拾い児
5章 「拾い児」
『足、出して。』
祖父母が青柳一家の後始末をしている間、庭園で、抱き抱えていた孤児を座らせ、怪我の手当てをしていく。
正直、祖父母がどうしてこの孤児を気にかけるのか、理解不能だ。
『ありがとう…ございます。』
伏し目がちにしながら、礼を言う。
尚一のことを兄と呼んでいいかまだわからない。
それどころか、尚一はあたしの名前ですら知らないだろう。
『お前、どうして孤児なんかになったんだ?』
そういえば、まだ、名前きいてなかったな…。
お前でいいか。
『父はあたしが生まれる前、バイク事故で亡くなったらしいです。
母はあたしが6つになる頃、あたしを捨てました。
だから、親の事、あんまり知らないです。』
父親のことを知ったのは、えーと、いくつ前の、引き取られた家だっけ?
『だけど、苗字がわかれば、いくらだって調べられるたろう?』
あー、また、名前聞きそびれた。
どうやって聞こう?
『無理…でしたね。
あたしの苗字は、あたしが受け継いだ多額の父親の遺産に目が眩んだ親戚のものだから。
あたしから管理の名目で遺産を奪ったひとたちです。』
きちんと管理されてれば、こんなとこに居る必要ないのに…。悔しい。
『僕も。両親を亡くしてるんだ。
10歳の時だった。』
あの頃は荒んだ性格をしていたものだった。
不意に苦笑いをする。
『10歳の時には、この家に引き取られてました。捨て子のあんたを拾ったのだから、拾い児だと。』
とくに、笑うでもなく、哀しむでもなく、淀みのない淡々とした口調で語る。
美里自身は気づいてなさそうだが、この年頃の子供と思えない表情の希薄さが滲み出ている。
というか、皆無に等しい。
尚一の脳裏にとある言葉が去来していた。
まさに、美里のためにあつらえられたかのようなしっくりと来る言葉。
(サイレントチャイルド…)
物悲しい響きが今の美里のそのままを表しているようでこの、妹を大切にしようと尚一に思わせるには十分だった…。




