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おまけ キングの冒険

俺様のトサカがまだ幼かった頃。

俺様に立派な名がなかった頃の話。


ふ。俺様の通った後には草一本、いも虫一匹、残さねぇぜ。


ケー!

「うわ!? こら!? また僕の事スタンプしたな!?」


隙だらけのお前を鍛えるためさ。悔しかったらもっと強くなれ。まだまだ腹の筋肉が足りねぇな。そんなことじゃ大好きな連れを守れないだろ?


次は貴様だ!


ケー!

「うにゃ!? この鶏! 俺の尻に足跡をつけるな!」


綺麗なモミジのマークがかっこいいだろ?

きっとそれがあれば大好きな腹筋ボーイに慰めてもらえるぜ?


「うにゃ!? お、俺はそんなんじゃないからにゃ!?」


おおう。さすが山猫だな? 俺の眼力から心が伝わっちまったみたいだぜ。

そんなことよりほら見ろ。さっそく俺様のモミジが効いてるぜ?


「アミック。おしり大丈夫? そんなに跡つけられて痛くない?」

「うにゃ!? だ、大丈夫だから! そんなにまじまじ見るにゃ!?」


ふ。俺様の愛が二人の心の距離を近づけちまったな。さて、たまには屋敷の中へ入って他の奴らにも気合いを入れてやろうか。


まずは……どいつをターゲットにしてやろうか?

こっちは行けねぇ。

厨房はやばいぜ。

ここの料理長は俺様を調理しようといつも目を光らせてやがるからな。まだフライドチキンにはなりたくねぇぜ。


む。やつは……よし次はこいつだ!


「ぐむ。う……うう……ううう。く」

「大丈夫か? ボトール?」


かなりやばいな。美麗な馬面に死相が出てるぜ。今にもあの世にいっちまいそうだ。


「て、天国が見えました……しかし、これくらい……あのお方の血を受け継ぐお嬢様のためなら……例え死しても……」


その覚悟は認めてやるぜ。忠義を尽くすおとこを感じるぜ。


「いや。死んだらダメだからな? お嬢様が立派に成長するように教鞭をとるのも我らの仕事なのだから」


その通りだ。為すべき事を為せ。それが真実の愛ってやつだからな。無意に死んじまったら愛は残らねぇ。


「はい……まさに……ルテの言う通りですね」


分かったんなら許してやる。と、言いてぇところだがよ?

ちょっと不味いもの飲んだくらいで気愛(気合い)が足んねぇんだよ。

喝を入れてやらあ!


ケー!

「うぷぅ!?」

「ボトール!?」


ほら見ろ。ちょっと腹に気愛(気合い)を入れただけで吹きそうになってやがる。もっと鍛錬をするんだな。

お前もだ!

口ばっかり厳しいだけじゃいけねぇ!


ケー!

「ちゅー!?」


ふ。これくらいでネズミ語が出るようじゃあ。できる執事は失格だぜ?

もっとてめぇに厳しく、その可愛く丸まったしっぽを直角に鍛えるんだな。


どれ。次のターゲットは……


「ねえねえ。うちの屋敷って美男ばっかりで困っちゃうよね」

「ほんとだよ。誰かあたしに手を出してくれないかなあ」

「バカねえ。ああ言うのは遠くから眺めてるだけでいいのよ」

「そうそう」

「どっちかって言うとさ? 美男同士で見つめ合ってほしいよね」

「分かる! ボトール様とバロン様が良くない!」

「あたしはバロン様とバロン様がいい」

「どういう? 二人はいないでしょうよ」

「妄想しか勝たんし!」

「それもいいけどさ。ジュリくん可愛いよね」

「超ー可愛い!」

「あの影のある感じがいいよね」

「大きくなったらアミックくんと……」

「きゃー!」


かしましいぜ。

てめぇらほどよく腐ってるな?

触らぬメイドに祟りなしだな。

こいつらはスルーしておこう。


さて、次はどいつだ。

俺のモミジが次のターゲットを求めてやがる。


おお。弛まぬ鍛錬で煌めく汗が眩しいぜ。

なぜに白い歯が輝いてやがる。

調子に乗らねぇように俺様のモミジとクチバシのキスをくれてやろう。


ケー!

