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人魚姫 守人の恋  作者: はるあき
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補足5 始まりの国と不浄の沼

一代目勇者で二代目魔王は、ただ白い空間を歩いていた。

これは、イハスナ国の新しい不浄の沼となるモノ。

コトン

どこかで固い音を立てて、何かが落ちた。そうやって、負だけがここに溜まっていく。

「思ったより、ゆっくりだね。」

一代目勇者で二代目魔王は、立ち止まって、ゆっくりと白い空間を見渡した。

ただ白いだけなのに、彼には、何かわかるらしい。

「リアードが頑張っているから、かな?」

報われない子だねー。

一代目勇者で二代目魔王の顔に幼子を宥めるような慈愛の表情が浮かぶ。

「来世では、幸せになってほしいけど。」

自ら苦労を背負い込む子だから無理かな?

笑顔を苦笑に変えながら、彼は、また歩き始めた。

「にしても、沼を止めるために飛び込む者がいるとは。」

これまでにも不浄の沼に飛び込む者たちは、大勢いた。

負の思いに染まり、魔物と化すために、飛び込む者たちが。

それが″始まりの国″の一歩だ。

贄を得た不浄の沼は、強い魔物を生み出していく。

強い魔物は、恐怖を産み、さらに強い魔物を生み出していく。

途切れない連鎖。

魔物で溢れた国は、隣国も巻き込んでいく。

終わらせようと権力者たちは、暴挙に走り、魔王を覚醒させる。

そう、誰だって魔王になれるのだ。

深すぎる絶望の後、何を求めるかで。

「みんな王太子が国のために沼に飛び込んだと思っているけど。」

彼は、ニヤリと笑った。

「ただ、想い人を守りたかっただけとは、気付かないだろうねー。」

あのままだと消えてしまう運命だった″守人″。

不浄の沼を閉じ込めていた結界を解いても小さくなりすぎた魂の消滅は、間逃れなかった。

国に魔物がいる限り、″守人″は、力を使い続ける。死して忘却の川を渡るまでは。

だから、王太子は、″守人″の魂を抱いて、不浄の沼に入った。

時間が止まった沼の中なら、魂の消滅を防げるかもしれないと望みをかけた。

「強い想いは、強い力を生む。」

王太子も今まで不浄の沼に飛び込んだ者たちと同じになる可能性もあった。

強い負の思いを持っていた。ウマよりも強い魔物を生み出せた。

そうなっていたら、イハスナ国は、″始まりの国″となっていた。

だが、それよりも″守人″を想う思いが(まさ)っていた。

王太子の″守人″を守りたい気持ちが()っていただけた。

「すごいなー、人の想いは。」

かつては、己も人であったことを棚にあげながら、しみじみと呟く。

「泣いた分だけ、苦しんだ分だけ、幸せになれるといいね。」

彼は、歩みを止めない。

不浄の沼を作ったことを何度も後悔した。

けれど、何回やり直しても、未来をしっていても、不浄の沼を作ってしまうだろう。

「あと二人。」

不浄の沼を消すには、あと二人、沼を止めるに飛び込む者がいなければならない。それは、彼の解放の時でもある。

何代目かの勇者で魔王と決めたこと。

破格な力を持つ今の勇者に頼めば、簡単に済む話なのかもしれない。

だけど、彼は、待ちたいと思った。





これで、完結です。

関連の話を書くかもしれませんが、ここに登場した人物は、名前だけか脇役としてです。

お読みいただいて、ありがとうございました。


誤字報告された方、ありがとうございました。メモらず、訂正してしまったので、どの章かがわからなくなりました。(すいません)まとめて、お礼申し上げます。


テナヤが手にしたレーライトのメモのことを忘れてました。


一代目勇者で二代目魔王は、クシャという音に足を止めた。

何かを踏んでしまったようだ。

足元から拾い上げると、それは小さな紙だった。

達筆な字で書いてあることを読むと、ふんと鼻を鳴らした。

「ウマを生み出した王太子の指示を大人しくきいたのは、これがあったからか。」

紙を丸めるとポーンと遠くに投げた。

それだけ王太子を信頼していたのか、それともそれに縋るほど主君を助けたかったのか。

彼には、どうでもいいことだった。


何が書いてあったかは、想像にお任せします。

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