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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
六話「錆びた角」上門
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 天井から肉が吊るされた奇観。

 いささか面食らって。

 すんすん、と鼻を鳴らして()ぐ。

 それらから悪臭はしていない。

 凝然と頭上を振り仰ぐタガネの背後で、鈴を転がしたような笑声がする。

 かえりれば。

 リフが口元を隠して笑っていた。

「ボクは狩人なんだ」

「こりゃ、仕留めた(しし)の肉か」

「うん、冬の備蓄さ」

 タガネは一つずつ検める。

 なるほど、丁寧な下処理がほどこされている。

 保管されているのは、鹿、猪、兎、そして中でも一際大きいのは熊があった。これには目を剥いてしまう。

 それも見事な大きさだった。

「こりゃ熊肉なのかい」

「はい」

「さぞ労を要した代物だろう」

 心底から感服して。

 タガネはためつすがめつした。

 初夏の日。

 山岳部で同じく狩りをして暮らす少年と会った記憶がある。彼もまた狩猟能力に長けた人物だった。

 俊敏に駆け回る鹿を一射(いっしゃ)で仕留める。

 その手練は美事の一言に尽きる。

 ただ。

 賛嘆に価する所業でも、熊はまた別格。

 技巧云々ではなく、何よりも獰猛(どうもう)で強く、生半な覚悟では返り討ちは必至の強敵である。

 それを。

 この年端もいかない子供が仕留める。

 荒唐無稽な話にさえ思われた。

「凄いな」

「えへへ」

 褒めれば照れ臭そうに笑う。

 リフは帽子を脱ぎ、首の布を取り払った。

 そこから。

 肩に触れる寸前で切り揃えられた亜麻色の髪があふれた。(つぶら)な赤い瞳は、血のように鮮やかである。

 着込んでいた服も脱ぐ。

 立ち居振る舞いは精悍な少年だが、服の下には華奢で女性のような体付きだった。

 しかし。

 それよりも視線を引くのは。

「おまえさん、それ……」

「え、ああ、これですか」

 リフの帽子の下。

 そこに、額から隆起した錐形状の出来物。

 いや――俗に言う、(ツノ)があった。

「驚いた。おまえさん鬼仔(ヴァン)か」






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