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ドクターヘリ救急救命  作者: 零
Another story
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No.40 〜another story〜

No.40 〜another story〜



3月6日 19:30


食事を終えて、ソファーに座っていると、星華を寝かしつけた亜依が声をかけてきた。


亜依「耕作?」


耕作「お疲れ様、寝たか?」


亜依「うん」


耕作「コーヒー飲むか?」


亜依「カフェオレでお願いします」


耕作「畏まりました」


耕作は恭しく一礼すると、カフェオレを手にして戻って来た。


耕作「お待たせいたしました」


亜依「ありがとう、耕作」


耕作「あぁ」


亜依「もう!からかったでしょ?」


耕作「まぁな」


と少し口角を上げて耕作が言う。


亜依「あのね、耕作」


耕作「あぁ」


亜依「今度、星華、お泊まり保育があるらしいのね」


耕作「あぁ」


亜依「承諾書渡されたんだけど、どうする?」


耕作「…」


亜依が承諾書を渡してきたので、俺はそれを読んだ。


亜依「私は幼稚園だったからお泊まり保育をしたことがなくて、どんな感じなのかなぁ〜って思って」


耕作「あぁ、そういう事か。なかなか面白いぞ」


亜依「そうなの!?」


耕作「普段は一日中保育園に居ることがないからな」


亜依「なら、星華も楽しめるかな?」


耕作「多分な。何日だ?」


亜依「1ヶ月後」


耕作「そうか、いいんじゃないか?楽しめると思うぞ」


亜依「なら、これ書いてね?」


耕作「わかった」



そう言うと、耕作はスラっと承諾書を書いて、キリトリ線で切り離してくれた。



亜依「ありがとう」


耕作「あぁ」







そして、1ヶ月後



4月6日 6:30a.m.


