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半世紀エチュード  作者: 四方末いそじ


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9/9

煌めく時間に囚われて。

ババアの戯言。その4。

残暑の厳しい折、皆様いかがお過ごしでしょうか。

すっかり体力を奪われて、身体がガッタガタのババアです。


さて。

吾輩は、田舎の冴えないババアである。

生まれてこの方、都会暮らしを経験した事もない。

そんなわけで、今回は懐古厨らしく、私の昔話でもしようと思う。


私の生まれ育った町は、自然はあるが、綺麗ではない。

公害の跡だけ残って衰退していた、そんなメリット皆無な町である。


のどかとは言い難い、不便な田舎住みの芋娘。

そんな私が同人誌という文化に触れたのは高校生の時分。

同級生のお姉さんだったか、同級生自体だったか忘れたが、兎に角そこら辺から入ってきた概念だった。


けれども、田舎者で情弱な私には、即売会に参加など夢のまた夢。

通販だって、凄く敷居が高かった。

おおよそは郵便為替なるものを買って、個人宅に送付せねばならぬのだから、手間が段違いである。

まず、平日の15時までに郵便局に為替を買いに行かねばならんと言う、高いハードルが越えられない。

次に、どうにかそれをクリアしても、自宅宛に送って貰ってから、親の目を掻い潜るのが至難の技である。

しかも、当時は『オタク』なるものの黎明期ちょっと後。

件の事件とも相まって、何とも肩身の狭い時代で、そう言う雰囲気の人たちは浮いた存在であったのだ。


故に、手に入れた時の達成感は凄まじかったが、諦めたことの方が多かったので、今も残念である。

今ほどの図々しさがあれば良かったのだが、一応は花も恥じらう乙女の時期であるので、しかたなし。

まぁ、けれども。

今となっては、多分隠しきれていなかっただろう事は明白なのだが。


それはさておき。

高校に入ってバイトを始めた事で、漫画を自分の所有物として買えるようになったのもデカかった。


あとは、専門誌とコミュニティ雑誌も一生懸命、こそこそ買っていた。

主にアニメージュやら、ファンロードやらである。


今振り返ると、雑誌のコーナーに個人情報載っけて、通販とか文通募集とかも普通にあった時代。

ガバガバの個人情報に何の疑問も持たず、それがまかり通っていた凄い時代だのだ。


ちなみに、私も文通も少しの間やっていたが、それはそれで面白かった。

携帯電話なんかまだなくて、それしか手段がない時代でだからこそではあるのだろうが。

不便であるが、楽しい時代。ある意味、青春である。


ただ、オタクライフを満喫できていたかと言えば、そうでもなく。

特に大きなコミュニティーに属する事ができなかった私は、世間の壁に見事にぶち当たった。


まず、私の青春時代は、BLが市民権を得ていない時代だった。

いや、都会は知らん。

片田舎住みの私にとっては。念の為、そう注釈を付け加えておこう。


BLと呼ばれる前の時代。

『薔薇』とか『耽美』、そして同人の方は『やおい』が主流の呼ばれ方。

『ボーイズラブ』とか『腐女子』呼びが出始めたくらいの時代だったはずである。

高校の折、私が買っていた『BE×BOY』が隔月刊だった頃の話。

規制も倫理もユルユルガバガバで、生々しい表現やりたい放題の時期でもあった。


それ故、そう言う嗜みを持っている事は、バレたら即死レベルの痴態でもあった。


これがひとつ目の壁。

共有出来る友達が皆無。

数少ないリア友と文通している同志。そこら辺と隠れてニヤニヤする事しかできなかった。


2つ目の壁は年齢。

二十歳が近づくにつれ、みんな目を覚まし、足を洗い始めた。

恋人ができたり、受験だったり、価値観だったり。

そうやって、キッパリとリアルに戻って行くのである。

結果、足を洗えずにいる私は、1人で『一般人』に擬態しながら更に潜る事になった。

