職歴の確認
魔王は低い卓に肘を置き、紫の瞳を五人に向けたまま、静かに口を開いた。
「それでは、自己紹介と、人間界での職歴を詳しく教えて貰おう。過去にどのような仕事や経験を積んできたか。左から順に。」
左端に座る男が、背筋を伸ばしたまま、声を張り上げた。
「はっ!自分は豊ノ海 鉄です!人間界では力士をしておりました! 横綱でした!」
魔王は視線を隣に移し、短く言った。
「ふむ。次の者。」
隣の男が、即座に同じ姿勢で続けた。
「はっ!自分は春乃山 剛です!自分も人間界では力士をしておりました! 大関でした!」
魔王は再び視線を移した。
「ふむ。次の者。」
次に座る男が、声を揃えるように応じた。
「はっ!自分は玉ノ浦 雷鳴です!自分も人間界では力士をしておりました! 関脇でした!」
魔王は僅かに首を傾げ、視線を四番目の男に移した。
「はっ!自分は鏡ノ里 嵐丸です!自分も人間界では力士をしておりました!小結でした!」
四番目の男が、声を上げた。
「……小結と言うのは、どの程度のランクなのだ?」
魔王の質問。
鏡ノ里は姿勢を崩さず、即答した。
「はっ!横綱が最高位となります!そしてその下に三役と言う位があります。大関、関脇、そして小結と続きます!小結は三役の中では一番下位ではありますが、相撲界全体で見ると上位に値します。」
魔王は頷き、視線を右端の男に移した。
「なるほど。では次の者。」
最右端の男が、声を張り上げた。
「はっ!自分は東ノ富士 剛です!自分も人間界では力士をしておりました! 前頭一枚目でした!」
魔王は再び視線を固定した。
「……前頭一枚目と言うのは、どの程度のランクなのだ?」
東ノ富士は、膝の上の手を軽く握り、説明した。
「はっ!三役の下は全て前頭となります!しかし、前頭は前頭筆頭、前頭一枚目、前頭二枚目と続き、前頭十七枚目まであります!前頭一枚目となると三役まで後一歩に値します!」
魔王は卓の上で指を軽く組み、静かに呟いた。
「……ふむ。十七枚目まであるのか。」
部屋に、再び短い沈黙が落ちた。
燭台の炎が揺れ、五人の影を長く伸ばす。
魔王は視線を五人全体にゆっくりと戻し、言葉を続けた。
「では、次の質問に行こう。」




