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ZERO-DELAY  作者: WE/9
新しい始まり

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32/102

引力

硝煙が半開放式のホームに立ち込め、ミナトミンは互いに援護し合うが、手元のマガジンは既に底を突いていた。N組織の精鋭部隊は、影から絶え間なく湧き出す暗流のように、複雑な構造物を利用して四人の生存圏を圧縮していく。


「最後のマガジンよ!」星玲ホシレイが叫ぶ。彼女の顔は煤に汚れ、呼吸は激しく乱れていた。


その極限の絶望の中、吐き気を催すような街頭放送が突如として強烈な電子音と共に切り替わり、あの洗脳のスローガンが再び鳴り響いた。


「同僚の皆様、落ち着いてください――」


湊は奥歯を噛み締め、最後の一発を装填しながら、その無能なシステムを罵倒しようとした。しかし、拡音器から流れる声は一変し、冷徹ながらも絶対的な自信に満ちた、磁気のような響きを持つ男の声に変わった。


「……僕が来たからには」


湊の瞳孔が猛烈に収縮した。合成音声ではない。聞き間違えるはずのない、震え上がるほど馴染み深い声だ。


零次レイジ?!」


次の瞬間、芝山駅の天窓ガラスが轟音と共に粉砕された! 舞い散るガラスの破片を伴い、細身で優雅なシルエットが、白い閃光となって上空から戦場へと直撃した。白鷺零次。極限の効率を追い求めるこの狂人は、低速な列車輸送を嫌い、東京から飛来した超音速輸送機から直接パラシュートで降下し、交戦の中心地へと精密に着地したのだ。


零次は着地するやいなや、その衝撃を逃がす動作すらも無比に優雅だった。火光の中で白髪が鮮烈に光り、手にしていた特製の長刃が瞬時に鞘を走る。


「僕のテンポ(節奏)に入れ」


零次が低く囁くと、駅全体の空気が一瞬で静止したかのように錯覚させた。彼の残像は数条の銀色の糸と化し、Nの構成員の間を駆け抜ける。無駄な動きは一切ない。一振りの剣、一発の引き金、そのすべてが芸術のように正確だった。三十秒も経たぬうちに、湊たちを圧倒していた数十名の敵は、静寂の中の死体へと変わっていた。


「遅すぎるよ、湊」零次は刀を鞘に収め、淡々と時計を見た。「東京からここまで四十五分しかかかっていないのに、君たちは死にかけているじゃないか」


「チッ、相変わらず癪に障る野郎だ」湊は毒づきながらも、張り詰めていた心の糸をようやく半分ほど緩めた。


【黄金の夜明け:ハリー覚醒】


一行は時間を惜しみ、ゼロの導きに従って端末室へ突入した。星玲は天才的な実力を発揮し、キーボードを叩く指が残像を描く。


「リンク通路開放! ハリー、目を覚ましなさい!」


星玲がEnterキーを叩きつけると、漆黒だったモニターが瞬時に弾け、眩いばかりの黄金の光が狭い室内で爆発した。ニューヨークからの膨大なデータにより、ハリー(Harry)はまだ完全な実体化には至っていないが、世界最強の演算能力が先んじてこの地に届いた。


『久しぶりだね、みんな。十七セブンティーンの涙は、僕が受け取ったよ』


ハリーの声は幼いながらも、揺るぎない威厳に満ちていた。黄金のデータ流は台北の地下鉄網に沿って猛烈な勢いで拡張し、芝山を起点として新莊シンショウ新店シンテン木柵モクサクの四つの端点を連動させた。


台北の四隅から四本の黄金の光柱が立ち上がり、巨大な戦術包囲網を形成。中心部に居座るN組織のウイルス信号を強制的に切断した。


「双北(台北・新北)の権限は、僕が取り戻した」


ハリーの黄金の虚像が皆の前に現れ、野球帽のつばを直した。「残りは、プロの仕事に任せてよ」


その時、遠方から黒い列車が次々と入線する音が聞こえてきた。東京支部率いる強力な援軍がついに到着したのだ。洗脳放送に精神を削られ、限界を迎えていた台北の同僚たちが救われるのを見て、アキラのこわばっていた肩がようやく少しだけ軽くなった。


彼女は市街地の闇に沈む一角を見つめ、瞳に確固たる決意を宿した。


「行きましょう。林司令を救い出し、そして……この成人式を終わらせるために」


【闇の指揮所:毒蛇の嘲笑】


一方、台北のどこかにある深層地下指揮室。


唯一の光源である巨大なホログラムスクリーンには、不気味な紫色に点滅する双北の電力・ネットワーク図が映し出されていた。支配率八割を誇っていた紫の領域が、今や四隅から侵食してきたハリーの黄金の光によって、焼かれた紙のように崩壊しつつある。