目が覚めると、最愛の妻子が視界に入ってきた。

星華は今日、保育園でお泊まり会だ。


星華と亜依を見ていると、亜依の呼吸がいつもよりも浅いことに気がついた。


じっと見ていると、星華が目を覚ました。


耕作「おはよう、星華。ちょっと、ズレてくれるか?」


そう言ってから、俺は星華を自分が寝ていた場所までズラスと、亜依の方にまわりこんだ。



亜依の額に手を当てると、いつもよりも熱かった。



耕作「星華、ママの冷えピタ取ってくるから待っててくれ」



そして、俺は冷えピタを持ってきて、亜依の額に貼った。


少し冷たかったのか、一瞬、眉を顰めたが、また寝ていった。


そして、俺は星華の朝の支度をして、昨日亜依が準備していた星華のお泊まりグッズが入ったカバンを確認した。



8:00になって星華をリビングのベビーベットに寝かせて、亜依の様子を見に寝室へと足を運んだ。



すると、ふわりと亜依の瞼が開いた。


耕作「おはよう、亜依」


亜依「おはよう、耕作。今、何時?」


耕作「8:00」


亜依「星華の準備!」


耕作「お前は疲れて寝てたから俺がしておいた。ちゃんと寝れたか?」


亜依「ありがとう、ちゃんと寝れた」


耕作「そうか、何時に連れていけばいい?」


亜依「9:00に着けばいい」


耕作「なら、8:45には出るか」


亜依「それまでに準備するね」


耕作「あぁ、今日は3人とも翔南で泊まりだな」


亜依「フフッ。そうね」


耕作「シャワー浴びて着替えたらリビングに来てくれ、朝飯は用意しておいた」


亜依「わかった、ありがとう」


亜依が着替えてご飯を食べに来る。その後ろ姿が少し怠そうだ。


耕作「亜依」


ご飯を食べている亜依に思わず声をかける。


亜依「何?耕作」


耕作「体調、大丈夫か?」


亜依「ちょっと体がダルいかな。冷えピタありがとう」


耕作「あぁ、勝手に貼らせてもらった。今日のヘリ担は俺が代わる」


亜依「ごめん、ありがとう」


耕作「気にするな。無理しない程度に初療室まわしといてくれ」


亜依「わかった」



そして、俺の運転で翔南に着くと、2人で星華を預けて医局に向かった。




当直の今井と名取がいた。



田中「おはよう」


2人「「おはようございます」」


藍沢「…おはよう」


2人「「おはようございます」」


名取「特に変わった様子はありませんでした」


今井「昨日から今に至るまでは白車ありませんでした」


藍沢「そうか。落ち着いてるし寝てきていいぞ。なぁ?」


藍沢が田中の方を向いて問いかける。


田中「うん。私達2人でここにいるから行っておいで。何かあったらコールするから」


名取「ありがとうございます。行ってきます」


今井「お願いします」




そして、医局は2人だけになった。



藍沢「大丈夫か?」


田中「うん、多分」



亜依が言うと耕作が額に額をつけて熱をはかる。


耕作「朝よりは下がったか。熱が出てきたら言えよ?俺がいなければ救命のヤツなら誰でもいいから」


亜依「わかった」



…医局の電話が突然鳴り出した。


藍沢「救命医局です」


谷口「藍沢先生?!」


藍沢「状況報告しろ」


谷口「ICUの裕翔くんが急変です!」


藍沢「すぐ行く」


そして、電話を切った。


田中「急変?」


走り出しながら田中が聞く



藍沢「ICUの裕翔くんだ」


田中「裕翔くんって…」


藍沢「杉田裕翔。8歳男児、拡張型心筋症による心不全に心筋梗塞を合併してる。3年前から人工補助心臓つけてる」



藍沢と田中が到着するとそこには心外のフェロー、循環器内科のフェロー、内科のフェロー、脳外のフェロー、今井、名取、谷口がいた。


藍沢「状況は!」


名取「胸が痛いって言い出してVTして、今さっき心拍再開しました」


田中「心筋全体の動きが遅い」


田中と藍沢が目を合わせると軽く頷いた。



藍沢「オペ室空いてるか?」


谷口「今、終わったそうです!患者移したら入れます!」


田中「とりあえず初療室運ぼう」


藍沢「エクモ入れる。用意してくれて」


心外のフェロー「僕が?」


藍沢「お前はついて来い、俺達が入れる」


心外のフェロー「はい!」



ベットを動かしながら会話は続く。


藍沢「亜依」


田中「大丈夫。エクモは入れたことある。耕作前立ちお願い」


藍沢「わかった。名取は換気。今井は井上先生と橘先生に連絡取って可能なら初療室来てもらってくれ。それから、藤川と大野にコールして白車対応頼んでくれ」


2人「はい!」


藍沢「谷口、器具出し頼む」


谷口「はい!」


すると、ゾロゾロとついてきていた他科のフェローに亜依が指示を出す。


田中「心外と循環器のフェローは一緒にオペ室来て、それ以外の科のフェローの人は救命のコール担当のドクターが来るまでICUと白車の対応をお願い。白車とかICUの急変でわからないことがあったらコールしてすぐに答えるから」


他科のフェロー「「はい!」」



初療室に着いてすぐにオペ室が空いたのでオペ室に移動した。藍沢、田中、谷口、名取はすぐに術衣着に着替え、藍沢は杉田に消毒をかける。


『藍沢!』


そこに慌てた橘が入ってきた。


田中「橘先生!」


藍沢「VT起こして心拍再開したのでエクモ入れます」


橘「わかった。井上には連絡入れた。電話は繋いだままだから指示は貰える。本人も5分以内に来る」


藍沢「わかりました」


田中「始めよう」


藍沢「あぁ。名取、子供だ。少しでも変化があったらこまめに伝えろ」


名取「はい!」


今井「自分も入っていいですか!」


今井がオペ室の入口で聞いてくる。

田中や藍沢は手を動かしながら答える



藍沢「お前は初療室にいろ」


今井「えっ?」


田中「ここに救命のドクターがみんないたら白車で来た助けられる人も助からないかもしれない。他科のフェローは貴方よりも経験が無い。あのフェローの中では貴方が一番対応できるはずよ」


