅は再び踏み込んだ。
今度は、拳を振るう前に一瞬止まる。
ロージャの動きを見る。
右。左。
そして。
踏み込む。
拳が伸びる。
ロージャは避けた。
しかし。
迅は、そこからさらに一歩踏み込んだ。
指先が、ロージャの袖へ近づく。
あと少し。
ほんの少し。
しかし。
ぱしっ。
ロージャの指が、迅の額に触れた。
「……一本じゃ」
迅は固まった。
「…………」
そして。
「……くっそぉ!」
ロージャは小さく笑った。
「ふふ」
迅も笑った。
「……ははっ!」
悔しい。
だが、楽しい。
昨日より、少しだけ近づけた。
それが分かるから。
迅は、また挑みたくなる。
ロージャは静かに言った。
「……今日はここまでじゃ」
迅は頷いた。
「……おう!」
そして、床に座り込んだ。
「……師匠」
「何じゃ?」
迅は笑った。
「明日もやろうぜ」
ロージャは小さく微笑んだ。
「……もちろんじゃ」
午後九時。
旧研究施設、玄関。
迅は靴を履いていた。
ロージャは、その横に立っている。
「……今日は、よく頑張ったの」
迅は笑った。
「おう!」
ロージャは頷いた。
「帰ったら、しっかり休むのじゃぞ」
迅は手を振った。
「分かってる!」
そして、扉へ向かった。
しかし。
「あ」
足を止めた。
ロージャが首を傾げる。
「……何じゃ?」
迅は振り返った。
「……師匠、明日何か食いたいもんある?」
ロージャは少し驚いた。
「……何故じゃ?」
迅は笑った。
「今日、アギが褒められたからさ。何か買って帰ろうかなって」
ロージャは首を傾げた。
「……アギが褒められたのに、わしに何か買うのか?」
迅は少し考えた。
「……あれ?」
ロージャは小さく笑った。
「ふふ」
迅も笑った。
「……まあ、いいじゃん!」
ロージャは静かに答えた。
「なら、甘い団子がよいの」
迅は頷いた。
「了解!」
そして。
「……じゃあな!」
ロージャも手を振った。
「……またの」
迅は夜道を歩き出した。
その途中。
端末が震えた。
ぶぶっ。
迅は画面を見た。
ラフバからのメッセージ。
『足、問題なかった。明日も勝負できるぞ!』
迅は鼻で笑った。
「……馬鹿だな、こいつ」
返信欄を開く。
文字を打つ。
『治るまで大人しくしてろ。弱ったお前に勝ってもつまんねぇ』
送信。
数秒後。
返信が来た。
『誰が弱ってるって!?』
迅は笑った。
「……ははっ!」
そして、端末をしまった。
夜空には、月が浮かんでいる。
遠くには、ジャポネの街明かり。
迅は歩きながら、小さく呟いた。
「……負けんなよ、ラフバ」
友達。親友。
そういう言葉は、まだしっくりこない。
ラフバはライバルだ。
いつか必ず勝ちたい相手。
負けたくない相手。
そして。
いなくなったら困る相手。
迅は、その違いを深く考えたことがなかった。
ただ、明日もあいつと勝負できる。
それだけで、十分だった。
同日深夜。
三軍合同演習準備本部。
クロフォード少佐は、今日の訓練記録を整理していた。
画面には、六人の評価が並んでいる。
黒瀬迅。
ラフバ・エラー。
アギ・ハワー。
エリオット・グレイ。
グラン・バルク。
ミナ・レン。
六人とも、優秀だった。
しかし。
クロフォードは、ある名前に目を止めた。
アギ・ハワー。
指揮判断。
人員配置。
民間人保護。
そして、突出した戦闘能力を持つ二人の統率。
「……なるほど」
クロフォードは静かに呟いた。
「この少女は、面白い」
報告書に、一行を書き加える。
『将来的な指揮官候補として、継続観察を推奨』
そして、保存した。
まだ、世界は彼らを知らない。
三軍の兵士たちでさえ、名前を聞いたことのない者が大半だった。
だが。
少しずつ。
確実に。
彼らの評価は、積み重なっていた。
三軍合同演習。
開催まで、あと八日。
次回予告
合同演習の準備が続く中、第十三混成班に半日の休暇が与えられる。
迅は久しぶりに天城市へ向かうが、財布の中身は相変わらず寂しい。
一方、ラフバは迅との決着をつけようと勝負を持ちかけ、アギは二人を放っておけず同行することに。
そんな三人が街で出会ったのは、軍人をあまり快く思っていない一人の少年だった。
迅「……別に、俺らが嫌いでもいいけどさ」
ラフバ「お前、何でそんな奴の世話まで焼くんだ?」
迅「……困ってんだから、しょうがねぇだろ」
戦争を知らない世代と、戦争の傷を抱える街。
三馬鹿の小さな休日が始まる。




