リング
17章 「リング」
『とりあえず、その見た目を何とかしないと。』
川瀬の持ち物のホテルに連れられて、髪の毛のスプレーとメイクを落とさせられる。
服は仕方ないとして。
大人びて見えるその容姿はクラブガールの仕事に役立ったけど。
『女子中学生とリーマンか。
あまりよろしくはないけど。』
遊んでいるように見えるかな?
尚一さんにあまり、迷惑かけたくないなぁ。
だけど、今はシュウ一途だし。
『美里には棗に渡すものを買いに付き合って欲しい。』
棗さんにはかなりお世話になったなぁ。
クラブガールをするときにアリバイづくりを手伝ってもらったり。
主に、尚一さんに対してだけど。
出口に差し掛かったところで視界が少し揺らぐ。
やだ、貧血かしら?
『美里、大丈夫か?』
あたしの顔色が良くないことに気づいた尚一さんが倒れないように肩を抱き抱えていてくれる。
ありがたいなぁ。尚一さんはこういうとこに気遣いが見えるから。
まさか、このときは気づいていなかった。
たまたま、近くの実習先から帰るシュウに見られてたなんて。
『うーん、棗さん…、お義姉様にはこんなのがいいなぁ。
うん、きっと、似合いね。』
尚一さんのお願いは義姉になる棗さんに贈るリングを選ぶことだった。
棗さんは学費のこともクラブのことも話してある。
シュウのことは、誰にも話していない。
シュウ、ごめんね。
あたしが、エロ爺の餌食になったとしても、あたしの心はシュウだけ。シュウだけにあるから。
『何なんだよ。
あんな二人、引き離せない。』
わかっていた。ミサトには婚約者ぐらい居るって。
それでも、ミサトへの愛は変わらない。
ミサト。お前はそいつといて幸せだよな。
なんて、わかりきってるじゃないか。
『棗、諦めて貰われなって。
お前を貰おうなんて変人、僕しかいないぞ。』
棗に恋をして何年の月日が流れただろう。
棗は急に現れた妹という存在も他の令嬢と違って実の妹に接する姉のように振る舞ってくれた。
美里が家を出るまで悔しいことに美里を優先して僕のことを邪険に扱うことすらあった。
いつも、僕のことをモノにしたいと目論む令嬢がたと大変な違いだ。
お陰で、美里をまごうことなき大切な実の妹と思えるまでになったし、最近では、義理の妹と指摘されないたと実の妹と思っていることが多い。
まあ、それを言う人ももう、いない。
じい様が美里のことを自慢の孫娘だと言い始めてから、周囲もそれで通している。
『美里?上手く行ったぞ。
これも美里のお陰だ。』
いつもは取らない電話から、聞こえてきた声。
浮き足立った若い男の声。
なぁ、ミサト。俺らはもう、おしまいなのかな――――。