今井「…」


藍沢「俺達は手が離せない。こっちが終わればすぐに行くし、15分しないうちに藤川と大野が来る。それまで命繋いどいてくれ」


今井「はい!わかりました!僕はホットライン対応します!」


藍沢「なんかあったら遠慮せずにコールしろ」


今井「はい!」




そして、無事にエクモを入れることに成功した杉田裕翔くんはICUに戻って行った。



藍沢、田中、橘、井上、名取、谷口がオペから戻り初療室に入ると次から次へと患者がICUへと運ばれていく。



田中「何があったの?」


藤川「集団食中毒」


田中「えっ?」

藍沢「…」


藤川「でも、前にもあっただろ?」


藍沢「フェローのときのやつか」


藤川「あぁ。あの時のマニュアルが役に立った」


大野「フェローと藤川と私でどうにかなりました。ただ、15人ほどいるので藤川だけでは診きれませんから先生方にも割り振りますね」


田中「わかった」


橘「なら、臨時のカンファ開くぞ」


スタッフ「はい!」




そして、15人を藤川・今井・田中・藍沢・橘・名取・三井・緋山・横峯・黒田で1~2人ずつ担当することになった



20:30

救命医局



田中「みんな助けられてよかった」


電気を普段よりも落とした救命の医局で藍沢と2人きりになった田中がつぶやいた。


藍沢「そうだな」


田中「今頃、星華はもう寝てるかな?」


藍沢「多分な」


藍沢が家にいる時のような穏やかな顔で口にした。


田中「ふふふっ」


藍沢「どうした?」


田中「耕作。今、凄く優しい顔してるよ」


藍沢「そうか?亜依は少し心配そうな顔をしてるぞ」


田中「ウソ」


藍沢「今夜は落ち着いてる。あとで見てこいよ」


田中「えっ?」


藍沢「星華のこと」


田中「いいの?」


藍沢「俺で対応しきれなかったら呼ぶ」


田中「そんなこと、滅多にないじゃない!」


藍沢「まぁ、そうだな」



そして、田中は星華をこっそりと見に行った。



園長「こんばんは」


田中「こんばんは」


お互いに声を潜めて、挨拶する。

すると、奥から保育士が駆け寄ってきた。


保育士「園長先生!」


園長「どうしたの?」


保育士「あ、こんばんは。星華ちゃんのお母さん」


田中「こんばんは」


園長「どうしたの?急いで来て」


保育士「星華ちゃんがちょっと呼吸が苦しそうで」


田中「星華が?」


保育士「はい」


園長先生と田中が目配せした。


田中「私が診ます」


園長「お願いします」



田中が診察をする。


田中「救命にコールしてください」


保育士「えっ?!」


田中「多分、喘息だと思う。電話が繋がったら私に代わって」


保育士「わかりました!」



保育士が田中にiPhoneを渡してくる。


田中「もしもし?田中です」


藍沢『どうした?』


田中「星華が喘息の発作かもしれない。すぐに医療バック持って来て」


藍沢『わかった』



すぐに藍沢が医療バックを持って走ってきた。


藍沢「亜依」


田中「私は一応診た。貴方もお願い」


藍沢「わかった」


藍沢も診察をした。

同時に田中がラインをとる。



藍沢「俺も同じ考えだ」


田中「スタッフステーションでいいかな?」


藍沢「ストレッチャー借りれますか?」


園長「もちろんよ」



園長がそう言うと保育士が持って来た


田中「向こうに着いたら返しに来ます」


園長「えぇ、お願いします」


藍沢「行こう」


田中「うん」



藍沢がわが子のストレッチャーを後ろから押し、田中が普段のフライトの時のフライトナースのように片手でストレッチャーを押して片手で点滴を持ちながら会話を始める。


田中「小児科コンサルする?」


藍沢「星華は今寝ているし、酷くなるようならしよう。今は様子を観ないか?」


田中「そうね、無理に起こすよりいいかも」


藍沢「今日の当直は俺達だ。何かあっても対処は出来る」


田中「そうだね、結局3人とも同じ場所でお泊まり会だね」


藍沢「そうだな」



スタッフステーションに入ろうとすると、当直ではないのに何故か橘と循環器内科の井上がいるのがわかった。田中と藍沢はその後ろ姿に軽く頷き合い、スタッフステーションに入った。


