9 俺の治療費払ってくれた人
「その特徴ってことは、アルファルドのことだよな?」
「やはりか…」
ガンドからは、苦虫を嚙み潰したような反応。
やはり、何かあるようだ。
「俺は一度接触して殺されかけただけで、アルファルドの素性は知らねえ。あいつ、一体何者なんだよ」
「ああ。それだが、奴は脱獄囚なのだそうだ」
脱獄囚…!?
「大量殺人鬼、みたいな感じか!?」
「いいや。元冒険者で、パーティメンバーを殺した罪に問われ、牢獄に放り込まれた。しかし突然、あの男の姿はそこから跡形も無く消えていたと言う」
冒険者か。
ここセライア街にはギルドもある。冒険者になって、クエストの報酬で生計を立てることも考えてはいたが、うっかり強力な魔物と遭遇してボコられたりするリスクもないとは言い切れなかったし、登録金を払うだけでも持ってきた額の半分近くが消し飛ぶので諦めていた。
今思えば、冒険者になっていた方が幾分かましな生活を送ることが出来たのではないだろうか。
「それで、アルファルドの野郎は捕まったのか?」
「いや。逃走を続けているそうだ。生憎、既にこのセライア街を後にしたらしい。これほど目立った特徴揃いにも関わらず、お前を襲うまで足が付かなかったということは、おそらくだが、複数人で行動に及んだのだろうな」
男の見解を聞いている内に、ますます、俺の中で疑問が膨らむ。
どうして、わざわざ俺なんかを狙うのだろう。
ただの田舎者で、魔導戦術大会では無様にボッコボコにされた、こんな腰抜けなんかを。
というか、俺の凍った右腕を、一体どう躱したのだろう。
あんなの当たったらまず気絶するだろ。
凍らせた右腕の轟音を聞いておっちゃんが来たってことは、あの一撃が当たっていれば逃げられた、なんてことにはならなかったはず。
「で、だいぶ話反れたけど、なんで俺の治療費ただなの?」
「え?あ、えーと、それは…」
急に話の流れを戻されて、ワタワタしだす治療師さん。
やっぱ聞いちゃいけないことなのだろうか。
「ある人がここを通り掛かって、お前さんの代わりに治療費払ってくれてたんだよ。この治療師はその人に口止めされてたんだ」
「えっ?一体誰に?」
「さあな」
そう言って武器屋のおっちゃんは勿体を付けた。
5分前ギリギリ滑り込み本日二本目投稿ゥゥゥ!!
ブクマ1件でも張り切っちゃいます!!
もう1件ブクマや星5評価がついたら(たぶんきっとおそらく)数百倍はかどります!!