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あまりにも小さく生まれた双子の一人は長生きできないと言われたので大切に育てた  作者: 瀬崎遊


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01. 母、シェリー

嫌な話なので好まれない方は閉じられたほうがいいと思います。


も、申し訳ありません!!_| ̄|○ il||li

UPする順番を間違えたため順番の修正のためにアップし直しました。

評価をいただいていたのに本当に申し訳なく思います。

 アグナルト伯爵家に待望の子供が生まれた。




 なかなか妊娠することができなくてブルーノ()に第二夫人を迎えるべきだと義父母が口にするのではないかと怯え始めていた頃、やっと妊娠することができた。


 残念なことに生まれたのは「女の子です」と産婆に言われて一瞬の気落ちする暇もなく再び陣痛の波がやってきた。


 慌てる産婆がもう一人、子を取り上げた。


 そして産婆はまた「女の子です」と言った。


「双子なのか?!」


 ブルーノがそう言っている声を聞いたような気がしたけれど、呼び寄せていた医師と治癒師が小さく首を横に振るのが気に掛かった。


 生まれた子たちは腹の中で育ちきれなかったのか、栄養を取り合ったせいなのか、生まれてきた二人は小さく本当に小さく生まれた。


 (シェリー)は自分のことでいっぱいいっぱいになっていて生まれてきた子供のことに気持ちを回せたのは二人を産んでからどれくらいの時間が経ってからだったろうか?


「ねえ、子供たち、の泣き声を⋯⋯聞いていない、気が、するのだけれど?」


 息も絶え絶えにそう聞いても誰も(いら)えに答えてくれない。

 

 どれくらいの時が経っただろうか?


 赤ん坊の一人がとても小さく泣き声と言っていいのかすらわからないほど小さな産声を上げた。


 私は一つ安堵してもう一人の赤ん坊の泣き声を待った。


 その間に治癒師が治癒魔法を掛けてくれたので体を起こすだけの気力と体力を取り戻した。


「もう一人の子は? 泣き声を聞いていないわ!!」


 それから暫くの時間を要してもう一人の赤ん坊も息を切らすように「うぇ⋯⋯」とかすれた声を上げた。


 けれどそれは前に泣いた赤ん坊よりも弱々しく本当に息をしているのか心配になるほどだった。




 泣き声の弱々しい赤ん坊に治癒師が慌てて再び治癒魔法を施し、今にも消えてしまうかと思われた命の火をなんとか繋ぎ止めた。


 生まれてきた子供たちにもう何度も治癒魔法を掛けているのだけれど、良い兆しが見えてこないと言われた。


 シェリーもやっと今の状況を理解することが出来て、その今にも喪ってしまうかもしれない子を胸に抱いた。


「頑張って! 生きて!!」


 先に産声を上げた子はベビーベッドに寝かされたままでこの子も荒い息をしていて治癒師が治癒魔法を慌てて掛けている。


 そのおかげで二人の女の赤ん坊は生まれた日をなんとか生きながらえることができた。




 医師と治癒師の二人に「泣き声をあげられなかった子は長生きはできないと思ってください。後悔のないように一日一日を大切にしてください」と言われた私とブルーノは震え上がった。