アンソロ買いまくって、漫画と小説買いまくって、1人で妄想の世界に入り浸る。

まぁ、それはそれで楽しかったんだけれども。


ただ、問題もある。

単独行動には限界がくるのだ。

ネットが一般的でない時代だ。雑誌に載ってる情報は主に都会のものである。

イベントもサークルも。田舎住みにとっては、絵に描いた餅と同義の情報なのだ。

あの頃、酸っぱい葡萄と言い聞かせながら、ファンロードを読んでいた事は今もたまに思い出す。


あと、同人活動なるものもやってみたかった私だが、買う以上に敷居が高かった。

まぁ、アウトプットが下手くそな私には、それ以上の問題も山積みなのであるのだが(笑)

何せ、設定資料集ばっかり作って、頓挫頓挫の繰り返しなのだから、活動以前の問題だ。


そんなこんなで。

二十代も中盤になると、私は完全な読み手になり、筆を置いていた。


とは言え。

私はそれからも、読み手としては足は洗えぬまま。

完全擬態はできないけれど、なんとなく『冴えない一般』として生きて来た。


だが、そんな私は思いもよらぬ所で転機を迎える事となる。

友達に(半強制的に)誘われて始めた某位置ゲーム。

ここの自由帳で、再び筆を持つ事になる。

内容は雑記。私生活の赤っ恥と旅の記録。オタク趣味以外を書き出した。

そして、ここで初めて『完結した内容の文章』を書く事ができた。


そして、pixivとの出会い。

ここで『気軽に書ける二次小説』と出会った。

最初こそは相変わらずの読み手ではあった。

けれど、数年前に一念発起して初めて書くことができた。


結果的に、それが今の活動の一歩目となった。

勿論、バズりとは程遠い、安定した低空飛行の『いいね』と『ブクマ』の数ではあるが(笑)

それでも、誰かに読んで貰えると言う、何とも尊い経験をさせて頂いたのである。


今は昔と違う。

コンビニのコピー機で必死にコピーする必要もない。

家のコピー機で親の目を盗みながらコピーして、必死にホッチキス止めする必要もない。

何より、印刷所に電話して、大枚叩いて装丁し、在庫を抱える心配も必要ない。

発表するだけなら、締め切りもクソもない。


デジタル時代に迎合できず、最低限のデジタル生活しか営めていなかった私ではあるが、それでも最低限の環境でも、やろうと思えば同人小説は書ける事を再認識させて貰えたのであった。


随分遠回りはしてしまったけれど、今の選択肢は『書く』か『書かないか』それだけになった。

だから私は書く事を選んでみた。

まぁ、面白いかどうかは二の次気味ではあるのだけれど(笑)


昔も今もプラスマイナスはゼロである。

ガバガバだけど、人の手に届くまでが難しかった昔。

センシティブに翻弄されるけど、気軽に披露はできる今。

どちらが良いなんてナンセンスではある。


制限はありつつも、あの頃できなかった事ができる。

その事実だけで充分だろう。


素人丸出しでも、文体古臭くっても、懐古厨でも、設定厨でも。

低空飛行なだけで、在庫抱える事もないのだから、リスクは微々たるものだろう。

ならば、書かない言い訳は霧散した(笑)


あの頃の輝きには参加できないけれど、今の隅っこには居座れる。

後悔を素敵だとか口が裂けても言えないし、相変わらずの1人だけれど。


どんな形であれ、終わらぬ旅に時を費やせるなら、それはそれで正解だろう。

ババアだからと言って、サイトに年齢制限があるじゃなし。

形は違えど、やりたかった事がやれるなら、やるに越した事はないと思うのです。


ま。ただ、健康は大事。

そこだけは避けて通れない厳しい現実である。

体力気力と相談しながら、今更ながらに不完全燃焼の青春に火を点け直す。

諦めたら終わりだけれど、それ以前に命あっての物種ですもの(笑)


皆さんも、ご自愛されつつ、人生を謳歌してくださいませ。

命、大事。


では、また。ご機嫌よう。

PS.未だにセンスの磨き方が分かんないんですけど、どうしたら良いんでしょうか?

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