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魔王軍への入団試験  作者: 星狼


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玉座の謁見

魔王軍は、永きに渡り人間界との戦いを続けてきた。

炎と氷と闇の軍勢は、勇者たちの刃に幾度となく削られながらも、決して滅びなかった。

しかし、近年、魔界の戦力は微妙な均衡を保ちつつも、緩やかに衰えを見せ始めていた。

人間の技術は進み、魔法の解析は進み、勇者達はより洗練され、組織的になっていた。

一方、魔族の数は生まれながらに限られ、再生の速度も遅い。

永遠に近い命を持つ者達にとって、戦死は取り返しのつかない損失だった。


そこで、魔王は一つの決断を下した。

人間を、魔王軍に迎え入れる。


もちろん、無条件ではない。

人間は裏切りやすく、狡猾で、魔族の掟を理解しない。

スパイの可能性は常に付きまとう。

だからこそ、採用は魔王自身が直々に審査する。

玉座の間での面接は、儀式であり、審判であり、贖罪の場でもある。

合格すれば、魔界の掟に縛られ、永遠の忠誠を誓う。

不合格ならば、二度と陽の光を見ることはない。


玉座の間は、魔王城の最深部に位置する。

黒曜石を思わせる床は、足を踏み入れるだけで冷気が骨まで染み渡る。

壁面には、古の魔文が無数に刻まれ、紫がかった燭台の炎が揺らぐたび、影が蠢くように動く。

天井は遥か高く、闇に溶け、星のない夜空のように沈黙している。

中央に据えられた玉座は、黒い岩晶を削り出した巨大なものだ。

背もたれには、翼を広げた魔獣の彫刻が睨みを利かせ、座る者の影を二倍に引き伸ばす。

その前に置かれた低い卓は、面接者のためのものではない。

ただ、魔王の視線を下に落とさぬよう、僅かに高さを揃えただけのものだ。


この日、扉が重く開かれた。

重厚な鉄の音が響き、冷たい風が間を吹き抜ける。

五人の男が入ってきた。

彼らは黙って進み、玉座の前の席へと座る。

膝を揃え、背筋を伸ばし、両手を膝の上に置く。


魔王は玉座に腰を下ろしたまま、動かなかった。

紫の瞳が、五人を順に捉える。

炎の揺らめきが、彼らの顔を赤く染め、汗一つ浮かべぬ額を照らす。

部屋に、息遣いさえ聞こえない静寂が満ちた。

ただ、燭台の芯が時折、火花を散らす音を立てるだけだ。


五人は、目を伏せぬ。

ただ、正面を見据え、待つ。

魔王軍入団への面接がこれから始まる。

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