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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
序章:『新撰組』の三人娘
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第二話

 不思議な不思議な『新撰組』

 一ノ瀬優、突撃兵。

 天真(てんしん)時雨、工作兵。

 クララ・クラーク・クラン、選抜射手。

 的場薫、小隊長。


 以上が第05銃器小隊『新撰組』のメンバーである。

 皆、一癖も二癖もある変わり者であるが、優秀な兵士である事には変わり無い。変わり者であるが、優秀なのだ。


 彼女らに比べれば、薫は非常に劣っている。

 射撃、勉学、工作等の技術面を見ても何一つとして敵う要素が無い。

 彼女達は妙な性格をしている以外は、完璧な美少女達なのだ。伊達に“学年最強の『ガンスリンガー』”と謳われてはいない。


 その美少女達を各席に苦労して着席させた薫は、ホワイトボードを引っ張り出す。

 そして水性ペンで、大きく議題を書いた。


「“今年の活動方針”、今日の議題はこれね」


 はぁい、と各々返事をしてくれた。

 こういう所は素直で可愛いのだが、どうして部屋の中で六・八ミリのライフル弾をぶっぱなしてくれるのか。

 それは考えないで置こう。


「何か意見のある人」


 そう問い掛けて、一番最初に手を挙げたのは意外にも一ノ瀬優だった。


「去年と同じで良くね?」


 意見があるのかと思いきや、どうやら会議が面倒臭かっただけのようだ。

 去年で良ければこんな困り果てていない、それでダメだから会議を開いているのだ、と言ってやりたかったが、折角の意見を足蹴にするわけにも行かず、取り敢えずホワイトボードに書いておく。


