第10話 私は見つめられている
鏡見高等学校。
「綾人に、似合わないよ。ゲーム好きのダサい女の娘と付き合うのやめなよ。カッコいい綾人のままでいてよ」
綾人の席に、北大路さんが来て、好き勝手に言う。
「俺は、自分の道は自分で決める。黙れ」
綾人は、立ち上がり、席を離れる。
芽央芹香の席の前に立つ。
まだ来ていない。
「芹香さん。お休みだよ。熱出したって」
隣の席の南実くん。
「…熱。アイツ、大丈夫か」
芹香。
まさか、ゲームのやりすぎ…は、ないか。
3ヶ月前に、認識した。
恋に落ちない女の娘。
この女の娘は、本当にゲームのことで頭がいっぱいで、綾人との交際のことが考えられない。
マイペースな女の娘。
まあ、家がおカネ持ち。顔イケメン。
性格は王子系とはいえ、良識のある綾人。
交際を断わる理由はないだろう。
第10話 私は見つめられている
芽央家。
綾人は、お見舞いに来た。
芹香の母親は、良心的で、家に上がらせてもらう。
芹香の部屋。
芹香は、寝ながらスマホを見ていた。
「おい」
綾人は、イライラした。
熱出したのなら、安静にしていろ。
「あ、綾人くん。熱って言っても大したことないんですよ。未来の就職先が決まったから、身体を大事にした方がいいって。お母さんが」
「…」
未来の就職先。
東条家の嫁。綾人の奥さんということだろうか。
綾人は、恥ずかしくなって、顔を隠す。
「どうしたんですか?綾人くん」
「…いい。俺の考えすぎなだけだ」
目を閉じて、目を開ける。
そして、眼鏡越しに、芹香を見つめる。
芹香は、ラフなシャツ姿。
可愛い。
「…お前って、よく見たら、可愛いんだな」
「え」
「俺の交際相手にふさわしい」
「…」
交際では、なく。
ゲーム友達がいいな。と、思う。
カッコいい綾人。
まずは、仲良くなりたい。
「俺と、仲良くなりたいのか」
「だって、何事も、まずは、お友達からではないですか?」
「そうですよ。僕もお友達からが良いと思います」
部屋に、小西くんが来た。
眼鏡越しに、可愛い瞳で見つめてくる。
「僕も、お友達派かな」
続いて、隣の席の南実くんが入って来た。
眼鏡越しに、穏やかな瞳で見つめてくる。
「綾人は、あたしと付き合うから、この2人のどちらかと交際すればいいんじゃないかな」
北大路さんが、元気にやって来た。
眼鏡越しに、芹香をにらんだ後、綾人の腕にしがみつく。
「くっつくなよ。北大路」
綾人は、嫌がる素振りをみせる。
芹香の部屋に、4人のクラスメイト。
せまい。
全員、眼鏡。
男の子は、芹香が大好き。
女の娘の北大路さんは、綾人が大好き。
「俺が、好きなのは、芹香だからな」
「あたしの方が、綾人のことわかってるよ」
何か、綾人と北大路さんは、お似合いだ。
思えば、眼鏡だらけのこの街。
誰もが眼鏡越しに見つめられている。
眼鏡越しに見つめている。
芹香は、何故か男の子に見つめられている。
南実くん。小西くん。綾人…。
見つめる理由は…。
芹香が、答えを出さないから。
決めないから。
芹香は、誰が好き…?
「私は…ゲームが好きですけど」
ゲームが、男の子より好き。
答えになってないが、答えである。
「お前が、本気になるまで、ずっと見つめ続けるからな」
綾人は、ジッと真剣な眼差しを送ってくる。
目金井シティ。
テレビとスマホの見過ぎで、市民全員が眼鏡の街。
目薬が飛ぶように売れて、眼科だらけ。
ここに、ゲーム好きな1人の女の娘が住んでいる。
“恋”に気づくように、キミは見つめられている。




