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神様の御子  作者: 珠州 那緒
19/20

逃げるのは罪ですか?







スミレさんがこっちの世界に来てくれて、もう1ヶ月。

先週無事にマリアに後継人になって貰い、パトリックに嫁いだ。

見ているだけで胸焼けするほど、二人の雰囲気は甘い。

さすが新婚。



「パトリック…そのにやけた顔を何とかしなよ…」

「すみません……なんだかこんなに可愛らしいお方が私の妻なんだと思うと…」

「………………………」



照れくさそうなパトリックの言葉に、呆れてしまう。

スミレさんの方は、全くいつもと変わらず仕事の鬼と化しているというのに…。



「美愛ちゃん、どうしたの?」

「なんでもなぁい…なんかあれだね、二人の子供出来るの早そうだよね」

「やだっ! そんなっ…私高齢出産になっちゃうじゃない…」

「リーチェも私も居るし、安心安全に産めると思うから大丈夫じゃね? スミレさん若いし。 双子とか産んじゃいそう…」

「やだぁ~もうっ、美愛ちゃんったら…」



きゃあきゃあ嬉しそうなスミレさんと、顔を真っ赤にして困ったように眉尻を下げるパトリック。

ホント我ながら良い仕事をしたなと思う。










******




「つっかれたあああああああああ…」



夕食後お風呂に入り、ベッドにうつ伏せで倒れこみ、私はゆっくりとすでにベッドの中に居たアレクの横に潜り込む。



「大丈夫か?」

「ん~…最近身体が重いんだよね…オークデュレ帝国(コッチ)来た時から欲求不満は感じても、全然疲れとか感じてなかったんだけどさ~」



無表情だが不安そうなアレクに苦笑しながら話すと。



「………………ミア、明日の朝、リーチェ様に交信(テレパス)を掛けて貰えるか…?」

「良いけど…なんで?」

「いや…もしかしたら…妊娠してるのではないか?」

「………………え?」



あまりにも深刻な声音でそう言われ────、私はその可能性にやっと気がついた。



「そういや…このところバタバタしてて気にしてなかったわ」



あはは、と笑って誤魔化すと。

アレクはジトッと視線を向けてきた。



「明日の朝一番にリーチェに確認してみる…」

「そうしてくれ。 今日はゆっくり寝よう…おやすみ」

「うん…ごめんね、アレク…おやすみ」



なんだか心配させてしまったことが悪かったのか、アレクの顔はいつもより険しい。

それが────まるで、アレクが私との子供を望んでないようで……急に悲しくなった。




だからつい謝ってしまい──────私は、ギュッと瞼を閉じてアレクに背を向けた。














「ふむ…居るのぅ…」



朝一番確認しに来たリーチェにそう言われて────私の目の前は真っ暗になった。




──────────どうしようっ…!




「ミアっ──?!」




完全に私の頭の中はパニックで状態で。

リーチェの前から。

城の中から消えることを望んでしまった私は────リーチェの驚きの叫びを無視して空間移動で逃げ出してしまった。














────────────逃げるのは罪ですか?
















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