「70!」
「『世界の管理人』ではないのかと疑われるのはこれで4回目だよ、しゅんや」
「え、どういうこと?繰り返しの世界の管理人ではないのか?」
「繰り返しの世界?それならそれは、こっちのセリフなんだよね。良かったよ、今回は殺されなくてさ」
え?殺す?
私と姉さまがトーマス殿下を見てかなり引いている。
そしてトーマス殿下自体もそれに対して少し引いている。
3人が黙ってルイ・アントンを見た。
「なんか、管理人を殺さないと、世界が消えるとか言って急いで殺されてきたけど?」
俺はその後どうなったかは分からないけどね、と言ってルイ・アントンが不満そうな顔をしている。
「そもそも、この繰り返す世界に管理人がいた事が俺は驚きだったんだけど。その割に2人とも向こうの世界に行くとこっちのことは覚えていないし」
「え?」
「え?」
「ん?」
向こうの世界?
私は向こうの世界については良く分からないのでじっと黙って3人が話すのを待つ。
「向こうの世界とはどういうことですか、ルイ様」
「え?元のゲーム作った世界の方だよ。俺らが大学1年の時から始まるでしょ?」
「……いや、待って、アネモア、香織の時の記憶はいつからある?」
「私は……いえ、しゅんくんと付き合い始めた時からかな……」
「ルイ、こっちの世界は何回目?」
「ん、10回目くらいかな?あれ、覚えてない?」
「毎回、こっちの話しは違ってたのか?」
「というか、向こうの世界から全然違うけど……」
その後、殿下がルイ・アントンに詳細に説明を求め、その10回分の話を聞いた。
まず、この世界というのは高林俊哉の作成したゲームの世界になる。という法則があるらしい。
ルイ・アントン側の繰り返す世界初めの方は
元の世界で香織様とは付き合えず、妄想を働かせた恋愛ゲームを作って引きこもり餓死。
恋愛ゲームの世界に生まれ変わり。
香織様監禁エンド、香織様を救出しようとしたルイ・アントン殺害エンド、自殺エンドのルートをたどった。
その3つを見た段階で、ルイ・アントンは頑張った。
元の世界で死に物狂いで2人をくっつけたのだ。
そして、出来上がった香織プリンセス救出RPG。
初めは途中で死に、次は魔王で死に、最後は王族に裏切られて死ぬ、全て1回も香織様には会えないエンドだったらしい。
ルイ・アントンは更に考えた。
どうしたら戦わないで済むのか。香織様に会えるのか。
それで提案した、恋愛でも乙女ゲームの方。
彼は必死だった。そして祈った。
どうか、彼らを救ってくれと。そして、自分にも好きな人を作らせてくれと。
因みにこの話を始める段階で姉さまは席を外してもらっている。
ルイ・アントンが、トーマス殿下を見ながら
「これ、アネモア様聞かない方が良いと思うよ、ほんと」
と、言った為だ。
まぁ、良かったよ。外してもらって。
私は蔑むような目を殿下に向けながら、口を開く。
「トーマス殿下……姉さまのこと、大好きなんですね」
「……………………」
殿下は片手を顔に覆い、もう片方の手のひらをルイ・アントンに向けていた。
「初めはさ……しゅんやが死んだ時俺も悲しんだんだ、だけど、途中からどれだけ次の世界で有利になるかを考えちゃって」
「そうだろうね……」
だって、自分は巻き込まれて何だかんだ死んだりするのだ。
何か解決策がないか探るのもわかる。
「今回の世界では、初めの方トーマスがアネモア様を香織さんだと気がつかなくてさ。何故か、俺が管理人とか言われて殺される事しかなくて。ほんと、解決策が思いつかなかったんだ」
「……好きな子の好物は見つけたのにな」
「…………香織さんに全部話してあげようか」
ルイ・アントンが殿下を睨みながら話を続けた。
お読みいただきありがとうございます!
すみません、少し長くなりそうでキリのいいところで切りました。




