異世界に来ました。2
案内されたのは、畳が敷かれた古風な部屋だった。
これまた古めかしいテーブル(ちゃぶ台)の回りに地味な色合いながら、清潔そうな座布団が4つ置かれている。
奥側の座布団に姫野さんと並んで腰をおろした僕は思った。
ここ、日本じゃね?と、転移装置ってだけでもとてつもない発明だが、流石に異世界よりは信じられる。
謎の女性も黒髪、黒目だし、顔だちもアジア系であり、建物は古風だが日本っぽい。それに何より彼女は"日本語"をしゃべっていた。
そう考えて、少し安心した俺は、「お茶を持って来ます」と言って部屋を出た謎の女性が居なくなると、隣の姫野さんに声をかけた。
「ここって、どこかな?」
「どこかしらね。私にもまだわからないわ」
「やっぱ、そうなんだ」
転移場所は完全にランダムなんだ?まあ外国じゃないだけましか…
携帯電話で、何か調べてみようと思うが、せっかく二人きりなのにスマホを見るのもなんだろう。
僕は姫野さんと会話を続けることにした。
「さっきの女性、いったいなんで俺のこと救世主とか言ったんだろうね?みた感じのどかな田舎って感じで、とても平和そうだし」
「そうね…入力した希望する世界のことを考えると、想定は出来るけど、まあ彼女に聞いた方が早いわね」
「希望した世界って…」
「賢介くんが、ハーレム作ってチート無双出来る世界」
「…」
いや、僕はそういう本を読んでいただけで、自分がそうなることを希望したわけではないのだが…。
「お待たせしました」
そう声が聞こえて、襖が開かれると、正座をした謎の女性が脇に置いたお盆を持って立ち上がる。
持っていたお盆をテーブルに置き、俺達と自分の席(俺の向かい)に湯呑みを置くと、一旦戻って襖を閉め、改めて俺の向かいに腰をおろし正座をした。
何となく、妖艶ながら品のいい仕草を僕が見てると横から視線を感じて姫野さんを見る。
すると、こちらを何となくじとっとした目で見ていたため、思わず声をかけた。
「どうしたの?」
「別に…なんでもないわ」
彼女はそう言って視線を前に戻す。
もしかして嫉妬?いや、そんなわけないか…男ってやつに飽きれてたのかも知れん。…しょうがないじゃん。
「さて、粗茶ですが…どうぞ召し上がってください」
「ありがとうございます」
「飲みながらお話致しましょうか…まずは自己紹介を…私の名前はゼノビアと申します」
「日本人じゃないのかよ!」
僕は思わず、大声でそう突っ込みをいれていた。