入団の動機
魔王は卓の上で指を組み直し、紫の瞳を五人に向けたまま、静かに口を開いた。
「なぜ我が魔王軍に入団したいのか。具体的な動機を教えてくれ。」
左端の横綱の豊ノ海が、背筋を伸ばしたまま声を張り上げた。
「はっ!自分は人間界で最高位の横綱まで昇り詰めました。しかし、それで終わりとは思えません。次は新たなステージでの挑戦がしたいと思ったのです。魔王軍で活躍し、相撲の魅力をさらに広く世に伝えていくのが、自分の次の目標です。」
魔王は視線を移し、短く言った。
「ふむ。次の者。」
隣の大関の春乃山が、即座に応じた。
「はっ!大関として、多くのファンに相撲の楽しさを届けてきました。ですが、人間界だけでは限界を感じるようになりました。魔王軍で活躍し、こちらにも『どすこい』の精神を広め、相撲を世界遺産級の存在にまで高めたいのです。」
魔王は再び視線を移した。
「なるほど。次の者。」
関脇の玉ノ浦が、声を揃えて続けた。
「はっ!三役の地位に上がれたのは嬉しかったですが、まだ満足していません。人間界の相撲は礼節と根性が基本ですが、魔王軍ならもっとダイナミックな展開が待っているはずです。相撲の魅力をさらに広め、誰もが相撲界のように気合いを入れて生きる世界を作りたいのです。」
魔王は僅かに首を傾げ、視線を小結の鏡ノ里に移した。
「ふむ。次の者。」
小結の鏡ノ里が、姿勢を崩さず答えた。
「はっ!人間界で小結まで来ましたが、もっと多くの人に相撲を知ってほしいという思いが芽生えました。魔王軍なら、勇者や魔族と土俵で真っ向からぶつかり合い、相撲の普遍的な魅力を証明できるはずです。皆で土俵を盛り上げ、共に熱くなりたいのです。」
魔王は視線を右端に移した。
「なるほど。では最後の者。」
前頭一枚目の東ノ富士が、膝の上の手を握りしめ、声を張り上げた。
「はっ!平幕上位で長く頑張ってきましたが、人間界だけでは物足りなくなりました。魔王軍に入り、新しい技を磨きながら、相撲の『熱い闘い』と『礼儀正しさ』を魔界中に広めたいと思ったのです。清く正しく、強く!」
魔王は卓の上で指を軽く叩き、静かに呟いた。
「……なるほど。それぞれに、熱い思いがあるようだな。」
部屋に、短い沈黙が落ちた。
燭台の炎が揺らめき、五人の顔を赤く染め、影を壁に長く伸ばす。
魔王は視線を五人全体にゆっくりと戻し、言葉を続けた。
「それでは、次の質問だ。」




