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300時間のシンデレラ  作者: 小塚彩霧
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第6話 炎上プロジェクト

 納期が差し迫り、いよいよ修羅場の様相だ。

 プロジェクトマネージャの三浦さんに泣きつき(前々から泣きついていたけど)、この状態では絶対に納期に間に合わない、設計書や手順書(ドキュメント)は最終稿をどうにか後回しにしてもらうにしても、テストが終わっていないプログラムをそのまま納品するわけにはいかない、と窮状を訴えた。

 テストケースはあるものの、修正(デバッグ)していると、テストが止まる。


「よし、わかった。笹本一人じゃ、まあ、限界だな。」

「はい。納期まであと一週間。システムテスト二回と修正日、予備日で最短八人日欲しいです。残業と休日出勤で一人でもなんとかできるかもですが、何かあると本当に詰むので、テスターに誰か入れてください。」

「うーん、八人日って言うけど、多分、もうちょっと足出るだろ。ドキュメントももうちょっと書いて欲しいし。……テスターで、定時後に三人くらい、他チーム(よそ)の人員来てもらうか。」

「お願いします。分担するところの準備しておきます。」

「おう、頼んだよ。ちょっと人充てしてくっから。」


 元々、半年間のプロジェクトで、プロジェクトマネージャを入れて五人のプロジェクト。プロジェクトリーダーが倒れ、サブリーダーが倒れ、先輩が倒れ、残ったのがマネージャと私だけだった。マネージャは開発を行わないので実質一人チームだ。

 これまでもそれなりの修羅場は切り抜けてきたが、流石にチーム全滅目前ともなれば、できることにも限界がある。

 客先との調整、度重なるリスケでどうにかこうにか、段階リリースでの一段階目を当初の納期で行えそうなところまで持ってきた。あともうちょっと踏ん張れば。ここで諦めたくはない。


◆◇◆


 夕方、定時の少し前に三浦さんが私の席にやってきた。


「笹本、人充てしてきたぞ。システム開発部からは山野辺さんが来てくれるんだけど、客先常駐の奴は軒並み難しくてな。営業企画部にも声掛けたら、徳永と渡辺が来てくれることになった。」

「え。営業企画部、ですか?」

「まあ、渡辺は元システム開発部だし、徳永は素人だけどテストくらいはできるだろ。」

「そうですね、居ないよりはずっとマシです。ありがとうございます。」


 定時のチャイムが鳴る。パタパタと走る音をさせながら、マミさんがこちらにやって来る。


「あすかちゃん、私、子供の世話があるから帰るけど、山野辺(ダンナ)を遠慮なく使ってね。お先に失礼。」


 そして、またパタパタと走る音をさせながら、出口へ向かっていった。入れ違いに徳永さんとワタナベが入ってくる。


「よぉ、アスカ、お疲れ。手伝いに来たぞ。」

「笹本、俺で役に立つかわからんけど、よろしく。」


 そこに山野辺さんもやってきたので、ミーティングをする。


「じゃあ、笹本、段取り教えて。」

「えっと、山野辺さんと三浦さんは自分の端末で、徳永さんと渡辺君にはここの端末を使ってもらいます。テストサイトのURLとユーザーID、パスワードはこの紙に書いてます。それから、テストケースとデータパターンは次のページに。今、フェーズ2の状態になってますので、それぞれ担当者にA、B、Cと入っているので分担して、その分のテストをお願いします。エビデンスはスクリーンショットと更新前後のデータコピーでお願いします。不具合はRedmineにお願いします。今日は大きな不具合が出ない限り、フェーズ2の最後まで行きます。わからないところは都度聞いてください。では、お願いします。」

「よし、はじめよっか。」


 山野辺さんの掛け声で解散し、各自の席に着く。システム開発部の部屋の中でカタカタとキーボードの鳴る音が響く。

 なんだかんだと細かい不具合を見つけつつ、データ入力は進んでいく。不馴れだと言っていた徳永さんも順調にデータ入力とエビデンス取りをやってくれていた。

 二時間ほど経過したところで、三浦さんが差し入れを入れてくれた。のり巻きやいなり寿司、唐揚げにコロッケなど、近所のスーパーで買ってきたお総菜が並ぶ。

 キリの良いところで手を止め、バッチ処理を流し始めたところで夕飯にありつく。

 ご飯を食べながら、最初は食べ物に対する感想だったりの雑談だったが、段々、雲行きが怪しい方向に向かい始めた。


「なぁ、なんでこんなことになってんの?」


 ワタナベの無神経な質問で一帯が凍りつく。


「それは……プロジェクトリーダーの前原さんが、五ヶ月ほど前から急に来なくなって、サブリーダーの副島さんが頑張ってたんですけど、それも三ヶ月ほど前に体調を崩して休職して。私と浜野さんで回してたんですけど、その浜野さんもとうとう三週間ほど前に過労で入院しまして。」

「そんなん、笹本一人でそもそも無理だったんでは?」


 私の説明に、徳永さんが同情的な感想を言った。別に徳永さんに私を責める意図はないことはわかっていたが、張り詰めていた糸がプツンと切れた。


「私が無能だってことですか?こうなったのは私のせいだと!?」


 止めどなく涙が溢れる。自分でもわかってる。他部署の人にまで手伝ってもらわないと片付けられない仕事。情けなくて悔しくって仕方ない。


「はいはい。落ち着いてー。深呼吸。笹本は悪くない、寧ろメッチャ頑張ってる。悪いのは三浦(コイツ)ね。さんざん下がヘルプ依頼してるのに、放っといたプロマネが悪いんだよ。で、それを管理しないといけない俺の監督不行き届きだから。」


 山野辺さんが私の肩をポンポンと叩き、さすった。

 涙は止まらず、嗚咽が漏れる。泣いてたって仕事は終わらないのだから、手を動かすしかないのだけれども、このまま仕事を続けるのも難しい。

 頭を下げて、そのまま部屋を出た。


炎上プロジェクト。

考えただけで胃が痛くなります。

仕事としてはダメダメなヤツです。

しかもヒステリー起こしちゃうっていう。

共感してもらえないシチュエーション(´Д`)

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