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コズミック・ラビリンス(CHAPTER5b:2)

「アルベルト……? どうしてこんな所に?」


「いやだなぁ。このゲームを僕に熱心に勧めたのは、他でもない貴方じゃないですか。ガリンペイロ」


 俺の戸惑いを意にも介さず、アルベルトはいつもの柔和な笑みを浮かべた。


「いや、そうじゃ無くて……。このゲームは……と言うか、現在のVRゲームその物が、例の大規制で同一ゲームへの複数人の同時ログインは厳密に禁止されている。ここにお前がいるハズが無いんだ!」


「僕にそう言われても。実際にこうして僕は貴方の前にいるじゃ無いですか。まあ、このゲームの“仕様”って奴じゃ無いですか?」


 いやいや、お前は確かにこのゲームにはオカルト的な要素があって、このゲーム内で死ぬと一種の残留思念が残像として残ると説明した。それが未知の方法で、他のプレーヤーにも見えるとか何とか。


 まあ、百歩譲って残留思念がこのゲームに現れるのを認めたとして、俺にはそれに関するもう一つの疑問があった。それを当事者本人に問う事に、一抹の不安と、そうであって欲しく無い……と言う願望が戸惑いとなって表れ、一瞬その問いを発する事を躊躇した。


 俺の表情から何かを読み取ったのか、アルベルトは笑みを強めて逆に俺に問いかける。


「何です? 僕にまだ聞きたいことが有るんじゃ無いですか?」


 ああ、そうとも。まだそれを口にする事を躊躇ってる俺の頭の中では、幾つもの疑問点がグルグルと渦を巻いていた。


 残留思念は皆、死ぬ瞬間の姿しか残してない。


 教授は言っていた。思い込みで人は死ぬと。


 Stormのラウンジであの気掛かりな消滅を見せてから、ネズミの怪物の姿になってVR空間に現れた九玄太。


「俺はしくじった。……このクソ迷宮(ラビリンス)に捕らわれて出られなくなった」


 俺を殴った為にBANされた直前、確かヤツはそんな事を言っていた。……実はアレはBANじゃ無かったんじゃないか?


 そしてチャプター4での、マーシュ助手が変異した怪物や深き者どもに乗り移った“中身入り”の存在……


 何より、他でもないアルベルトが触手の攻撃を受けて、崩落する床に巻き込まれて落下する幻影を見たチャプター3の終盤と、その直後にログアウトした俺に届いたパーソフォンのメッセージ……


 全ては断片的な、手掛かりとも呼べない情報の欠片に過ぎない。ここまで詳細な攻略法を教えてくれた、数少ない友人を疑うなんてしたくは無い。だが、今の俺には……どうしてもその問いを呑み込む事は出来なかった。


「なあ、アルベルト。お前はもう……現実(リアル)でも死んでるんだろ?」


 しばしの沈黙。それを破ったのはアルベルトの哄笑だった。


「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ。あーはははははははははははははははははははははははは。はっはっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」


 アルベルトは地下空洞全体に響き渡るくらいの大声で笑い続けた。こんな笑い方をする彼を初めて見た。そして不意に笑うのを止めると、微笑みながら言った。……お前、そんな嘲るような表情も出来たんだな。


「残念ですよガリンペイロ。…………あと少しだったのに」


 その一言で俺の推測は全て裏付けられ、まだアルベルトが生きているんじゃ無いかと言う微かな期待は、呆気なく砕け散った。


 “馬鹿め、アルベルトは死んだわ”こないだの朝、パーソフォンに入ったあの匿名のメッセージは真実だったのだ。無論、今確かめられる根拠は何もない。だが、今の俺にはこの非常識が支配するVR空間の中で、逆にそれが真実の様に思えて仕方がなかった。

 だが今の状況は、俺に悲しみに浸る暇を与えてくれない。俺はアルベルトに拳銃を突きつけながら、新たに湧いた疑問を突きつけた。


「じゃあ、お前は……お前らは実際何者なんだ? 幽霊か?」


「さあ、どう説明した物やら。本当にこのゲームに潜む呪いに囚われた亡霊なのか? それとも、二十世紀のSFコミックなんかに出てきた、電子の海で産まれて広大なネットを漂う新生命体なのかは、自分にも解りません。」


 いつの間にか、アルベルトの表情は見慣れた柔和なモノに戻っていた。俺は無言で話の先を促した。


「僕たちは、普段は一つの塊と言うか集合体みたいな存在でして、知識や若干の記憶を共有し、こうしてゲーム内のNPCに憑依する事が出来ても、僕みたいに個として現れる事が出来る物は稀です。この辺は生前の脳力が大きく関わってるのかもしれません」


「ただ、このゲームから出る事は困難でして。精々、Stormを通じてパーソフォンにメッセージを送るのが限度です。九玄太さんみたいにラウンジまで脱走出来たのは、極めて希なケースですよ。脳力開発には否定的な方でしたが、案外素質はあったみたいですね」


 なるほど。本当かどうかは判らないが、それは一先ず置いといてもっと重要な質問をする。


「で、自分が死んでるのを隠して、俺をどうするつもりだったんだ? 最初から、俺を騙すつもりだったのか?」


 アルベルトは皮肉な笑みを浮かべて返答した。


「騙す? あの攻略法は本物ですよ。我々(・・)の体験に基づいて、キチンと貴方をこのゲームのエンディングへと導くガイドラインですよ。まさか、こんな分岐が存在するとは思いませんでしたので、そこはフォロー外ですがね」


 まあ、確かにあの攻略法が無かったら、ここまでノーミスで来る事は不可能だっただろう。だが、それならそれで疑問点もある。俺はアルベルトの眉間に拳銃の狙いを定めながら、最後の問いを発した。


「あのまま橋を渡って、このゲームを普通にクリアしてたら何が起きてたんだ? そういや、攻略法にはエンディングについては何も書いて無かったな。お前……いや、お前達はそれを体験したんだろ? なあ、教えてくれよ」


「もう、元のルートに戻るつもりも無いんでしょうし、隠しても無駄ですね。 ……なら、教えましょう。もっとも、僕は知っての通りチャプター3で死んだ為に、仲間の体験の受け売りになるのですが」


 拳銃を恐れる様子もなく、また何時もの微笑に戻ると、アルベルトはエンディングについて語り始めた。

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[一言] ゲームのエンディングは果たして…。(・・;ドキドキ
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