無題.txt
小説家になろう、に投稿して一年となるため、それに感謝の念を込めて、ほんの少しだけですが続きを書きました。
誰かの続きで、誰かの終わり。
……あの、すみません。
少しお聞きしたいことがあるんですが。
あ、ええと、すみません。僕の名前をまだ言ってませんでしたね。
僕の名前は……ええと、僕の名前は、えっと。
すみません。少し、思い出せなくて。
ああ、そうです。そうでした。
ここに、女の子が来ませんでしたか?
背はこのくらいで、人間で……人間で?
おかしいですよね、人間なのは当たり前です。
当たり前……のはず……あれ。
とにかく、女の子。名前は……名前も、ちょっと……どうしてだろう。あんなに、大切な名前なのに。
あの子は何度も、僕の名前を呼んでくれたし、あの子も僕の名前を、何度も呼んでくれたのに。
ここは……どこなのでしょうか。
そしてこれは……電車?……トラム?初めて見る気がします。
ここは……どこなのでしょう。ここに、あの子は一人でいるのでしょうか。
それとも、このトラムの中にいるのでしょうか。
……。
…………。
開きませんね。
なぜでしょう。これに乗らなくては行けないのに。……え?なんで今、僕は……。
あ、開けてくださるんですか。
……開きますね。あれ、僕の時は開かなかったのに。何か僕と貴方で違うのでしょうか。
あれ、貴方……少し背が縮みました?
だって貴方は、その、さっきは大人で、今は……。
嗚呼、貴方は。貴方は……貴方でしたか。
待っていて、くださったんですか。僕のことを。僕なんかのことを。
怒らないでください。だって、待っていてくれるなんて、思っていなかったのですから。
泣かないでください。僕はほら、ちゃんと来れましたよ。
笑わないでください。僕はそんなに慌てていませんから。
……いや、笑っていてください。泣いてください。怒ってください。
貴方の話をたくさん聞かせてください。
それから、貴方と話したいことがたくさんあるんです。
ですが……そうですね、そろそろ行きましょう。話はトラムの中で。
このトラムの先も、おそらくは幸福なことばかりではないのでしょう。
ですが、あんまり怖くないんです。貴方もですか?それは良かった。
最後に……。
貴方に、また会えてよかった。
ちゃんとさよならも言えませんでしたからね。
ですが、さよなら……はきっと、もっと先のことになりそうですね。今はやめておきましょう。
……え?なんですか?
僕、笑っていますか?
はは……貴方もですよ。ナイ。