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第74話 人狼王ライナー・ウルフィード 5

「世話になった!!! 感謝してもしきれねぇ!!! 」

「「「ありがとうございやした。エルゼリアの姉さん!!! 」」」


 レストランの休憩時間。

 レストラン前でライナーを筆頭に多くの人狼族、――ウルフィード氏族一同が私の前で片(ひざ)をついていた。

 今は人がいないから良いがこれ誰かに見られたら誤解されるんだろうな、と少し現実逃避しながらライナーに向く。


「これからはバランスよく食事を摂れよな」

「本当じゃ……」


 一歩前に出て私の隣にエルムンガルドが呆れながら立った。

 ゆっくりと立ち上がるライナーは彼女の言葉を受けて「痛いところを突かれた」と言わんばかりに顔を逸らして頬を掻く。

 エルムンガルドの忠告でも食事を改善しないというのは中々に強情だ。

 けれど今回痛い目を見たはずだ。

 これを機に是非改善して欲しい。


「ま、何はともあれ元気になってよかったよ」


 腰に手をやりはにかみながら彼に言うと、ライナーは顔を引き締める。

 一歩前に出てどこか決心したかのような表情を私に向ける。

 働きたいといったメンバーはすでにここで働くことが決定しているが、他のメンバーはわからない。

 恐らく違う土地へ行くのだろうが、はて何かやり忘れたことでもあるのだろうか?


「実は折り入ってお願いがある……いやあります」

「お願い? 」


 人狼王のお願い、か。

 どんなお願いか少し恐ろしい。

 私に出来ることならばいいのだができない事はできないぞ?


「助けられた上おこがましいお願いなのですが……、俺達ウルフィード氏族一同、このリアの町に住まわせてくれませんか! 」

「「「お願いします!!! 」」」


 ライナーの言葉と共に後ろで片膝をついている人狼達が頭を下げた。


「何日もここに住んだ。正直今まで住んだどの町や村よりも居心地が良い」

「この場所に慣れちゃぁ他の村へいけねぇ」

「仕事は俺達で見つける」

「一緒にいさせてくれぇ、姉さん! 」


 人狼達が顔を上げて懇願(こんがん)してくる。

 戸惑っていると一瞬の(すき)に服にしがみついてきた。

 はやっ?!

 じゃなくてどうしたものか。

 そんなにウルウルした目で見られても私にその権限があるわけではない。

 それに普通に住み着けばいいと思うのだが彼らとしては違うみたい。


「出来れば姉さんの近くで」

「お姉様の近くで働かせてください」

「ひ、一先ず町長に相談しよう」


 少し顔を引き攣らせながら彼らにそう告げた。


 いつの間に私は姉さんやお姉様と呼ばれるようになったのだろうか。

 気になって仕方ない。


 ★


 決まれば早い。

 私とソウ、ヴォルトにエルムンガルド、そして一族の長としてライナーがリア町長の館へ向かった。

 館の中へ入ると多くの書類を持って走る文官達が目に入る。

 私達は文官達に軽くお辞儀しながらも、メイド長に誘導される形でリア町長がいる応接室へ入り、事情を説明したのだが……。


「人狼族の皆様が、ですか」

「大丈夫か? 」

「住民から人狼族の方を最近見かけると聞いておりますし、この町はまだまだ空き地がありますので、私は大丈夫だと思いますが……」


 リア町長は首を曲げて後ろに立つコルバーを見上げる。

 するとコルバーは何やら難しい顔をした。


 場所はあるとのことだが、問題があるのだろうか?

 食料事情の改善は軌道に乗った所である。

 コルバーが難しい顔をするのはその辺の事情だろうか?


「……非常に申し上げにくいのですが、不死王様に精霊女王様、そして人狼王様が滞在(たいざい)となると、これは一度王家に連絡を入れないと今後厄介なことになりそうですね」


 その一言でリア町長が嫌な顔をした。

 王家に連絡を入れる。

 確かに報告は必要だろうが、それの何が嫌なのだろうか。


「王家に一報入れること自体は問題ではありません。しかし社交界経験のないお嬢様が社交界に出ないといけなくなる必要性が出てきます」

「ぐ……」


 (うめ)いた後机に頭を打ち立てて「ガタン」と音をたてた。

 なるほど。

 リア町長は社交界に出たくないのか。


「そこまでする必要はあるのか? 」

「ないかもしれませんが、今後この町を上手く運営するにあたっては必要かと」

「? 」

(はか)らずともこの町は経済的に見てロイモンド子爵領の中心となりつつあります。それに加えて戦力的に見てもこの町に手出しできるものはいないでしょう」

「まぁいたら馬鹿だよな」

「ええ。しかし逆を言えば、お三方の存在を隠すような動きをすると、王家に反意(はんい)があるとみなされる可能性があります。よってお嬢様が直接王城に出向き反意がない事を伝える必要があるかと」


 それを聞いているとライナーが少し手を上げ声を上げる。


「ちょっといいか? なんでそれで社交界に出ないといけないんだ? 」

「ご説明いたします。お嬢様が王城へ行き報告すると確実に泊まることとなり、急ぎで王家主催のパーティーが開かれるでしょう。そしてパーティーに出るとリア男爵家と縁を結ぼうとする貴族家からパーティーの招待状が。そしてまたパーティーの招待状が……、という風に連鎖的にパーティー地獄になるかと」

「ううう……」

「な、なるほどなぁ。俺達の為にすまねぇ」

「まぁこれを良い機会にして貴族家同士のつながりを持ったらいいんじゃないのか? あと町おこしも宣伝してくれると嬉しい」

「エ、エルゼリアさんは鬼ですか」

「エルフだ」


 がばっと顔を上げてリア町長が涙目で訴えてくる。

 町の事情が事情だっただけに今まで社交界に出たことがないのは仕方がない。

 しかし彼女は普通に出ないといけない年齢だろう。

 果たしてリアの町は腹の探り合いに堪えることができるだろうか。

 根が素直なだけに心配だ。

 しかし縁を作るいいチャンスである。逆に付け込まれる可能性もあるが、彼女やこの町の今後を見据えると他の貴族と良好な関係を築いておく必要はある。

 頑張ってくれ。


「コホン。取り乱して申し訳ございません。我々リアの町はライナー様率いるウルフィード氏族の皆様を歓迎します」

「感謝する。リア町長」


 机の上で唸り声を上げていたリア町長が復活すると、気を取り戻して席を立つ。

 ライナーの方を向いたかと思うと歓迎の言葉を口にした。


「姿に関しては住民に周知しておきますので変化(へんげ)しなくても大丈夫です。もし何かあれば衛兵を頼り下さい。あと場所なのですが……」


 とリア町長が私を見て来るので頷きながら彼らの希望を伝えた。


「私のレストラン周辺に住むようだ」

「土地は余っているので他の場所に新しく建てることも可能ですが……」

「いや構わねぇ。というよりもエルゼリア近くで頼む。どうも親族一同、エルゼリアの事を気に入ったみたいでな」

「左様で。では後程大工職人を向かわせるのでどういう間取りが良いか考えておいてください」

「助かる」


 あとは詳細を詰めながら話を終える。

 個々の住民登録は後ですることとなったが(おおむ)ね完了。

 こうしてリアの町の住民に人狼族が加わった。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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