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300時間のシンデレラ  作者: 小塚彩霧
31/50

第31話 あすかの誕生日(後編)

 本当だったら今日は定時で上がって隼人さんに誕生日を祝ってもらうはずだったのになぁ。電車で一人、どっと疲れが出てくる。


『今、データセンターを出ました。一回会社に寄りますけど、だいぶ遅くなっちゃいました。ごめんなさい。』


 隼人さんに申し訳ない気持ちでメッセを送る。

 デスマーチのことを思えば、まだ八時前なので全然遅くないけど、プレゼントは買いに行けない。


『おつかれ。プレゼントはまた明日にでもゆっくり選びに行こう。会社で待ってるから、ごはん食べに行こ?』

『うん』


 暗くなったエントランス。エレベーターでシステム開発部のフロアまで上がる。


「ただいま戻りました。」

「お疲れ。」

「三浦さん!?」

「なんだよ。」

「てっきり、もう帰ってるものだと。」

「下っ端にトラブル対応させて、先に帰る訳にいかんだろ?」

「まぁ……。客先から電話とかメールありませんでしたか?」

「うんにゃ。特に不具合なく、順調稼働してるみたい。データセンターの不祥事だからウチの責任じゃないし。ということで、報告書とか明日でいいぞ。端末置いてカエレカエレ!」

「はーい。じゃあ帰りまーす。お疲れ様でーす。」


 ドサっとパソコンバッグを下ろしてキャビネットに仕舞う。ドキュメント類も自席の引き出しに仕舞って、部屋から飛び出し、同じフロアの営業企画部の部屋を覗き込む。部屋の入り口に近いところだけ電気が点いていて、奥は暗い。


「お疲れ様でーす……。」


 様子を窺っていると、隼人さんが私に気付いた。ニコッと微笑んで、おいでおいでと手招きをしている。

 なんだろう?と思いながら、ヒョコヒョコ隼人さんの席に近付いた。


「お疲れ、あすか。」


 椅子から立ち上がった隼人さんにぎゅっと抱き締められた。驚いてビクッとした私に隼人さんが頭を撫でながら言う。


「大丈夫。今、この部屋には俺達しかいないから。」


 会社でこういうことをするのって、なんだかちょっとスリリングというか、背徳感があって緊張する。

 隼人さんはそんな私を見て、嬉しそうにしながら、小さな声で聞いてきた。


「キスしていい?」

「ちょっとだけね。」


 顔と顔を寄せ合い、見つめたかと思うと唇を重ね、離れたかと思うと見つめあってというのを何度か繰り返した。そろそろ飽きてきて身体が離れた。


「じゃあ、ご飯、食べに行こっか。」

「うん。」

「何食べたい?」

「ご飯にこだわりないけど、甘いもの食べたい。ケーキとか。」

「ケーキか……。八時過ぎたし、さすがにもう、お店は閉まっちゃってるよなぁ。」

「シャトレーヌなら九時までじゃない?」

「あぁ、あそこの交差点にあったな……行ってみようか。ご飯どうする?」

「うーん?特にこれといってないんですよねぇ。」

「そうかぁ。じゃあ、サイゼ。ケーキ買ったら、サイゼでご飯食べよ。」

「ケーキ、どうします?」

「ご飯食べ終わったら、俺ん家で。」

「泊まり?」

「ダメ?今日、金曜だし。都合悪かったら、家まで送るよ。」

「良いですよ。でも、着替えとかお泊まりセットが欲しいので、私の家に寄ってもらえますか?」

「りょうかい。」


 営業企画部の部屋の戸締まりをして会社を出た。


◆◇◆


 会社から歩いてシャトレーヌに向かう。途中に小さな花屋がある。まだ開いてるんだなぁと思いながら、通り過ぎようとしたところで隼人さんがフラッと花屋に入っていった。


(えっ?)


 何かと思って、慌てて花屋を覗く。隼人さんはニコニコしながら出てきて、その手には小さなブーケがあった。


「ごめん、待たせたね。」

「いえ。」


 聞かなくてもわかるけど、それはなに?という顔だけして黙っていると、隼人さんが話す。


「今日、プレゼント選びに行けなくなるだろうと思って。でも、今日、何かを渡したかったから、夕方に花束を注文しておいたんだ。」

「ありがとうございます。」

「荷物になるし、しばらく俺が持ってるからね。」

「うん。」


 シャトレーヌで苺のショートケーキを買って、サイゼに入った。他愛もない話をしながら、料理を食べる。


「明日はどうする?」

「どうするって?」

「どこでプレゼント買おうか?」

「どこでもいい……というか、既にケーキと花束を買って貰ってるんで、それで十分というか、貰いすぎじゃない?」

「こんなのオマケだし。あんまり高価なものをねだられたら困るけどね……。」

「んー、じゃあ、とりあえずデパート?特にお気に入りのブランドとかもないんで、フラッと行きましょう。」


 食事のあと、車で私の家に寄ってから隼人さんの家に行った。お互いの部屋は行き来していて、隼人さんの家に泊まるのは何度目だろうか。

 ケーキを食べて、プレゼントの花束を貰った。


「あすか、誕生日おめでとう。素敵な一年となりますように。」

「ありがとう。隼人さん、大好き!」

「……前払いでお返し貰ってもいいかな?」

「えぇ……。うそうそ!一緒にお風呂入る?」


 彼氏と一緒に過ごす初めての誕生日の夜は更けていった。


あすかはミートソーススパゲッティ、隼人さんはカルボナーラ。

それとマルゲリータピザ、プロシュート、ほうれん草ソテーっていう定番のメニューを想像。

(隼人さんは肉っ気足りないな。体型ヒョロいんだろうなぁ。)


ケーキは苺のショートケーキを二切れ。ホールではないw


ここでは書きませんでしたが、翌日、二人でデパートに行って、キュービックジルコニアのシルバーリングを買った想定。


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