コズミック・ラビリンス(暫定レビュー)
俺はログアウトするなり、VRヘッドセットを脱ぎ捨てて、今度はパーソフォンからStormのコズミック・ラビリンスの紹介ページにアクセスした。さっきのゲーム体験の興奮が冷めきらない今の俺は、一刻も早くこのゲームを紹介したくて堪らない気分になっていた。
画面にページが表示されるのと、ほぼ同時に、評価欄に最大値である星五つを叩き込むと、後はレビューを勢いだけで一息に書き込んだ。
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レビュー:量産型のRPGとFPSが支配するVRゲーム界に、新しい切り口のゲームが現れた。
これは、現在のStormに溢れる、延々ゾンビと戦うだけのFPSまがいのホラーゲーム群とも一線を画した、プレイヤーが直に恐怖を体感できると言う、VRゲームの原点に立ち返った正統派のホラーゲームだ。少なくとも、クトゥルフ神話に興味の有る層は一回でもプレイすることを、強くオススメする。
だが何より、このゲームが画期的な点は、これが単なるホラーゲームに留まらず、VR脳力を強化する目的を持った“脳ゲー”の側面を持つ事にある。
正直、筆者自身はVR脳力開発と言うモノに対して、まだ懐疑的であるのだが、それを誘発する目的で仕掛けられたギミックを発見するための行動が、ゲームの難易度を良い方向に押し上げている。
また、これまでのゲームに必須であったパラメータやスキルが一切無く、己の身一つで未知の迷宮や怪物に対峙する行為は、それ自体が新鮮な恐怖体験であり、その恐怖から逃れる為に必死で逃げ道を探りあてる行為は(それが実在するなら)確かにVR脳力の向上に役立つ事であろう。
まだ途中ではあるが、VR脳力開発の真偽を抜きにしても、一つの良く出来たホラーゲームとして、量産型の大作VRゲームに飽き飽きしている層や、ホラーとは名ばかりのゾンビ相手のFPS一色の現状にウンザリしている真のホラゲー好きには、このゲームを熱烈にオススメする次第である。(投稿者:ガリンペイロ)
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よし。俺は再び文面をチェックして、規約に触れる表現が無い事を確かめてから、レビューを投稿すると、急に眠気が込み上げて来た。パーソフォンの時計を確認すると、既に真夜中を過ぎていた。
もうこんなに経っていたのか。そう思うと、一層眠気が込み上げてくる。どうやらエナドリの効果も切れたみたいだ。それに、眠気とは別に頭が重い。無理して脳力を使ったからか? まさかね。ともあれ明日も休みだし、今夜はここまでにして寝るとするか。
……と、その前に。俺はアルベルトとサキトのStormのアカウント宛に、このゲームのアクセスコードを、本気で脳力を鍛えるのなら是非プレイすべし! とのコメントを添えて送信した。
これでいい。俺は万年床に突っ伏して、そのまま眠りについた。……完全に眠りに落ちる直前に、たしかサキトはホラゲーが苦手だった事を思い出したが、気にしない事にした。今度謝ればいいだろう。
そんな事を考えながら、俺は今度こそ眠りに落ちた。
……
……この夜は久しぶりに悪夢を見たが、よく覚えていない。ゲームと同様に、暗い地下通路みたいな所を何かに追われて逃げる夢だったと思うのだが……