「えっと、他に意見は?」


 薫は引き続き問い掛ける。

 すると、クララが挙手してくれた。いつも何を考えているか分からない彼女だが、案外にも小隊の事を考えていてくれているのかも知れない。


「クララ、何かある?」


「ん。――――私達の進学がギリギリだったって、本当?」


 唐突ながら今更な問い掛けに言葉を失した。

 一応、小隊の事を考えてはいてくれたようだが。


「あ、それ俺も気になってたんだ」


「そう言えばそんな話もあったな。何でだろう?」


 本当に理由を分かってない様子のお嬢さん方。

 薫は深く考えた後、口を開いた。

 ここは正直に答えてやるべきだろう。


「それはだね。君達が問題をポンポコ起こす度に、ポイントを減点されていってたからだよ」


 先も言ったが、『咲浪銃器学園』はポイント制を採用している。

 加点があれば、必然的に減点もある。

 その辺は他所の学校と同じで、生徒が問題を起こせば所属する小隊のポイントが減っていくシステムとなっているのだ。


 まさか知らなかった分けでもあるまい。

 けど、三人は互いの顔を見合せ、「なるほど」と口々に呟くのみだった。

 反省は、していないととって良いだろう。


「と、兎に角、終わったことよりこれからの事だよ! 今年をどう乗り切るか、問題はそこにある。うん」


 何かとんでも発言が出てくる前に、話を戻す薫。

 このまま話題が脱線してしまえば、戻すのに一苦労必要だとよく分かっていた。


「時雨は? 何か無いかな?」


「そうだな。やはり地道に『不死人』関連の事件を捜査していくしか無いのではなかろうか?」


 我が『新撰組』の頭脳は、最も堅実な方法を口にした。

 確かに地道に捜査を進めていく他に道は無い。昨年度のように、宝くじ感覚でポイントを貯めるような博打は危険過ぎるのだ。

 しかし、しかしだ。

 ただでさえ競争率の激しい小隊ポイント制度の中で、地道にポイントを貯めたとしても、三人が問題を起こせば直ぐに振り出しに戻ってしまう。


 この会議は、謂わばその事実を認識して欲しいという切なる願いもあった。

 この子達は人に言われた事を理解しない。出来ないのではなく、しないのだ。

 故に薫の口から注意を促すより、三人がそれぞれ問題を起こせばポイントが減るという事実を認識して貰う為の会議なのだ。


 恐らく時雨も同じ様に思ってくれている筈だ。

 この三人の中で、一番トラブルの少ない彼女なら。


「そうだ。私とした事が」


 不意に時雨はタブレット型端末を取り出すと、ディスプレイに指を走らせ始めた。


「一時間程前に、暇だったから何と無く警察のデータベースをハックしたら…………」


 聞きたくない台詞を然り気無く口走りやがった。

 この子、天才なのに天然過ぎる。

 暇でも何と無くでも、ハッキングはやめて欲しい。


「組織犯罪対策課の連中が『RED SHOT』の取り引き情報を掴んでいたようだ」


「そんな情報、掲示板に無かった」


「隠してやがったな? ポリ公め」


 三人は警察へ怒りの矛先を向けているが、恐らく警察機関も何か考えがあってこちらへ報告しなかったのだろう。

 それよりもハッキングの件をスルーしている三人に、薫は胃痛が更に酷くなる感覚を覚えた。

 これがバレたら、ポイントが更に減ってしまう。


「取り引きは今夜。港湾地区の倉庫で行われる、とある」


「またそれはベタな場所だな」


「魚食べたい。塩焼きの」


 薫を置いてきぼりにしても、勝手に話を進めていく三人。

 クララはチョコレートを食べた後なので、塩気の物が欲しくなったのだろう。などと分析している場合では無かった。


「ちょっと、話を勝手に――――」


「じゃあ、本年度一発めはそれで良いんじゃない?」


「そうだな。書類作ってしまおう」


「カレイ。白ご飯、大根おろし」


 本当にこのまま任務申請してしまうつもりなのか。

 情報元をどうやって説明付けるのか、それをやるのは他でもない小隊長である薫であるというのに。


「待って、やめて、マジにやめて、色々不味いからやめて」


「じゃあ小隊長、これ学年主任に提出お願いします」


 制止する薫を他所に、手際よく書類を作成し印刷してしまった時雨。天才的に手際が良い。

 A4版のプリントを渡された薫は、最早観念して「了解しました…………」と呟いた。











 正座する薫。

 いつでも土下座出来るよう準備を整えているのだ。

 胃が死にそうだが、まだ生きている。


 眼前には鋭い眼光を発する学年主任の女性が、椅子に腰掛け足を組んでいる。そして腕は豊満な胸を持ち上げるように組まれていた。

 黒いタイトなスカートに黒タイツという脚部は妙にそそるものがあるが、今はそんな事を感じている暇など無かった。


 睨んでいる。

 無茶苦茶、睨んでいる。

 視線で人を殺せそうな程に睨んでいる。


「先程、警察のサイバー犯罪対策課から我が校に一報が入ってな。貴様、心当たり、あるんだろ?」


 徐に床に両手を着く薫。

 後は頭を下げれば土下座の完成だ。

 しかし、まだうちのメンバーの仕業と判明している分けでもないので、最後の砦までは開放しない。


「捜査資料を不正に閲覧した疑いがあるそうだ。そうそう、丁度こういう内容のものだったそうだが?」


 学年主任は提出したプリントをヒラヒラと掲げ、薫を更に睨み付ける。

 終わった。

 最後の砦を開け放つ時が来てしまった。


「本当に、申し訳ありません…………!」


 額を冷たい床に擦り付ける薫。

 色々と言い訳も出来ただろうが、ここで嘘を吐いては、それこそ面倒な事になる。

 この件で他の小隊員に迷惑が掛かるのは嫌だし、警察のハッキング問題をうやむやにするのも厄介な事になる。

 ここは素直に謝っておくべきだろう。


「やっぱり貴様の所の問題児か。まぁ、公的機関のシステムに忍び込める奴など、そうは居ないからな」


 学年主任、雨竜毬耶は深い溜め息を吐いた。


「顔を上げろ、的場」


 薫は大人しく顔を上げた。

 凛とした面持ちがクールと男女問わず有名な雨竜女史だが、今は頭痛に苦しむ社会人の面持ちとなっている。

 雨竜女史はウェーブした黒髪を掻き上げながら、「やってしまったものは仕方無い」と思わぬ容認の言葉を口にした。


「ポイントは減点するぞ。それくらいで済むんだ。安いものだろ?」


 しかし、僅かな期待の念は、呆気なく潰される事となった。

 そうだよね、減点くらいで済むならラッキーだよね、と自分に言い聞かせる薫だった。


「これは受理しておく。警察からもこちらがヤってくれるなら、それで構わないと言ってきている」


「それはまた、寛大な」


「が、一つだけ条件付きだ」


 雨竜女史は、ビッと人差し指を突き立てる。

 薫は息を呑む。


「ヤるなら徹底的に破壊して欲しいそうだ」


「破壊? 警察が、ですか?」


「そうだ。市民を守る警察組織が、徹底破壊を依頼してきた。その事については特に明言は無かったが、どうにもキナ臭い」


 雨竜女史の言う通り、何かが可笑しい。

 警察がこちらに何らかの依頼する場合、被疑者の生け捕りと証拠の保全を第一に注意してくる筈だ。それを破壊しろなど、尋常では無い。


「注意しろ、的場。“『新撰組』の三人娘”は兎も角、お前は戦闘の才能が低い。何かあれば、直ぐに撤退しろ」


「り、了解…………」


 視線を鋭くしたまま、意外なお言葉を貰えたことに驚く薫。

 雨竜女史は現役の軍人だ。

 そんな彼女が注意しろと言うなら、よっぽどの事だろう。

 薫は念入りに作戦を立案しようと、密かに胸に誓った。

 コメディタッチに書けてたら幸いです。

 何事も楽しく面白くが一番ですよね。

 笑いだけが面白いとも限りませんが。

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