「ふ。甘いな」


なんだと!?

俺様のモミジを剣の腹で受け止めただと!?

ふ。やるな若いの。


ケー!

「お前も腕を上げたな。気愛(気合い)が足りないとうっかりやられそうだ」


く。貴様こそ、さらに腕を上げてやがるな?

器用に片目をつむりやがって。

だがな?

俺様のフットワークをその片目で追えるか!

喰らうがいい!


ケー!

「俺にスタンプできると思うならもっと……何!? 残像だと!?」


ケー!

「うわ!?」


ふ。甘いのは貴様だったな。死角をついての地を這うような股抜き。背後からの膝裏へのモミジドロップキック。膝カックンは効いたろう。

その隙だらけの腹に俺様の華麗な飛び回しモミジが見事にマークされたぜ。

ついでにその煌めく瞳にもな。

将来、その大事な瞳を失わねぇように鍛錬を怠るんじゃねぞ?


「く。まさか膝と腹と目に。三連続で攻撃をされるとは。師匠と呼ばねばなるまい」


その悔しさを糧にしな?


さて。残すはあと一人だ。

ふ。見つけたぞ。

我が宿敵。

今日こそこのモミジの餌食となるがい……

く!?

背後から忍んでいるというのに、なんだこの強烈なプレッシャーは!?

波打つ白銀の長髪が蠢いてやがる。

く!? 振り返りやがった。

俺様の気配に気づいたな。

く!? 金の瞳が怪しく輝きやがって蛇に睨まれた蛙になった気分だぜ。

なぜ、こいつの本性に奴らは気づかねぇんだ。

この圧倒的な存在感。

美しさの中に隠れた野生の力……末恐ろしいぜ。


く!? いとも容易く抱きかかえられちまった!?

ふ……

今日も俺の負けだ。

あんたぁ、俺様のご主人様にしてやる。

おとなしく膝の上で寝てやるとするぜ。


「今日もキミはいい子だね♪

よしよし。

ねえねえ。聞いてくれる?

ずっと気になってたことがあるの。

お母様のお股には何もなかったのにわたしにはあるの。

なんでだろうね?」


そんなこた知らねぇよ。立派なもんが付いてんならいいじゃねぇか。

俺はぁ眠いぜ。


「あとね。

お母様が言うにはわたしは大きくなったら王様になるんだって?

わたしは女の子なのに王様になるのかな?

だけどわたしは大きくなったらジュリのお嫁さんになりたいの。

素敵なウエディングドレスだったらいいなあ。

キミは男の子だから王様になれるよね♪

んー。

そうだ!

あなたのお名前はキングね!」


ん? そいつは豪気じゃねぇか。

ご主人様が王様になるまで俺様も死ぬわけにはいかねぇな。

二羽で立派な王様になってやろうぜ。

心配すんな。

立派なもんがついてんならきっと俺様みてぇな漢になれるぜ。


「俺様?」


「あ! 見つけた! レクス! そのまま捕まえてて!」

「うにゃ! その若い雄鶏はお嬢様のチキンステーキになるにゃ!」


ふ……

とうとう逃れらねぇさだめの時がきやがったか……


「食べちゃダメ! キングはわたしの友達なの!」

「うにゃ?」

「キング? お前、立派な名前をもらったなあ」


「だからキングはみんなの友達だよ!」


友達? やめてくれ。

俺様はさすらいの一匹狼。

じゃねぇ一羽鶏。

そうだな。

こいつらは俺様の家来にしてやろう。

良きに計らえ。



その後、屋敷に取り残された俺様は宮殿に呼ばれた。


偶然にもご主人様が本当は男子であることを知らされる場にいた俺は驚いた。ご主人様のすっとんきょうに驚く美麗な顔が見ものだったぜ。


そして見事に冠を戴いて本当のキングになった。

俺様のご主人様と一緒にな。

ダブルキングってわけだ。


そんでよ?

めでてぇ祝言でご主人様は念願の花嫁になったってぇわけだ。

おっと、花婿か?

王衣がちょっとドレスっぽくなかったか?

しばらくしてご主人様たちに可愛い双子が産まれやがった。

守るものが増えちまったな。

俺様もてえげえじじぃだがよ?

へ。まだまだ死ねねぇぜ。




〜完〜

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