「くそっ……!」


Nの面具をつけた未知の人影が、低く唸り声を上げ、コントロールデスクを拳で叩きつけた。


「台北は規模が小さく、ニューヨークや東京に比べて防御層が薄いからこそ、真っ先に収穫できるはずだったんだ……。それが、また奪い返されるとはどういうことだ?!」


この謎の男はN組織内部で今回の「台北捕食計画」を遂行する高階エージェントだった。彼は新堂弦ではなく、その遺産を冷酷に利用する者だ。


「新堂弦の残した莫大な資産と権限を、こんな場所で浪費するわけにはいかない……。外郭の拠点は捨てろ! 全兵力を中枢へ戻し、松山ソンシャン信義シンイーを死守しろ! ハリーが降臨しようとも、金融と政治の中枢さえ握っていれば、この街はまだ我々の手の中だ!」


彼の指がスクリーンを滑り、芝山駅の監視カメラ映像を映し出した。曉が湊と零次に護られ、再起動した黄色い列車へ踏み込む姿がそこにあった。


「新堂曉……やはりお前がイレギュラーか」


男は曉の深い藍色の髪を睨みつけ、瞳に陰湿な光を宿した。「後継者になるのを拒むなら、この本部と共に埋もれるがいい」


【黄金の決意:禁忌の会話】


疾走する黄色い列車の中。零次は優雅にドアに寄りかかり、長剣を杖のように突いていた。先ほど屠殺に近い戦闘を経たというのに、彼の服には返り血一滴すら付着していない。


「湊、相手の足並みが乱れたよ」零次の声には起伏がない。「だが、ここからが最も危険な時だ。窮鼠は最後に、すべてのチップを本部に賭けてくる」


湊は新しく換装した大容量マガジンを確認し、隣で目を閉じて休む明と、ハリーのリンク維持に全力を注ぐ星玲に目をやった。そして最後に、曉を見つめた。


「曉、怖いか?」湊が優しく問いかける。


曉は目を開いた。瞳にはトンネルを抜ける列車の灯火が急速に流れていく。彼女は首を振り、少し冷ややかな、しかし確かな微笑を浮かべた。


「いいえ。ただ、これが全部終わったら……あなたが言っていたレモンティーのお店、看板は何色にしようかなって考えていたの」


湊は一瞬呆気に取られたが、すぐに晴れやかな笑みをこぼした。体制が崩壊し、本部が陥落した絶望の淵で、「未来」という名の禁忌を語ること。それこそが、今の彼らにとって最も強固な武装だった。


「金色にしよう」湊は彼女の手を握った。「さっき、ハリーが降臨した時のような色だ」


列車の放送が「ピンポン」と鳴った。それは不快な洗脳放送ではなく、ハリーの自信に満ちた幼い声だった。


『次は、台北本部。』


【引力:生贄の街】


その頃、台北市中心部の空は完全に変色していた。松山と信義区の摩天楼、そのLED装飾はすべて不気味な紫色に切り替わり、ビル群の屋上に隠されていた数百基の自動防御砲塔が一斉に旋回。黄色い鉄道の入線軌道をロックオンした。


「湊、状況が変わったよ」イヤホンから零の声が響く。かつてない焦燥を含んでいた。「信義区のデータ流量が異常爆発している。相手はすべての防御インターフェースを自ら開放している――これは防御じゃない。僕たちを『歓迎』しているんだ」


湊は銃を握り直し、隣で目を閉じ祈るような曉と、冷徹な零次を見た。


「罠だろうと墓場だろうと」湊はボルトを引き、狂気じみた決意を瞳に宿した。「ショーの準備ができているって言うなら、派手に暴れてやろうじゃないか」


【深淵の暗室:司令の危難】


地図から完全に抹消された空間。林司令は巨大な支柱に固定されていた。手は縛られていないが、高強度の磁気ロックが彼の自由を奪っていた。目の前では、Nの面具をつけた男が背を向けてモニターを眺めている。


「なぜ殺さない? お前は一体誰だ?」


劣勢にあっても司令の威厳は揺るがない。男は低く嘲笑し、ゆっくりと振り返った。


「知っているか……なぜ最初の猟場に台北を選んだのか」


「外交関係が良好だから、だろう?」司令が睨む。


「その通り。この街は巨大な磁石マグネットだ。どこかの国が手を出せば、多くの支援を引き寄せる。東京の白鷺零次、ニューヨークのハリー……台北が危機に陥れば、彼らは見捨てることができず、吸い寄せられるようにやってくる」


司令の瞳孔が収縮した。戦略指揮官として、その言葉の裏にある凄惨な代価を理解したのだ。


「最初はここを拠点に世界を侵食するつもりだったが、計画変更だ。精鋭たちが自ら飛び込んできたのなら、ここで……ZERO-DELAY各地の精鋭を、一掃してあげよう」




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