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魔王軍への入団試験  作者: 星狼


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7/7

最後の自己PR

魔王は卓の上で指を軽く叩き、紫の瞳を五人に向けたまま、静かに口を開いた。


「よし、最後だ。何か自己PRを行なってくれ。」


左端の横綱の豊ノ海が、背筋を伸ばしたまま声を張り上げた。


「はっ!相撲とは、土俵の上で一瞬の勝負が決まる究極の芸術です。横綱として最高位に立った自分が言うのもなんですが、相撲の魅力は『どすこい!』の一声に、礼儀・根性・礼節・爆発力がすべて詰まっています。呼び戻しで逆転する瞬間、観客の歓声が沸く瞬間……それが相撲です。魔王軍に入っても、この相撲の魂を魔界中に広めて、皆を『相撲ファン』に変えてみせます。相撲こそ、世界を繋ぐ最高のスポーツです。」


魔王は視線を移し、短く言った。


「ふむ。次の者。」


隣の大関の春乃山が、即座に応じた。


「はっ!相撲の真髄は『送り吊り落とし』のように、

相手をしっかり支えてからドスンと落とすところにあります。ただ強いだけではない。根性で耐え、礼儀で相手を敬い、最後に力で決める……それが相撲の美学です。人間界で大関まで来た私が保証します。相撲をやれば、心が強くなり、体が強くなり、人生が強くなります。魔王軍の皆さんも、ぜひ土俵に上がって『どすこい』と叫んでみてください。人生が変わりますよ。」


魔王は再び視線を移した。


「なるほど。次の者。」


関脇の玉ノ浦が、声を揃えて続けた。


「はっ!相撲の魅力は『網打ち』のように、華麗に相手の腕を絡め取って倒すテクニックにあります。力だけではなく、頭脳とタイミングと柔軟さが勝負を決めるのです。三役として上位に挑み続けた私が言うのもなんですが、相撲は『努力が必ず報われる』スポーツです。毎日稽古して、毎日強くなって、毎日『はっ!』と気合いを入れる……それが相撲の醍醐味。魔界の皆さん、相撲をやれば、きっと新しい自分に出会えますよ。」


魔王は僅かに首を傾げ、視線を小結の鏡ノ里に移した。


「ふむ。次の者。」


小結の鏡ノ里が、姿勢を崩さず答えた。


「はっ!相撲の最高の魅力は『肩透かし』の一撃です。相手の力を利用して、するりと透かして倒す爽快感……あれを味わったら、もう抜け出せません。私が小結として上を目指す中で学んだのは、相撲は『謙虚さと挑戦』のスポーツだということです。どんなに強い相手でも、礼儀正しく向き合えば、いつか勝てるのです。魔王軍の皆さん、勇者だろうが魔族だろうが、土俵に上がればみんな平等。相撲で繋がりましょう。みんなでどすこい!」


魔王は視線を右端に移した。


「なるほど。では最後の者。」


前頭一枚目の東ノ富士が、膝の上の手を握りしめ、声を張り上げた。


「はっ!相撲の魅力は『頭捻り』のように、ちょっとした工夫で大逆転できるところにあります。三役目前まで来た私が断言します。相撲は『清く正しく、強く』なるための最高の道です。礼儀を学び、根性を鍛え、仲間と支え合い、毎日が成長の連続……これ以上楽しいスポーツはありません。魔王軍に入って、相撲の魅力を魔界中に広めたい。みんなで土俵に上がって、笑顔で『はっ!』と気合いを入れましょう。相撲最高!」


魔王は卓の上で指を軽く叩き、静かに呟いた。


「ふむ。それでは面接は以上だ。結果は近々郵送させて貰う。本日はありがとうございました。」


力士一同が、声を揃えて応じた。


「はっ! こちらこそありがとうございました!」


五人は整然と立ち上がり、深く頭を下げた。

背筋を伸ばしたまま、静かに部屋から退出していく。

玉座の間に残されたのは、魔王と側近だけ。

燭台の炎が揺らめき、静寂が再び部屋を満たす。



魔王は玉座に深く腰を沈めたまま、側近に向かって小さく呟いた。


「……なんで、全員力士だったんだ?」


側近は僅かに肩を震わせ、言葉を探すように答えた。


「さ、さぁ……?」


面接の結果はどうなったかは、わからない。

誰が合格し、誰が不合格になったのかは、誰にもわからない。


だがしかし、10年後、魔界の国技は相撲となる。

恐らく、この一件が影響しているはずだ。

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