↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300時間のシンデレラ  作者: 小塚彩霧
33/50

第33話 気の置けない関係

 徳永先輩とアスカが付き合い始めて数か月。

 会社では徳永先輩ファンに絡まれたりして一悶着あったようだけど、最近はめっきり落ち着いて、着々と愛を育んでいるようだ。


「良かったなぁ、アスカ。」

「ん?何か言った?」


 偶々、廊下でバッタリ鉢合わせし、そのまま一緒にエレベーターに乗り込んだ。休憩室まで降りて、コーヒーでも飲もうと思っていた。アスカも甘いものを飲んで一息入れるところだそうだ。


「んー。だから、お前と徳永先輩。順調じゃん。良かったな。」

「あぁ、うん。お陰様で。」


 アスカはちょっと俯いて、はにかんで見せた。


(なんだよ、ちょっとかわいいじゃねぇか。)


 俺にはそんな顔することないのにな。徳永先輩と俺なら、多分、俺の方がイケてると思ってるんだけど。まあ、俺はアスカをそういう対象として扱ってこなかったから、当然なんだけれども。


「あーあ、俺もカノジョ作ろうかな。良いお年頃だもんな。」

「そうよ。ワタナベ、顔は良いんだし、モテるんだから早くカノジョを作っちゃえば良いのよ。」

「そうなんだけどなー。」


 エレベーターが休憩室のフロアに着いた。二人並んで自販機へ向かう。


(アスカ、やっぱ小せぇな。ヒールのない靴を履いてるのもあるか。)


 社内の女の子や取引先の女の子から食事に誘われたりするし、学生時代の友人から合コンに誘われたりする。でも何となく、この人と付き合いたいという感情は生まれず、告白されてもその場でお断りしてばかりだ。


「いくらイケメンでも、言い寄ってきてくれるうちが花と思うけどね。」

「分かってるよ。」


 分かってはいるけど……。何と言うか、気の置けない関係になれそうな人がいなくて。俺は元々内気だし、本当はみんなでワイワイするのも好きではない。子供の頃から寄ってくるヤツがうるさいヤツばかりだったから、合わせていたら、そういう扱いをされるようになっただけだ。


「気の置けない関係……。」

「え?」

「あ、いや、なんでもない。」


 声が出てた。

 あんまり考えたことがなかったが、アスカは気の置けない部類に入るかもしれない。

 システム開発部の同期は皆、男ばかり。アスカは紅一点だったが、あまり女らしい素振りも見せなかったから、同期の中ではほとんど男扱いというか、男共と同じ扱いをしていた。俺だけではなく、他の同期も皆そうだ。そりゃ、体力や腕力では俺達と同じというわけにはいかないから、そこはちゃんと女扱いしていたけれども。


(なんだよ……。女扱いしてなかったけど、これって一番理想形なんじゃ……?)


 付き合うなら、もっと、色気があって、かわいくて、スタイルもよくて、おしゃれで、気が利いて……って思っていたのに。

 実際に付き合って、一緒に暮らして、年を重ねていくなら、そんなことより、何よりも、気を遣わなくて、素の自分でいられる方がいい。


(気付くのが遅かった。盲点だ。何キューピッドやってんだか。)


「ほんと、どうしたの?具合悪い?」

「いや、別に……。」

「考え事?とりあえず、なんか買うか、椅子に座るかしたら?」


 アスカが抹茶オレのカップを片手に俺の顔を覗き込んでいた。


「お、おう……。」


 アスカに促されて、ホットコーヒーを買う。

 アスカが座った席の向かいに座った。


「徳永先輩、優しい?」

「え?あ、うん。優しいよ。隼人さんって妹がいるお兄ちゃんなのよ。だからか、居心地が良くって。」

「へぇ。」


 そういえば、徳永さんに兄弟がいるとか聞いたことなかったな。確かにあの面倒見の良さは長男気質かも。

 俺の前に座るアスカをぼんやり見ていると、何となくソワソワしている気がする。


「どうした?落ち着かないな?」

「う、うん。ちょっとね。」

「ん?」

「ごめん。……何となく誰かに見られてるんじゃないかと思って。」

「ああ……。」


 徳永先輩ファンの件でかなり怯えているのか。最近は俺のことをちょっと避けているんじゃないかと思っていたけど、気のせいじゃなかったみたい。


「なぁ、アスカ。合コン、セッティングしてくんない?」

「はぁ?私にそんなこと出来るわけないでしょ?呼ぶ友達がいないよ。」

「誰かいるだろ?」

「いないよ!みんな彼氏いるし、結婚間近だったりするから。他を当たってよ。そもそも、会社でも、寄ってくる人多いんだから、彼女らに頼めば良いんじゃない?」

「嫌だよ。俺、あの人達のことあんまり知らねぇし。」

「そんなこと言って、私のことだって、私の友達のことだって、そんなに知らないでしょ?誰でも一緒なんじゃない?」

「一緒なんかじゃないよ。」

「そうかなぁ。」


 アスカは抹茶オレを飲み終わって、コップをテーブルの上に置いて、ふぅっと小さい溜め息を吐いた。


「最初からカノジョになりたいってシナ作って来るヤツなんて信用できない。」

「へぇ。」

「そういう意味ではアスカは珍しかったよな。」

「はは……。」

「俺のこと、どう思う?」

「え?どうって……。」

「彼氏にしたいと思わなかった?」

「どんだけ自信家だよ。ワタナベってイケメンだし優しいし、良いんじゃない?私はイケメン過ぎる人、苦手だから。」

「なんで?」

「世の中にはバランスってものがあるのよ。じゃあね。」


 アスカはコップをくしゃっと潰してゴミ箱に突っ込んだ。そのまま俺に背を向けて去っていった。


(ちょっと怒らせちゃったかなぁ……。)


ワタナベの謎の行動(笑)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。