第4話 「私らしさ」と「働きやすさ」
転職活動をしていると、自分でも予想していなかった違和感に引っかかることがある。
そのひとつが、
「職掌」を分けている会社だった。
ある会社の面接で、面接官が言った。
「当社では"総合職"と"アシスタント職"で職掌を分けています。
あなたが応募したのは"アシスタント職"ですが、
あなたの職務経歴書を拝見すると、
"総合職"っぽいお仕事をされてきていると思うのですが、いかがでしょうか。」
私は隠しても仕方がないと思い、
「申し訳ございません。貴社の職掌が分かれていることに気が付かず、応募してしまいました」
と正直に言った。
そして、面接の場で職掌の説明をしてもらってしまった。
総合職:方針を決めて、アシスタント職に実務を依頼する。いわゆる上流の仕事。
アシスタント職:総合職が決めた内容に沿って、正しく実務を回す。下流の仕事。
(※会社ごとに職掌の仕事内容はちがう。あくまでこの会社の場合)
もちろん私は、総合職側の仕事内容に目が行った。
職掌が分かれていない会社に長くいたので、総合職の仕事も、アシスタント職の仕事もやってきた。
でも、どちらかしかできないと言われると、総合職をやりたいと思う。
私はずっと実務畑で働いてきた。
いわゆるアシスタント職的な、定型業務も嫌いじゃない。
それなのに、なぜ総合職に惹かれるのだろう。
職歴を振り返りながら考えてみた。
私は昔から、だれかに決められたことをそのままやるより、
自分で考える方が好きだった。
問題を見つける。
どう改善するか考える。
関係者と話す。
スケジュールを決める。
運用に落とし込む。
そして自分も手を動かす。
たぶん私は、その一連の流れが好きなのだ。
だからアシスタント職的な立場だった頃は、少し苦しかったという経験もある。
定型業務も、もちろん大切な仕事だ。
でも心のどこかで思っていた。
私も方針を決める会議にに参加したい。
私はなぜ呼ばれていないんだろう。
そんなフラストレーションがあった。
だから面接でも、つい本音が出てしまった。
「実は、将来的には総合職的な働き方にも興味があります」
言った瞬間、頭の中の小さい私が叫ぶ。
余計なこと言った!
落ちるぞ!
でも、それでいいとも思う。
責任が比較的軽くて働きやすいアシスタント職であっても、
自分らしく働けないんだったら、
転職する意味がないと思ったからだ。
面接官は落ち着いた様子で聞いた。
「どうしてそう思われるのですか?」
私は「自分で課題を見つけて改善する仕事が好きだからです」と答えた。
「もちろん実務も好きです。
でも、言われたことを正しく処理するだけではなくて、より良い形を考えることにも関わりたいんです」
面接官からは、
「そうですね。アシスタント職から入って、
実務を理解して、
【欲深く】なってきたら、
総合職に転換する社内試験を受けてください。
総合職の方が給料もいいですからね」
と言われた。
私は「おや?」と思った。
私は「総合職」という肩書を得て、給料を挙げたいわけじゃない。
私は、自分で考て、周囲の人とコミュニケーションを取って決定して、主体的に働きたい。
そう思っているのだ。
それは、確かに端から見たら待遇のいい職掌になりたがってる奴なのかもしれないけれど、
今の私にとって、面接官の言葉は、
「育児中で、ろくに残業も出来ないのに好待遇に憧れる【欲深い】人間」
にでも見えてるのかなと思ってしまった。
(被害妄想だと思いますが)
実際、私にとってこれは大きな問題ではあった。
私は今回の転職活動で、「働きやすさ」を最優先にしている。
残業は少ない方がいい。
通勤時間も短い方がいい。
体調管理もしなければならない。
睡眠も大事だ。
そして一般的には、総合職の方が責任も重い。
仕事量も多い。
残業も増えやすい。
つまり、「私らしい働き方」と、
「長く働ける働き方」が、
一致しない可能性がある。
私はずっと、総合職的な働き方をしたいと思っている。
でも本当に欲しいのは肩書きや好待遇ではない。
主体性で、選択権だった。
自分で考え、自分で決め、自分で動くことだ。
「人生の選択権が欲しかった」ことと、共通している。
人生でも、仕事でも。
私はずっと、自分で選びたかったのだ。
だけど今の私は知っている。
自分らしさだけでは生きていけない。
働きやすさだけでも満足できない。
だから転職活動は難しい。
「私らしい」と「長く続けられる」の
ちょうど真ん中を探さなければいけないからだ。
その答えはまだ分からない。
だから私は今日も面接に行く。
【総合職】になるためではなく。
私らしく働ける場所を見つけるために。
ちなみに、この「職掌が分かれていることを知らずに面接に来ちゃいました。応募したアシスタント職はちょっといやで、いつか総合職になるためにがんばりたい」的なことを言っちゃった会社。
何故かこの面接は合格し、最終面接まで行きました。
正直に話してみるもんだなと思いました。




