クリスマスイベント15!
クリスマスは過ぎてしまった!
「それならばそうと言ってくれれば良かったんだ」
「なんだよ、あんな強引に頼んでくるなんて断れないだろ!」
「ルータスにあんな事をしておいて断るも何もないだろう」
「マリーが踏ん切り付かなそうだったからやってあげただけだし」
「サラサに対しては魔石が上手く作動しないからって不貞腐れるなよ、リュー」
「あーはいはい、お終いお終い。もう若くないんだから口喧嘩なんてしないの」
目の前で繰り広げられている口喧嘩を見ながら、私はゆっくりとハーブティを飲んだ。
ついに開幕したクリスマスイベントは既に町中の家族達を賑わせている。何も知らなかった女性達は、このサプライズに驚き、とても嬉しそうにはしゃいでいるようだ。
今はイベントで使われる予定だった、『願いを見る魔石』が消えた事にトーマス様が気がついて喧嘩が勃発している最中。
何故私が倒れていたのか、何故魔石が無いのかなどをルイに確認してトーマス様が怒り、リューが逆ギレを起こしている。
トーマス様はケーキの発注や街全体の装飾などを主にやっていたせいか、気がつかなかったという後悔も含まれているらしい。
私を案じて怒ってくれているようで少しだけ嬉しい。
「なんで黙ってたんだ」
気がつくとトーマス様はこちらを見ていた。
不意に問いかけられた疑問に、とっさに反応ができなかった。少しだけ笑っていたところを見られてしまったようでトーマス様がすごい目でこちらを見ている。
「い、いえ……」
「ルータスは、トーマスだからこそ言えなかったんでしょ、全く、これから挨拶なんだから少しは落ち着きなよ」
「……………はぁ……分かった、これからは報告してくれ。ルイ、この後この流れに変更するから読んでおいて」
「え、えぇ!今から!?あーもう……急にこんな……」
なんとかトーマス様をなだめながら、共に去っていくルイの姿を見送ると、その部屋にはリューと2人だけになった。
彼は、何も話しかけてこない。
だが、こちらのことをとても心配しているという気配は感じ取ることが出来ている。彼の性格上話しかけにくいのだ。
「リュー……」
「……なに」
「あの魔石は使わないほうがいい」
「…………」
「とても不快だし、戻ってこれなくなる可能性だってあった」
「…………」
「リュー」
「あー……もう……分かってんだ。ごめん、ルータス」
「ごめん?」
「……ごめんなさい」
「分かっているならいい」
恐らく私の心がここまで不安定になってしまうとは予想していなかったのだろう。
だからこそ、不安になった心をより経験してもらいたいと思っていた。
「サラサ様に聞かれたぞ、リューの事」
「え!?な、何……」
「……さぁ?」
「はぁ!?」
「…………さぁ、イベントの見張りだ、リューは魔石の点検だっただろう」
「ちょ、ちょっと!サラサなんて言ってたの!」
「早くしないと遅れるぞ」
「あ、待ってよ!ルータス!聞いてないんだけど!ねぇ!」
慌てて後ろから走ってくるリューを横目に、魔石の事で何かしら感づいていたサラサ様を思い出す。
あからさまに不審がってはいたが、まぁ……許してはくれるだろう。
「がんばれよ、リュー」
「えぇー……ほんと……怖い仕返しだよそれ」
何を言われたのか、どうだっか、隣でうーんと唸りながら悩むリューは、いつもの冷静にしている顔が焦りに馴染んでいる。
さぁ、悩むがいい。
「リュー」
「ん?」
「クリスマスの挨拶を覚えているか?」
「ああ、メリークリスマスってやつ?」
「そうだ。意味は、[愉快なクリスマスを楽しんで]」
「………………」
「くくく……メリークリスマス、リュー」
「あーこの!!全然愉快じゃない!!」
今年から始まるこのイベントが、毎年の恒例行事となればいい。
そして、全ての人が楽しい日々を過ごせる日を大切にしていきたい。
そう、私は願っている。
お読みいただきありがとうございます!




