表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラムギーク、ビリオネア!!  作者: 夕野草路
楽園の計画[the_project_of_EDEN]
13/204

キミが最強になることを、今から証明しようか。――EP.4

[You'ill be invincible.――EP.4]

「おめでとう。1段、強くなったね。……最強は遠いけどねぇ」


 ツヅリは笑った。


「ねえ。経験値効率が一番良い敵ってなんだと思う?」

「知らん。メタルスライムみたいな敵がいるのか?」

「残念。不正解」

勿体もったいつけずに教えてくれよ」

「あ、良いね」


 彼女はおもむろに手帳を取り出す。

 見た目は小汚い紙束だが、実際は携帯端末と同じ機能。


 ツヅリはせっせと「勿体つけずに教えて欲しい」というセリフに線を引いて消す。


「何それ?」

「「死ぬまでに言われたい(・・)セリフ」リストだけど?」


 なんだろう。前にも似たようなモノの名前を聞いた気がする。


 そして、


「タワシですけど何か?」


 みたいなノリで答えるのはやめて欲しい。

 「死ぬまでに言われたいセリフ」リストは一般的な代物ではない。

 少なくとも俺は知らない。


 ちらりと覗いてみれば「決勝で待ってる」なんてセリフも見えた。

 決勝とは。


「それ、減ってんのかよ?」

「減らないねぇ。人と喋らないから」


 愚問でした。


「で、答えは?」

「正解は――」


 一呼吸おいて、彼女は言う。


「――失敗」


「どういう意味?」

「言葉通りの意味。人は失敗から一番学ぶ。心当たり無い?」

「……有る」


 料理もそう。不味かった味付けは2回やらない。

 勉強もそうだ。最初に間違えた問題も次は間違えない。

 後は、会話か。他人を不快にさせてしまった言葉は、再び口にしない。


 失敗をすれば、それだけ経験を積む。

 経験を詰めば、それだけしたたかになる。


「でもさ、人は失敗を避けるよね」

「嫌だからな」

「そう。失敗には痛みが伴うんだ」


 普通、夕食の度に新しい味付けを試みない。

 そうすることで料理に対する見識が深まるとしても、不味いのは嫌だ。

 だから、定番の味付けを繰り返す。

 毎回それなりに美味いけど、それ以上に料理が上達することはない。

 

「だけど、キミは違う」

「どうして?」

「キミは幾らでも失敗して良いんだ。ボクが助けるから」


 その言葉は信じることができた。


運命の輪リング・オブ・フェイト


 ツヅリと俺は、命を共有している。

 俺に何か有れば、ツヅリも死ぬ。

 逆も然り。


「これからキミには、沢山の強敵に挑んでもらう。多分、失敗も沢山すると思う。だけど、死ぬことは無い。ボクが助けるから。そして、死にかける度にキミは強くなる」


 確かに失敗は人を強くする。

 しかし、人は失敗を避ける。

 失敗には痛みが伴うから。

 ただ、俺にはその痛みが無いらしい。

 致命傷を負う前に、彼女が助けてくれるのだと言う。

 目の前で微笑む、この少女が。

 失敗しては修正。

 ひたすらに繰り返せば良い。


「反則級だ……」


 例えば、何度も回答を変えて良いテストのようなだ。


「A」

 

 と答えて、間違いならば


「B」


 と書き換える。


 繰り返せば、いずれ正解に辿り着く。

 不正解は無い。


「さあ。強くなろうか」





 頭上から降る巨大ダンゴムシの大群。


 削虫フィリング・ワーム

 

 その甲殻は粗いヤスリのような材質をしていた。

 転がりながら集団で獲物にとびかかり、肉をこそぎ落として殺す。

 面倒な動的対象《MOB》。


 そんな厄介な落下物を横に跳んでかわす、が、削虫もすぐさま方向転換。


宣言:関数デクラレーション・ファンクション  早業クイックチェンジ


 出現した巨大な剣。

 削虫を受け止める。

 しかし、数が多い。

 止めきれない。


「しまっ――」


 目の前に迫る敵は、しかし、燃え上がる。

 残りの削虫も全て燃える。

 数分後、ボロボロに崩れた炭だけが残る。


「残念だったね」


 後ろを振り向けばツヅリがいた。

 彼女は問う。


「今の敗因は?」

「……避けた方向」


 真横ではなく、斜め上に逃げれば良かった。

 俺の答えを聞いて、ツヅリは笑う。


「正解。もう一戦、行ってみよー」


 彼女が小石を頭上に投げる。

 そこには削虫のコロニーが在った。

 次の集団が降ってくる。


 跳んで避ける、のは前と同じ。

 しかし、今度は斜め上に。

 

「宣言:関数  早業 鋼鉄の槍」


 壁面に穂先を突き刺し、即席の足場に。


 削虫も後を追おうとするが届かない。

 そう。

 こいつらは上方向の移動に弱い。


 短剣を片手に跳ぶ。

 そして、跳躍の頂点で


「宣言:関数  早業 大戦槌」


 短剣が巨大なハンマーに変わる。

 そのまま重力に引かれて落下。

 数体の削虫を潰す。

 すかさず残りが殺到するが、


「宣言:関数  早業 鋼鉄の槍」


 出現した槍を足場にして、上空へ跳ぶ。


「宣言:関数  早業 大戦槌」


 再び槌に持ち変える。

 そして、落ちる。

 削虫の群れを一網打尽。

 踏みつぶす。


「ふぅ……」


 息を吐いて周囲を見渡せば、敵の残骸が散らばっていた。



[>>> filing worm defeated. 112.08(JPY) aquired]

[>>> filing worm defeated. 112.08(JPY) aquired]

[>>> filing worm defeated. 112.08(JPY) aquired]

[>>> filing worm defeated. 112.08(JPY) aquired]

[>>> filing worm defeated. 112.08(JPY) aquired]

[>>> filing worm defeated. 112.08(JPY) aquired]…………


 倒した動的対象の数だけコンソールにログが流れる。つまり、


「削虫を撃破。約112円獲得」


 という意味だ。


 失敗して修正する。

 そして強くなる。

 ひたすらに繰り返すのだ。


「また、1つ強くなったね。さあ、次のステップだ」


 ツヅリはそう言って笑った。





—―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

総資産:97,211(日本円)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