チーム強化月間開始
訓練開始から15日───
「諸君!良い朝だ!全員集まっているかね?」
壇上に立ったドストフは声を張り上げそう言った。
「えっと、病欠以外の21人全員集まってます。」
アルカンは壇の下からドストフにそう応えた。
「ネビロ、今日は何かドストフさんから話がありそうだけど。」
「そっかウィルフは初めてなのか」
ドストフは更に声を張り上げる。
「今日よりチーム強化月間が始まる!月末には恒例のチーム対抗テストもある!心してかかるように!」
言い終えたドストフは壇上から降りる。
チーム強化月間というのは初耳だ。
私はネビロと一緒に訓練室に戻る。
「チーム強化月間って何?」
私はネビロに聞いてみた。
「四ヶ月の内の1ヶ月は個人の訓練じゃなくチームとしての訓練に力をいれるんだ。」
そう言われたが、私はいわゆる、チームで一致団結してチームワークを高めるだとか、そういう名目では無いことを直感した。
「訓練内容はどう変わるの?」
「まぁさっき言ってたチーム対抗テストの対策を普段の訓練に追加してやる感じ。」
「そのチーム対抗テストっていうのはどういう内容なの?」
「チーム対抗テストはね、簡単に言えば全チームで山に入って規定の植物をより多く持ってこいってやつなんだけど細かいルールを話そうか?」
「頼める?」
「いいよ
1.制限時間は2時間
2.場所はミルネア山の全域
3.集める植物はテストの直前に発表される
4.他生徒に対する妨害行為は殺害以外は許可される
5.集めた植物は各生徒が背負う籠に入れる
ざっとこんなもんかな。」
問題があるとすれば4つめ。
他生徒に対しての攻撃が許可されるなら、このテストの肝は植物系スキルの練度以外の部分になってしまう。
誰が作ったのか分からないが、意図が汲み取れない。
なんと言うか……
「運動会みたいだな、」
「運動会?」
こっちの世界の学校には、運動会、文化祭というものが無い。
「異国の文化にあるんだよ。勉学を学ぶ学校なのに、身体能力で競う、よく分からない行事が。」
「ふーん、まぁウィルフがそう言うなら似てるんだろう。」
「おーい、二人で何話し込んでんの?」
そう言ってネビロの背中をバンと叩いたのはアガリアだった。
「ウィルフにチーム強化月間の説明。初めてだから、」
「あぁそっか、うわ、てかウィルフ来てからまだ半月くらいしか経ってないんだ、馴染みすぎて忘れてたわ」
「というかどこ行ってるのか知らないけどレティも初めてだよ。」
コンコン、とドアがノックされた
「ネビロ、入るよ」
キィ、とドアが開いて入って来たのは茶髪だが、毛先に近づくにつれ白髪になっている、流麗な女性だった。
「エリン!どうしてここに?」
「ええ?だって次のテストの要はこの子でしょ?」
そう言ってエリン、と呼ばれた女性は長髪を靡かせながらこちらに近づいてきた。
「ど、どうも、エリン……さん?」
「どうも」
「エリン先輩、品定めですか?」
「うん、ウィルフ君だったよね?私ね、相手の目を観察すると、その人の魔力に関することが大体わかるんだ。これ特技。」
そう言ってエリンは顔を近づけてくる。
「ふーん、確かに出力はとんでもないね。ただ魔力量は突出してる訳じゃない。君すぐスタミナ切れ起こすタイプでしょ。」
流石に急すぎてよく状況が分からない。
「ネビロ君、私の紹介を頼む」
「はぁ……ウィルフ、この人はエリン先輩。ここに来て4年目の最上級生。スキルは『植物魔法使い』。前回テストの優勝チームのリーダーで、成長魔法の訓練をしてるけど、戦闘が得意な変わり者。」
最上級生、という事はつまり19歳。
4つも年上となると、少し萎縮する。
「変わり者とは、言ってくれるじゃないかネビロ君。随分、偉くなったんだね?」
「このチームのリーダーは俺です。年功序列抜きにすれば対等のはずですよ。」
「ふぅん……」
絶妙な空気が流れる。
今まで同じチームメンバー同士の絡みしか見てこなかったが、少なくとも競う事になると意外とバチバチらしい。
そう考えたら、ふと疑問が思いついた。
「ネビロ、優勝したら何か景品でもあるの?」
「なんだ、知らないのかい?ならこの空気感について来れないのも納得だ。」
「ウィルフ、このテストの優勝チームのメンバーにはね……」
「夕食に牛肉が出るんだ!」
「おお!」
この世界での主な食用肉は鶏の肉であり、豚肉でさえかなり高級だ。
そんな世界での牛肉、嬉しくない奴などいない。
「あ〜あのお肉おーいしかったなぁ〜」
「まっじではっ倒しますよ」
「前回ウチらのチームウチとネビロしかいなかったから、今回からが勝負なの。」
「まぁいいじゃない、有望な新人が入ってきたようだし、今回こそ楽しくなるよ……」
ん、ちょっと待て、さっきの言葉に引っかかった。
ネビロは「夕食に」っていわなかったか?
「あの、1個質問なんですけど、」
「何?」
「僕家から通ってるんで、夕食こっちで食べて行けないんですけど、その場合ってどうなるんですか?」
「……エリン先輩どうなるか知ってます?」
「……私が前いたチームにも家から通ってる人いたけど、」
「……どうだったんですか?」
「……食えてなかったかも」
「どうなってんだこの研究所!!」
「シアー」
「何?」
「牛肉食った事ある?」
「あるよ、1回だけ。」
「美味しかった?」
「んー……まぁまぁ?」
いいなー、と思った。
この日レティは病欠だった。
次の日、レティにもう一度同じ下りをやらされた。




