賭け
16章 「賭け」
『かったりぃ』
美里は住んでいるところより少し離れた駅前のロータリーに立っている。
もたれ掛かっているのは車回しのポール。
あの日、シュウと公園で遊んだ日、眠るとまた、あの少女が夢に出てきた。
シュウと遊んだとき感じたあの、先がわからないはやる心や、遊び方を知った解放感。
見た目に合った遊びをしたことで疲れて、だけど、大きな心の揺らぎを感じた。
その心はだけど、シュウと出会ったときの心より穏やかで少し物足りない。
シュウに愛を告げられたときほど揺らがない。
シュウとデートするときより心は波立たない。
あぁ、これがわくわく。これが喜び、これが楽しさ。
全て、シュウと過ごすときより劣っていたって仕方ない。
シュウはあたしの全て。
あたしの愛はシュウがあたしに示してくれたものと同じ。
あたしもシュウを愛してる。
シュウ、シュウ、あなたにこの言葉伝えられたら、どんなにいいだろう。
でも、おば様たちはあたしという存在を忘れはしない。
きっといつか、引き離される。
小汚いよぼよぼのショボくれたエロ爺に売られるようにして生け贄に捧げられ、自分たちの娘を守ろうとするに違いない。
せめてもの救いはそうなる前に真実の愛を知ったこと。
シュウを愛してるから、その時はシュウに酷い別れの言葉を告げる。
ごめんね。シュウ。
だから、あなたに愛を告げられない。
今のあたしは、クラブでいたときと同じ。
クラブデビューしたときより、幼い、小学校高学年。
だけど、魅せる方法は知っている。
スプレーで金に染めた髪。派手なメイクと服。胸にパッドを入れて年をごまかして。
髪も巻いていつものあたしじゃない、源氏名‘ミリ’というクラブガール。
ダンスは好き。
有名チーム、ブランシェのリーダーに気に入られているミリはあたしのこと。
『見つけた。美里。』
クラブのダチと喋っていたら、尚一さんが声をかけてきた。
『ちょっと何すんのよ。
あたいは泣く子も黙るブランシェのミリ。
人違いでしょ?』
おもいっきり嘘をついてやる。
それに、どっからどう見ても、高校生が遊んでるようにしか見えないから。
『お前は僕の妹の美里だ。
川瀬に来たばっかりか、そのぐらいの年の頃の美里そのものってぐらい、幼い見た目しる。』
尚一さん?
あたしの見た目のこと、見破った?
『どうして…。あたしが、美里だって?』
驚きで上ずった声になっている。
名前だって本名を聞かれて、ミリと書ける名前だと答えていた。
『美里の兄だからな。
今のは、小学生位の見た目年齢ってことで賭けをもちかけたのかな。』
すべて見破ったんだ。
そりゃぁ、そうだ。尚一さんはあたしの兄だから。
負けた…かな――――?




