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第53話 7年後

 あれから7年が過ぎ、春陽は父、敦と同じオフィースで働いている。


 自分のデスクに座って、綾香を迎えに綾香のご両親の元へ行ってからのことを思い返す。


 綾香は2学期になってから、桜ヶ丘高校へ辞表を出した、すぐに代わりの教員が見つからないということで、春陽が高校2年生の間は綾香が担任を務めた。


 そして春陽が高校3年生になった春に綾香は桜ヶ丘高校を去った。


 父、敦が用意してくれた大学進学塾の講師を2年ほど勤めていたが、桜ヶ丘高校からお呼びがかかり、それ以降、今でも桜ヶ丘高校で教師として過ごしている。


 春陽は18歳になった時に綾香と婚姻するつもりでいたが、綾香のご両親から待ったがかかった。


 やはり未成年者との婚姻は待ってほしいと綾香のご両親から嘆願され、婚姻届けを出すのは春陽が大学を卒業してからということになった。


 始めは春陽のことを敬遠していた綾香のご両親も、春陽が毎週のように連絡をすることで段々と距離が縮まり、春陽が大学を卒業するころには結婚を容認してくれるまでになった。


 春陽は桜ヶ丘高校を卒業してから、大学へ進学し、建築学部を専攻し、卒業してからは父、敦と一緒に建築事務所で働いている。


 大学を卒業してすぐに婚姻届けを出して、小さな教会で細やかな結婚式をあげた。


 ジョディ先生と和尚は高校3年生の時に喧嘩別れをし、ジョディ先生はアメリカへ帰ってしまった。


 喧嘩の原因は春陽達にも告げず、和尚は傷心の旅にでると言って、ネパールを目指したまま音信不通となっている。


 優紀と香織も大学に進学してから、お互いに納得して別れた。そして今は別々の彼氏、彼女がおり、幼馴染の相談相手として、今でも仲良くしている。


 信二は大学に入ってから千春と仲良くなり、段々と仲を深めていって、今では千春と付き合っている。


 京香先生は、父の敦から青年実業家社長を紹介してもらい、その方と結婚し、今では一児の母となっている。


 保険医には未練はなかったらしく、結婚が決まるとすぐに桜ヶ丘高校を辞めてしまった。


 絵理沙と咲夜が桜ヶ丘高校を卒業してからどうなったのか、春陽の友人達は誰も知らない。


 春陽が大学を卒業した年の秋に娘のありさが産まれた。


 娘ありさの妊娠を知ったのが春陽が大学4年生の時だったので、春陽は焦って綾香のご両親の所へ報告と謝罪に行ったが、ご両親は子供ができたことを喜んで、春陽を許してくれた。