2人「「お疲れ様です」」


橘「お疲れ」

井上「お邪魔してるよ」


藍沢「いえ」


田中「毛布背中に入れる?」


藍沢「あぁ。血液検査は明日でいいか?」


田中「うん」



橘「藍沢、その子どうした?」


田中「保育園に行ったら星華が喘息の発作みたいなので連れてきました」



その言葉を聞いて橘が井上に視線を送る。井上も橘の言わんとすることが分かったのか、口を開いた。


井上「今、俺が診てもいいかな?」


田中「えっ?」


藍沢「お願いできますか?」


井上「あぁ」



井上が診察していく。



井上「小児喘息だな。生後7ヶ月か。それだと、乳児喘息だな。アレルゲン検査は明日しよう」


2人「「はい」」


橘「担当医は?」


井上「お前達が差し支えなければ、俺が診るが」


橘「どうする?」


田中「お願いします」

藍沢「お願いします」


井上「わかった。明日のシフトは?」


橘「2人ともオフだ」


井上「何時にする?朝イチでいいか?」


藍沢「はい」


井上「じゃあ、救命の朝のカンファの前に血液検査だけやっといてくれ。外来予約は普通の人は8:30だから8:00でいいか?」


田中「はい」


橘「血液検査だけなら、今やっていいぞ。藍沢」


藍沢「…」


橘「救命の検査室は不眠だからな」


藍沢「…」


橘「藍沢、やってくれ。俺が安心して寝れない」


田中「えっ?」


井上「藍沢くん、すまないな。やってやってくれ。明日、日勤の橘が寝不足は不味いだろう」


田中と藍沢は目を見合わせて、それから藍沢が答えた。


藍沢「わかりました」



そして、藍沢が星華から血液検査用に血液を少し抜いた。


そして、それを検査にまわす。


結果は、スギ・ヒノキ・ハウスダストだった。



井上「花粉とハウスダストか…」


橘「家ではどうしてる?」


田中「家では、基本的に部屋に1台、加湿器の機能がある空気清浄機を部屋の大きさに合わせて置いてますよ」


橘「そうか」


井上「掃除は?」


藍沢「ル〇バが毎日掃除してるし、本格的な掃除は自分が休みの日にお互いやりあう決まりです」


橘「お前達が掃除か…ホコリは絶対無さそうだな」


田中「まぁ」


井上「原因はわかったな。橘」


橘「そうだな」


2人「…」



井上「原因は」



「「部屋が綺麗過ぎたんだ!」」




2人「「えっ?」」


井上「人が多く出入りする病院は、君たちの家よりもホコリが多いだろ?」


藍沢「まぁ」


橘「それに、藍沢と田中の子供だ。親はアレルギー体質だよな?」


田中「あっ」


橘「そうだ。田中は蕎麦、藍沢は喘息」


藍沢「そうですね」


井上「今は花粉とハウスダストだけだが、親がアレルギー体質だと離乳食始める時は普通よりも食物アレルギーを気にした方がいいかもな」


田中「そうですね」


藍沢「初めて食べさせる離乳食は全てここで食べさせればいい」


田中「えっ?」


藍沢「ここならもしもアレルギー反応が出てもすぐに対処出来るだろ?」


田中「でも…」


橘「いいんじゃないか?」


田中「橘先生!」


橘「母親が蕎麦アレルギーだからな。念には念を入れた方がいい」


井上「食べさせる時は、ここで食べさせてくれると、俺も何かあった時に対応しやすい」


田中「わかりました」


橘「点滴、どれくらいでおわる?」


井上「あと30分くらいだ」


橘「藍沢、田中」


2人「「はい」」


橘「点滴終わったら2人とも帰れ」


田中「えっ?」

藍沢「…」


橘「側にいてやれ。それに、初めての喘息の発作だろ?2人一緒にいた方がいい」


藍沢「わかりました」

田中「はい」


井上「星華ちゃんの主治医は俺と橘かな?」


橘「そうだな。親が主治医ってのはちょっと困るからな」


井上「俺達の患者なら大丈夫だな」


橘「まぁな。循環器内科に脳外科に心臓血管外科の知識か」


井上「救命医の知識は沢山あるしな」


橘「あぁ」


井上「1番良い保育園に預けたな」


橘「そうだな」




そうこうしていると、星華の点滴が終わった。



藍沢「亜依、着替えて来い。俺がみてる」


田中「わかった。私、戻ってきたら耕作が着替えに行ってね」


藍沢「あぁ」



そして、田中が着替えるために医局を出て行く。


藍沢「あの」


橘「どうした?」


藍沢「発作を起こしたら、乳児喘息はどうすればいいんですか」


井上「あぁ、それなら…」




その会話をドア越しにそっと聞いていた田中は嬉しそうに笑うと、今度こそ服を着替えに行った。





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