『タイトル未定』中
傷ついたリクトにメルティーナが駆け寄る。
「世界は救われたんですね」
涙を流すメルティーナの頬を拭いながら、リクトは首を横に振る。元凶の魔王は倒したが、その分身は今も世界中に潜伏しているはず。急ぎ、グランドクロスに戻り、王にこの事を伝えなければ、と話すリクトの後ろで低い笑い声が聞こえる。
体を剣に貫かれた魔王が立ち上がる。その姿がドラゴンに変わる。そして天高く飛翔し、世界中の分身を集め融合を始める。呆然と立ち尽くす二人だったが、決して諦めなかった。そして、見つけたのは玉座に隠された神弓リキュールであった。リクトの住んでいたノール村に隠されたそれを奪うために魔王は村を襲ったのだ。それは唯一魔王が恐れる武器。神弓と言われるだけあり精神力がかなり削られるが二人は手を合わせながら、弓をひく。
神弓から光の矢が放たれ、それはドラゴンを打ち落とす。しかし、その傷は新たなる分身との融合で塞がれてしまう。いくらでも回復してしまう魔王の姿をみたメルティーナはついに座り込み絶望する。リクトは、そっとメルティーナの肩に手をおいた。
「僕、行くよ」
「リクトさん?な、何を言っているんですか」
「融合しに行くんだ、僕も、分身だから」
リクトはメルティーナの目をみて笑った。メルティーナは、リクトの覚悟を知ってしまった。彼は融合し、自分一人で闘うつもりだ。リクトの瞳を見れば彼のことがわかるのだ。それでも
「行かないでください!」
「ありがとう、メル」
「お礼なんていらないのです。リクトさんは頑張りました、もう、これ以上あなただけが傷つく必要なんてありません!」
「うん、でもね、メル」
リクトは子供をあやすように、しがみつくメルティーナの頭を撫でる。
「誰かの血が流れ傷つくのも、どこかの村が燃えるのも、苦しみ悲しむ人がいるのも、恐怖に人々が怯え続けるのも、・・・全部、僕が嫌なんだ。自分勝手だよね」
メルティーナは泣きながら首を振る。
「リ・・・クトさんっ」
「メルは本当に泣き虫だね」
リクトは笑いながら振りかえる。魔王が少しずつ回復しているのが見える。
「メル、考えてみてごらん、魔王がいなくなったらきっといいことばかりだよ」
絶えていた国交も回復する。人々は怯えず外に出られるようになる。子供も元気に自由に遊べる、作物も以前のようにとれるようになれば飢えもなくなる。安心した人々は愛を取り戻し、笑顔がまた世界を満たすだろう。
「でも、その中にあなたはいない!!」
「そうだね」
「意味ない、です、そんなの!」
「意味はあるよ」
リクトはメルティーナを抱きしめる。
「その平和な世界に君を生かせる」
「っ!」
「それだけで、僕はいいんだ」
そっとリクトはメルティーナの瞼にキスをする。
「ねぇ、メル、僕は上手に勇者になれたのかな」