 愛しい我が子が生まれた瞬間から、いつ(うしな)ってしまうかと怯えて暮らすことになってしまった。


「名前も無く、亡くなるようなことがあっては可哀想だから早く名前をつけてあげて」とブルーノに願うと、急いで二人の子供に名前をつけてくれた。


 小さな泣き声を上げた子にはアビリートという名を。


 泣き声も満足にあげられなかった子にはエントワと名付けられた。





 医師と治癒師に双子で病気をうつし合う可能性があるから離して育てたほうがいいかもしれないと言われ、生まれたその日から別々の部屋で育てられることになった。


 それにもかかわらず双子だからなのか偶然なのかわからないけれど、同時期に二人は病気に掛かる。


 アビリートが先に病気になり、それに続いてエントワも病気になる。


 二人は本当に病弱で気温が1℃下がっただけで高熱を出した。


 同じように風邪をひいてもエントワは毎回重症化し、医師と治癒師がつきっきりで治療に当たっていなければならないほどだった。


 けれどアビリートはエントワに比べると熱も低く1日か2日は早く快癒し、エントワと比べると軽症のことが多かった。


 私たち夫婦は長く生きられないと言われたエントワの傍にかならずどちらかがいるようにしようと話し合った。


 アビリートには未来があるのだから暫くは我慢してもらうことに決め、世話は乳母と使用人たち任せてしまうことにした。




 双子の二人の見た目は似ても似つかない。


 見間違えることがない二卵性の双子だったエントワもアビリートも両親とよく似ているのだけれど似ている場所が違っていて本当に似ていない双子だった。


 髪色だけは私達夫婦の色が混ざったのか、アビリートは深紫(こんむらさき)でエントワは薄紫(うすむらさき)だった。


 その髪色が薄いだけでエントワの生命力が弱いような気がして私たち夫婦は不安で不安で仕方なかった。







 時は流れ、双子は弱々しいながらも生き長がらえていた。


 その日、またアビリートが熱を出したと使用人からの報告があった。


 またエントワも熱を出すのだと医師と治癒師を前もって呼んでもらった。


 医師と治癒師が到着した頃にはやはりエントワは高い熱を出していた。


 医師と治癒師が急いでエントワの治療にあたる。


 エントワが生死の境をなんとか乗り越え「もう大丈夫」と医師と治癒師に言われた。


 治癒師が「アビリートの様子も見ていきましょう」と言ったけれど「アビリートは大丈夫ですわ。いつも重症にはなりませんから」とシェリーは答えた。


 医師と治癒師はアビリートの事を気にかけていたようだったけれど治療費を払うと、それきり何も言わず受け取って帰っていった。




 私たち夫婦はアビリートを愛している。嘘偽りのない気持ちだ。


 ただ、明日も生きていられるかわらないエントワとの思い出を一つでも多く持ちたいと思うのは仕方ないことだと思う。


 エントワがいなくなってしまったら全ての愛情をアビリートに傾けるからそれまで我慢してねと心の中で謝罪しつつエントワの手を握りしめていた。


 そう、ブルーノとシェリーはアビリートとの思い出は未来にいくらでもあると思っている。


 そしてエントワは今にも神のもとに召されるという不安からただただ甘やかしてその日その日を乗り越えていた。




 アビリートに付けていた乳母はもう必要ないだろうと私はアビリートの乳母を辞めさせた。


 それが引き金になったのか、私たち夫婦がアビリートを大切にしていないと使用人たちが思い込み始めた。その時、私とブルーノは気付いていながらそのことに対応しなかった⋯⋯。いえ、できなかった。

 

 またアビリートが熱を出し、その数日後にはエントワも熱を出した。


 それが長引いてエントワは一週間も生死の境をいったりきたりしていて「どうぞエントワに今日を生きる力を」と神に祈っていた。



 エントワが元気になった時、エントワの隣の部屋にアビリートがいるから病気がうつっているのではないかと私は思ってしまった。


 使用人たちにアビリートの部屋を家族の住む二階ではない別の階へと移すように命じた。


 まさかそれがアビリートを孤独と放置という目に遭わせることだなんて考えもしていなかった。


 使用人たちがアビリートに心を砕き誠心誠意尽くして育ててくれているとばかり思っていた。


 私はすっかり忘れてしまっていたのだった。この屋敷ではアビリートが大切に扱われていないということを。


 私がアビリートを別の階にと言ったことが最後通牒だったかのように使用人たちの間でエントワのことだけを気にかければいいのだという思いが屋敷中に広がりきってしまっていた。


 そして私達夫婦はそれを気にすることもなかった。





 エントワとアビリートが三歳になる頃にはアビリートが熱を出しても「エントワお嬢様が熱を出されるかもしれません」という報告が私にされ、使用人たちもアビリートの看護をするよりもエントワが寝込んだときのための準備に走るようになってしまっていた。


 誓って言うわ。


 私はアビリートが使用人たちに大切に扱われていると思っていたの。














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