 春陽は大学に入ってからも身長が少しづつ伸び続け、180cmを超えるほどの身長となった。


 童顔の綾香は、いまでも幼顔で、春陽のほうが年上にしっかりして見られることが多く、春陽は自分が老け顔ではないかと内心では心配している。


 継母の睦美さんは、春陽が大学を卒業するまでの間に2人の娘を出産した。


 春陽にとって年齢の離れた妹2人ができたわけだが、娘のありさとほとんど年齢が変わらないため、複雑な気持ちだ。


 父の敦は年齢を経ても、若い女性が好きは治らず、睦美さんの監視の隙をついては、飲みに行って、口説いていたみたいだが、浮気をすることはなかった。


 春陽と違って、娘2人が可愛いらしく、家に帰って娘にキスをしてもらうのが1番に嬉しいことだと父の敦は言う。





◆◆◆





「おかえりー! パパ!」


「ただいま! ありさ!」



 春陽がマンションの玄関を開けると、毎日、娘のありさが玄関まで走って迎えてくれる。


 春陽は玄関で鞄を置き、娘のありさを抱っこするといつも頬にキスをしてくれる。


 父の敦が娘2人にメロメロになった気分を今は春陽も感じている。



「おかえりなさい! 春陽君!」



 綾香が料理を作りながら、春陽を見て優しく微笑む。


 その微笑みは高校時代から全く変わりはなく、春陽のことを優しく包み込んでくれる。


 春陽は抱っこしたありさを床へ降ろして綾香の元へゆっくりと歩いていくと、綾香を後ろから抱きしめて、お腹をさする。



「本当に春陽君は私のお腹をさわるのが好きですね。まだ妊娠3カ月ですからお腹は大きくないですよ」



 綾香は今、妊娠している。あと7カ月もすれば、春陽は2児の父親となる。



「今日は学校はどうだった?」


「はい! 順調です。でも困ったことに春陽君と同じような年上フェチな男子がいて、どうも学校の先生のことが好きなようなんです」


「それは困った学生だな。ちゃんと注意しておかないといけないね」


「春陽君のことを思い出すと注意できないですよ。私達のほうが大胆でしたから」



 思い当たる所は多い。綾香のご両親とは高校生の間は同棲しないと約束しておきながら、結局2人は隠れて同棲していたのだから。


 綾香と初めて結ばれたのも、春陽が高校3年生の時だった。


 その時、京香先生にそのことがバレて、2人で正座をさせられて、怒られたのは良い思い出となっている。



「先日、テレビでストーカー騒ぎのニュースが流れていたでしょう」



 綾香が少し不安気な視線を春陽に向ける。



「そのストーカーの犯人って諸星駿先生だったわ。今度は現行犯逮捕みたいだし、余罪あるとニュースで言ってたわ。懲りない人ね」


「ああ、そのニュースはネットで閲覧したよ。今度は高校生女子だったらしいね。女子に被害がなくて良かったよ」



 これで余罪もあるとすれば、諸星駿も実刑になるだろう。少しは頭を冷やしてくれればいいと春陽は思う。



「綾香! 学校で口説かれたりしてないよね?」


「さすがに30歳を過ぎてからは誰からも声はかかりませんね。京香も結婚してから男性からのお誘いがなくなったと言っていました」



 京香先生は1児の母になってからは母性があふれ出し、新たな魅力を溢れている。妖艶で母性もある魅力的な女性に進化している。


 今では結婚しているので、昔のように気軽には遊びに来れないが、春陽が高校2年生の時から大学卒業までの間は、ほとんど春陽のマンションへ泊りに来ていた。


 その頃が懐かしく、3人で居たあの頃は春陽にとっては貴重な思い出となっている。



「そういえば、さっき、京香から連絡がありまして、今日は旦那様が出張に出ているので娘のかりんちゃんを連れて泊りに来るそうです」



 今でも京香先生と綾香は仲が良く、良いママ友となっている。そして娘達同士も大変仲が良い。



「そうか。今日は楽しい夜になるな!」



 昔は高校生だった春陽も飲酒が許される歳になってからは京香先生のワインの相手をさせられることが多い。



「今日は、あまり飲まないでくださいね。明日も仕事があるんですから」



 綾香がテーブルの上に料理を並べて、春陽に忠告をする。


 春陽はそんな綾香の元へ歩いていき、腰を抱きしめて、唇を重ねる。



「あー! パパとママがチューしてる!」



 ありさが両手で顔を隠して、指の隙間から春陽と綾香を見て笑っている。



「そうだよ。パパはママのことが大好きだからね」



 春陽はありさに笑って、綾香を抱きしめて熱いキスを交わす。



「ハワワ、料理が冷めてしまいます。ありさの前で恥ずかしいです」



 今でも綾香の反応は変わらない。昔の純情なままの反応だ。それが初々しくて、春陽が悪戯をしたくなるが、グッと我慢する。



「パパ―! 私にもチュッチュ!」



 リビングのソファに座った春陽の上にありさが馬乗りになって、春陽の唇にありさがチューをする。


 その姿を見て綾香が優しく微笑んでいる。



「京香達が来る前に、お食事を終わらせておきましょう。今日は春陽君の大好きなハンバーグとオムライスですよ」



 春陽のお子様メニュー好きは未だに直っていない。


 3人でテーブルに座って料理を食べる。ありさは小さいので、まだ、少し食べ方が上手くできない。


 綾香がかいがいしく、ありさの面倒を見て、食事を食べさせている。


 変則的な高校生活だったし、大学時代も色々あったけど、春陽はこれで良かったんだと心から感じる。


 3人の団らんの食事は、いつも騒がしく、賑やかだが、これが家庭の幸せなのだろうと春陽は思う。


 春陽は母親には恵まれなかった。だから家族団らんというのが、どんなものか結婚するまでわからなかったが、良いものだと感じる。



「綾香、結婚してくれてありがとう。とても温かい家庭が持てたのも綾香のおかげだよ」


「それは春陽君が優しいからでもあります。これからも家族で仲良く暮らしていきましょう」



 綾香が歩いて春陽へ唇を重ねる。



「あー! またチュッチュしてるー!」



 娘のありさの笑い声が家の中を明るく、温かく満たしていく。



「春陽君、私、春陽君と出会えて、結婚できて幸せです。ありがとう」


「俺も綾香と出会えて、結婚できて幸せだよ。秋になれば、また子供も増えるし、楽しみだね」



 料理を食べながら、綾香を春陽は見つめあって、今の幸せをかみしめるのだった。



END

これにて完結いたしました。

応援してくれた読者様、大変ありがとうございました(#^^#)

誠に感謝いたします。

この作品が良かったら評価を頂ければ幸いです。

今まで応援をありがとうございました(*^-^*)

潮ノ海月

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